好き、ってなんだろう。
ぼんやりとしたままベッドで見えない壁を見つめても答えなんて出なくて
一人の部屋はシンと静まり返ってぐるぐると思考を巡らせる


「もしこのままでも、俺がずっと居てやるって言ってんだよ」


このまま、とは俺の視界が戻らなかった場合を意味して、例え俺が呪術師の道を諦めたとしても側に居てくれるそういう、意味だろうか
側に居てくれる理由は判明しても、好きだという言葉が理解出来なくてモヤモヤする
好きという意味は理解している、だけどそれを五条が俺に向けるのは理解出来ない
男同士という事は別に気にはならないけどこんな俺を好きになる要素が見当たらないのだ
お世辞にも強くもなく可愛げの無い男のどこを好きになったと言うのか、それも


『御三家の一人が』


だから、理解出来ない
大きく溜息を吐くとコンコンとノック音と扉が開く音


「私だけど、入っていいかい？」
『あぁうん』
「お邪魔するよ」


五条の代わりに来たという夏油、やっぱり言い逃げした後は会いづらいのか
夏油はそのことを知っているのだろうか


「…どうかしたの？」
『えっ？』
「困ったような、そんな表情してるから何かあったのかと思って」
『ぁ…』


そんな表情、してるのか
わからない事だらけだな


「悟からは何も聞いてないよ
ただ、今日は代わりに見て欲しいって頼まれただけだから」
『そう…』
「…お腹空いてないか？パン買ってきたから良かったら一緒に食べよう」
『うん、ありがとう』


五条は今、どんな気持ちなんだろう
俺は、どうすれば良いんだろう
モヤモヤとした心を落ち着かせるように何でも無い会話をした。