Key.
「敢えて意見をする。それはお前の真意じゃない。ましてや女の為なんかじゃない。お前が罪滅ぼしという形で楽になるために、女を蘇らせようとしているだけだ」
「―――野郎っ!!」
いとも簡単に俺の決意を一蹴され、自然と右手が相手の胸倉を掴んでいた。
自分がカウンターにぶつかった拍子にグラスは床に落ち、男が帯銃していた銃が椅子のパイプに当たって落ちた。
フーガンはすかさずそれを拾い、俺の背後に回ってこめかみに銃を突き付けてくる。
「くっ……」
「図星か」
ロック、お前の負けだ。
「事実を言い当てられたくらいで動揺するようじゃ、お前は俺には勝てん。人の為と言いながら、全ては自分の為。人は死して安楽を得るのだ。余計なことはしない方が良い」
フーガンはそっと手を緩めると、懐から煙草を取り出した。
俺はそこに、すかさず手持ちのライターで火を点けてやる。
「気が利くな」
「……酒、ご馳走してもらったからな」
グラスに残ったお酒を一気に飲み干し、フーガンに酒の礼を言う。
「俺は誰に文句言われようと、どうしたって蘇りの秘宝を見付けなきゃいけないんだ。今、好きな女がいるから、そいつの為にも、レイチェルを蘇らせる必要があるんだ」
「……好きな女だと?」
俺の告白に、フーガンはふと俺に視線を向ける。
「仮に死の中から蘇ったとして、お前はかつて愛した女に、好きな女がいますと残酷なことを告げるのか?」
「違う。俺は、俺の為に命を落とした女に謝りたいだけだ。好きな女は確かにいるが、そいつへ踏み込めないのは、レイチェルが蘇る可能性が残っているからだ。レイチェルが無事に生き返ったなら、俺はあいつへの、セリスへの想いを忘れる」
「新しく惚れた女はセリスというのか。……全く、お前という奴は二人の女を弄んで、恥ずかしいと思わないのか。どっちつかずな恋慕は、女を傷付けるだけだ。ロック、お前にその責任が取れるのか?」
俺は何も言い訳できなかった。
レイチェルを愛している。
だが、俺が気にしているのと同じくらい、セリスの、俺への想いが痛いほど伝わってくる。
どちらも裏切れない。
だったら、どちらかを犠牲にしてでも最初の目的は果たさなきゃならない。
「そう思ったんだよ。正直、責任なんて二の次だ」
「……つくづく罪な男だ、お前は。馬鹿正直過ぎて、涙も枯れてしまうわ」
そう言ってフーガンは、俺に細長い封筒を寄越した。
どこぞの割り印が捺された、厚地の上等な封筒だ。
開けてみろと促されたので、俺はナイフで封を切ってみる。
「あんた、これ……」
そこには、俺が探してやまない秘宝の在処が記されていた。
帝国が関与していることは承知だったが、まさか例の秘宝が、この地殻変動で現れた遺跡に眠っているとは思わなかった。
「俺が帝国で雇われている時に、ちょこっと拝借したものだ」
封を閉じるためのシールは帝国ベクタの紋、割り印は、今は亡きガストラ皇帝を表す文字、その隣には……。
「まさかこれは、ケフカの印……」
「そうさ。そんな奴らの宝を手に入れようなんて、馬鹿な男の一人芝居だと思ったよ」
ガストラが生身の人間に魔導注入を施し始めたのは、幼きティナが、生まれた時から魔導の力を秘めていると知ったからだ。
彼女のように魔法を操ることができたなら、このベクタのように、他国も魔導の力で、弱者を踏みつけるが如く思いのままに支配ができると考えたから。
そこで最初に実験対象に選ばれたのがケフカ。
次にセリス、そしてガストラ本人に魔導を注入した。
しかし、魔導実験に成功したのはセリスのみで、ケフカもガストラも、残念ながら成功とは言えなかった。
「どうしてケフカとガストラが成功ではないんだ? ガストラは知らないが、ケフカはあれだけ魔法を使えるじゃないか」
