初めてアイツと会った印象はチビで弱そう、あとは


『────…』


窓を眺めている姿が儚げで消えそうだった
何を考えているのか、何処か遠い所を眺める
今日も同じ姿に思い切って頬杖をついている机の前に立ち同じ方向を見てみる


「お前さ、いつも何見てんの？」
『何も見てないよ』
「は？」


あれだけ熱心に見ておいて見てない訳がない
意味が理解出来ず眉間に皺が寄る
ちらりと目だけで俺を見る


『あの人も、ここに来たのかなって思ってただけだよ』
「誰だよそれ」


俺から目を逸らしまた窓へ向けられる視線
それは青い空へ向けられているような気がして


『俺の大切だった人』
「っ…」


大切だった人、その言葉に何故か胸がザワついた
息を呑んだ俺には勿論気付かないまま
なんだよ、大切だった人って


『ここに来るきっかけになった人なんだ
だから、』
「だからって、毎日毎日此処で思い出に浸っても意味なんかねぇだろ」
『っ…』


辛そうに顰められた表情に、コイツもこんな表情するのかといつも何でも無い表情で何でもこなす姿を見ているから改めて人間なんだと感じる


「思い出すなとは言わねぇ、けどいつまでも引き摺ってんな付け込まれて死ぬぞ」
『………わかってるよ、そんな事…』


小さな声で、泣きそうな声で、外を見つめるクロに俺はまだ何もしてやれなかった。