桃華月詠
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おっと、これはマズイな……。
家具や食器に当たり散らし、声を荒らげている恋人の姿に冷や汗が一筋流れる。
鬼の暴走に巻き込まれ怪我を負った私は、恋人の月詠によって監禁された。
片足首にはGPS付きの足枷が嵌められ、これでは囚人の様だと最初は抵抗していた。だけど三食昼寝におやつにサブスク付きという、破格の待遇にすぐに陥落した。
世の社畜が知ったら血涙を流しながら羨むこと間違いなしの毎日を送っていた、ある日の事。同じことを繰り返す毎日に飽き始めていた私はふと、ある事を思いついた。
それは帰ってきた月詠を驚かせるというものだった。
時間を確認する為に壁掛け時計に視線を向けると、月詠が帰ってくるまでに余裕があった。
私はウォークインクローゼットの奥に置いてある、不用品が仕舞ってある段ボールを引っ張り出した。
段ボールの中に入っていた物はウォークインクローゼットの隅や、家のあちこちに隠して、空っぽになった段ボールに鋏を走らせる。
段ボールを切ってガムテープで繋ぎ合わせたり、慣れない作業に四苦八苦すること数十分。ようやく段ボールのハリボテが完成した。
作戦はこうだ。まず、私がハリボテの中に隠れて月詠が帰ってくるのを待つ。帰って来た月詠が上着を片付ける為にウォークインクローゼットの中に入ってきた所を、ハリボテの中から飛び出して驚かす。我ながら完璧な作戦だ。
私はハリボテの中に隠れながら、驚いた月詠の顔を想像してにししと笑った。
「ふぁあ」
暗い場所にいるからか、眠くなってきた。月詠が帰ってくるまで時間に余裕があるし、少し昼寝をしよう。そう思った私は膝を抱えて横になった。
横になって直ぐに眠気が最高潮に達し、とろとろ瞼が落ちてくる。
ガシャーンという音に、驚いた私は飛び起きた。
「どこだ!どこにいる!」
いつも丁寧な口調の月詠らしくない言葉遣いに驚いた私はハリボテの中から出てた。数センチだけウォークインクローゼットの扉を開け、外の様子を伺った。
おそるおそる覗いた私の目に映ったのは、ゴミ箱を蹴り上げている月詠だった。蹴られたゴミ箱は壁にぶつかると、中に入っていたゴミをこぼしながらころころ転がった。
肩を大きく上下させている、月詠の横顔と雰囲気は今まで見た事がないもので。恐怖を感じた私の口から小さく「ひえ」と悲鳴が漏れた。
バッ、と勢いよく彼の視線がこっちを向く。彼は床に散らばっている物を蹴飛ばしながら、私がいるウォークインクローゼットに向かって歩いてくる。
私は恐怖で体を固まらせて唇を震わせながら、彼を待つことしか出来ない。
遂にクローゼット前にたどり着いた彼は扉に手をかけ、ゆっくりと開いた。
見上げた月詠の表情は部屋の電気の逆光で見えづらかったが、その美しい顔からは一切の色が抜け落ちていた。
彼は私を見下ろし、視線が合うといつもと同じ柔和な笑顔を向けた。さっきまでの怖い雰囲気との温度差に風邪をひいてしまいそうだ。
「どこにいたんだい?」
「ウォークインクローゼットの奥に隠れてました……」
奥にある段ボールのハリボテを指さす。
彼は中を覗き込んで、ハリボテを見つけると「あれか…」と呟いた。
彼は口角を片方だけ上げて自嘲気味に笑った後、しゃがみこんだ。そして細身の身体からは想像できないほどの力強さで、私を抱きしめた。
まるで蛇に締め付けられている様で、私の口からは「ぐえっ」と蛙が潰れた様な声が出る。
「良かった……本当に良かった……」
弱々しくて小さな呟きはまるで迷子の様で。罪悪感が湧いてきた私は月詠を抱きしめ返して「ごめん」と謝った。
抱きしめた彼からはツンとした汗の匂いがしてた。必死に探してくれたんだなと思うと、胸が締め付けられた。
「もう二度としない」
「そうしてくれるかい。さて、と。部屋を片付けないとね」
そう言って立ち上がった月詠に続いて、私も立ち上がる。
部屋がどれくらい散らかっているのだろうかと、月詠越しに覗いてみると私が想像していたよりも被害は大きかった。
映画を観るのに最適な六十五インチのテレビ画面は大きくひび割れ、その前に置いてあるお気に入りのソファーは引き裂かれて見る影もない。
床には叩きつけられて割れてしまった水晶や食器の破片が、光を反射していてきらきらと輝いている。
頭一つ分高い彼を見上げると、瞳が揺れていた。
私は月詠のネクタイを引き寄せ、そっとキスをする。
「私はどこにも行かないから。だから、そんな顔しないで」