「精神だよ。自我が保てないんだ」
「―――野郎っ!!」
いとも簡単に俺の決意を一蹴され、自然と右手が相手の胸倉を掴んでいた。
自分がカウンターにぶつかった拍子にグラスは床に落ち、男が帯銃していた銃が椅子のパイプに当たって落ちた。
フーガンはすかさずそれを拾い、俺の背後に回ってこめかみに銃を突き付けてくる。
「くっ……」
「図星か」
ロック、お前の負けだ。
「事実を言い当てられたくらいで動揺するようじゃ、お前は俺には勝てん。人の為と言いながら、全ては自分の為。人は死して安楽を得るのだ。余計なことはしない方が良い」
フーガンはそっと手を緩めると、懐から煙草を取り出した。
俺はそこに、すかさず手持ちのライターで火を点けてやる。
「気が利くな」
「……酒、ご馳走してもらったからな」
グラスに残ったお酒を一気に飲み干し、フーガンに酒の礼を言う。
「俺は誰に文句言われようと、どうしたって蘇りの秘宝を見付けなきゃいけないんだ。今、好きな女がいるから、そいつの為にも、レイチェルを蘇らせる必要があるんだ」
「……好きな女だと?」
俺の告白に、フーガンはふと俺に視線を向ける。
「仮に死の中から蘇ったとして、お前はかつて愛した女に、好きな女がいますと残酷なことを告げるのか?」
「違う。俺は、俺の為に命を落とした女に謝りたいだけだ。好きな女は確かにいるが、そいつへ踏み込めないのは、レイチェルが蘇る可能性が残っているからだ。レイチェルが無事に生き返ったなら、俺はあいつへの、セリスへの想いを忘れる」
「新しく惚れた女はセリスというのか。……全く、お前という奴は二人の女を弄んで、恥ずかしいと思わないのか。どっちつかずな恋慕は、女を傷付けるだけだ。ロック、お前にその責任が取れるのか?」
俺は何も言い訳できなかった。
レイチェルを愛している。
だが、俺が気にしているのと同じくらい、セリスの、俺への想いが痛いほど伝わってくる。
どちらも裏切れない。
だったら、どちらかを犠牲にしてでも最初の目的は果たさなきゃならない。
「そう思ったんだよ。正直、責任なんて二の次だ」
「……つくづく罪な男だ、お前は。馬鹿正直過ぎて、涙も枯れてしまうわ」
そう言ってフーガンは、俺に細長い封筒を寄越した。
どこぞの割り印が捺された、厚地の上等な封筒だ。
開けてみろと促されたので、俺はナイフで封を切ってみる。
「あんた、これ……」
そこには、俺が探してやまない秘宝の在処が記されていた。
帝国が関与していることは承知だったが、まさか例の秘宝が、この地殻変動で現れた遺跡に眠っているとは思わなかった。
「俺が帝国で雇われている時に、ちょこっと拝借したものだ」
封を閉じるためのシールは帝国ベクタの紋、割り印は、今は亡きガストラ皇帝を表す文字、その隣には……。
「まさかこれは、ケフカの印……」
「そうさ。そんな奴らの宝を手に入れようなんて、馬鹿な男の一人芝居だと思ったよ」
ガストラが生身の人間に魔導注入を施し始めたのは、幼きティナが、生まれた時から魔導の力を秘めていると知ったからだ。
彼女のように魔法を操ることができたなら、このベクタのように、他国も魔導の力で、弱者を踏みつけるが如く思いのままに支配ができると考えたから。
そこで最初に実験対象に選ばれたのがケフカ。
次にセリス、そしてガストラ本人に魔導を注入した。
しかし、魔導実験に成功したのはセリスのみで、ケフカもガストラも、残念ながら成功とは言えなかった。
「どうしてケフカとガストラが成功ではないんだ? ガストラは知らないが、ケフカはあれだけ魔法を使えるじゃないか」
「精神だよ。自我が保てないんだ」