そう告げて、もう一度唇を重ねた。
彼の指が、確かめるように私の手を握り返した。
家具や食器に当たり散らし、声を荒らげている恋人の姿に冷や汗が一筋流れる。
鬼の暴走に巻き込まれ怪我を負った私は、恋人の月詠によって監禁された。
片足首にはGPS付きの足枷が嵌められ、これでは囚人の様だと最初は抵抗していた。だけど三食昼寝におやつにサブスク付きという、破格の待遇にすぐに陥落した。
世の社畜が知ったら血涙を流しながら羨むこと間違いなしの毎日を送っていた、ある日の事。同じことを繰り返す毎日に飽き始めていた私はふと、ある事を思いついた。
それは帰ってきた月詠を驚かせるというものだった。
時間を確認する為に壁掛け時計に視線を向けると、月詠が帰ってくるまでに余裕があった。
私はウォークインクローゼットの奥に置いてある、不用品が仕舞ってある段ボールを引っ張り出した。
段ボールの中に入っていた物はウォークインクローゼットの隅や、家のあちこちに隠して、空っぽになった段ボールに鋏を走らせる。
段ボールを切ってガムテープで繋ぎ合わせたり、慣れない作業に四苦八苦すること数十分。ようやく段ボールのハリボテが完成した。
作戦はこうだ。まず、私がハリボテの中に隠れて月詠が帰ってくるのを待つ。帰って来た月詠が上着を片付ける為にウォークインクローゼットの中に入ってきた所を、ハリボテの中から飛び出して驚かす。我ながら完璧な作戦だ。
私はハリボテの中に隠れながら、驚いた月詠の顔を想像してにししと笑った。
「ふぁあ」
暗い場所にいるからか、眠くなってきた。月詠が帰ってくるまで時間に余裕があるし、少し昼寝をしよう。そう思った私は膝を抱えて横になった。
横になって直ぐに眠気が最高潮に達し、とろとろ瞼が落ちてくる。
ガシャーンという音に、驚いた私は飛び起きた。
「どこだ!どこにいる!」
いつも丁寧な口調の月詠らしくない言葉遣いに驚いた私はハリボテの中から出てた。数センチだけウォークインクローゼットの扉を開け、外の様子を伺った。
おそるおそる覗いた私の目に映ったのは、ゴミ箱を蹴り上げている月詠だった。蹴られたゴミ箱は壁にぶつかると、中に入っていたゴミをこぼしながらころころ転がった。
肩を大きく上下させている、月詠の横顔と雰囲気は今まで見た事がないもので。恐怖を感じた私の口から小さく「ひえ」と悲鳴が漏れた。
バッ、と勢いよく彼の視線がこっちを向く。彼は床に散らばっている物を蹴飛ばしながら、私がいるウォークインクローゼットに向かって歩いてくる。
私は恐怖で体を固まらせて唇を震わせながら、彼を待つことしか出来ない。
遂にクローゼット前にたどり着いた彼は扉に手をかけ、ゆっくりと開いた。
見上げた月詠の表情は部屋の電気の逆光で見えづらかったが、その美しい顔からは一切の色が抜け落ちていた。
彼は私を見下ろし、視線が合うといつもと同じ柔和な笑顔を向けた。さっきまでの怖い雰囲気との温度差に風邪をひいてしまいそうだ。
「どこにいたんだい?」
「ウォークインクローゼットの奥に隠れてました……」
奥にある段ボールのハリボテを指さす。
彼は中を覗き込んで、ハリボテを見つけると「あれか…」と呟いた。
彼は口角を片方だけ上げて自嘲気味に笑った後、しゃがみこんだ。そして細身の身体からは想像できないほどの力強さで、私を抱きしめた。
まるで蛇に締め付けられている様で、私の口からは「ぐえっ」と蛙が潰れた様な声が出る。
「良かった……本当に良かった……」
弱々しくて小さな呟きはまるで迷子の様で。罪悪感が湧いてきた私は月詠を抱きしめ返して「ごめん」と謝った。
抱きしめた彼からはツンとした汗の匂いがしてた。必死に探してくれたんだなと思うと、胸が締め付けられた。
「もう二度としない」
「そうしてくれるかい。さて、と。部屋を片付けないとね」
そう言って立ち上がった月詠に続いて、私も立ち上がる。
部屋がどれくらい散らかっているのだろうかと、月詠越しに覗いてみると私が想像していたよりも被害は大きかった。
映画を観るのに最適な六十五インチのテレビ画面は大きくひび割れ、その前に置いてあるお気に入りのソファーは引き裂かれて見る影もない。
床には叩きつけられて割れてしまった水晶や食器の破片が、光を反射していてきらきらと輝いている。
頭一つ分高い彼を見上げると、瞳が揺れていた。
私は月詠のネクタイを引き寄せ、そっとキスをする。
「私はどこにも行かないから。だから、そんな顔しないで」
そう告げて、もう一度唇を重ねた。
彼の指が、確かめるように私の手を握り返した。