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戦闘中頭を殴られ意識を失った瑞希
目を覚ますとベッドに寝ている瑞希を覗きこんでいる桜介と目が合い、飛び上がって血蝕解放で攻撃しようとする。が、桜介に防がれてベッドに押さえつけられてしまう。
ジタバタ暴れる瑞希に桜介は
「落ち着け!」
「殺されそうになってるのに落ち着けるわけないじゃん!」
「何言ってんだお前!」
「アンタが何言って──は?」
そこでようやく瑞希は桜介が白スーツではなく、鬼機関の制服を着ている事に気がつく。
驚愕で固まる瑞希はその隙に鎮静剤を打たれ、また眠った。
数時間後目が覚めた瑞希は面会謝絶となり、医療部隊の隊員と話をすり合わせてみると、ここが自分の知っている世界と微妙に違う事に気がついた。
どうやらこの世界では桜介と月詠は桃太郎ではなく、鬼で、鬼関の戦闘部隊隊長らしい。
世界を超えた迷子の時点で頭を抱えるのに、桜介と瑞希が恋人だと聞いて更に頭を抱える。
怪我のせいで混乱しているのだと思った隊員は「ゆっくり休んで」と言って病室を去った。
布団を頭まで被った瑞希は「休めるわけないじゃん」と呟いた。
【桜介Side】
恋人の瑞希が怪我をしたと聞いてかけつけると、目が合った途端に殺されそうになりショックを受ける桜介。
瑞希が鎮静剤で眠らされ、そのまま言葉を交わすことすらできず面会謝絶にされ落ち込んでいる桜介の周りで隊員達が
「大丈夫ですよ桜介さん」
「そうっすよ。アイツ図太いし」
「おう…」
力なく返事する桜介におろおろする隊員達。
「桜介」
「……月詠」
「許可が出たよ。第三者の付き添いつきだけど。どうする、会いに行く?」
「行く」
「じゃあ、行こうか」
【瑞希Side】
瑞希はこいつがいるなら当然お前もいるよな。とお見舞いに来た桜介の隣にいる月詠を睨む。
「これ、見舞い」
「…ありがと」
瑞希は桜介から花を受け取り、じっ二人を観察する。
瑞希が己を見つめる剣呑な瞳に、桜介は胸がズキりと痛む。瑞希の態度に「また来る」と言って病室を出た。
それから一週間経っても瑞希は元の世界に戻れず、桜介との関係も含めて悩んでいた。
桜介は瑞希のお見舞いに来るが病室の中には入らず、入口から
「元気か?」
「元気だけど」
「そうか」
確認だけして帰っていった。
帰る手段を一人考える瑞希は頭を怪我してこっちに来た。なら、同じ事をすればいいのでは?そう考え病室を抜け出し、外へと出た。
病院の非常階段へと行き、後ろ向きで倒れた──が、瑞希のお腹に鎖が纏わりつき阻止された。
鎖を辿ると怒った顔の桜介がいた。
「何やってんだ!!」
「…ほっといてよ」
「ほっとけるわけねぇだろ!病み上がりなのに、何考えてんだ!」
「アンタには関係ないでしょ、ほっといて!」
桜介を突き飛ばし、瑞希はその場を去る。
桜介は階段での一件を報告し、瑞希には監視がつくようになった。
瑞希は余計な事しやがって!と舌打ちをした。
瑞希がこの世界に迷い込んで三週間あまり経った。
帰る手がかりが一向に見つからず苛立ちを募らせる。怪我は回復したものの月詠と桜介に対する態度に、医療部隊から戦闘行為にストップがかかっているのも拍車をかけた。
書類をまとめながら苛ついている瑞希の様子に月詠は「気晴らしに散歩でもしてきたらどうだい」と提案する。
月詠と同じ空間にいる事もストレスに感じていた為瑞希はその提案に乗って外へと出る。
街も人も同じなのに、何故あの二人だけ違うのだろうか。歩道橋の上から道を歩く人々や下を通り過ぎていく車を眺め、瑞希は考える。
欄干にもたれかかる瑞希の隣に、後をつけていた桜介が後ろ向きに欄干にもたれかかる。
「なに、今度はここから落ちると思った?」
「…」
「しないっての」
「…」
「…」
無言が続き、瑞希は
「……アンタとアタシなんで付き合うようになったの」
「戦闘中、桃に殺られそうになったのを俺が助けた」
その後お礼としてご飯に誘われ、いつしかプライベートでも時間を共にするようになった。
この世界での瑞希の事を話す桜介の横顔は、幸せそうだった。瑞希の知る桜介は戦闘中は口角を上げ、瞳をギラつかせている。コイツこんな顔できるんだ。
スマホが鳴り。確認してみると月詠からで「そろそろ帰ってきなよ」とメッセージが入っていた。
瑞希が帰る為に階段に足を踏み出すと、昨日まで降っていた雨のせいで足を滑らせてしまう。
桜介が手を伸ばすが間に合わず、瑞希はそのまま転げ落ちていく。
「瑞希!」
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「瑞希!」
名前を呼ばれ、瞼を開くと瑞希は友達の戦闘隊員と目があった。
瑞希は友人の口から語られる桃太郎との戦闘後の目覚めた後の、三週間の自分の様子に憑依ではなく入れ替わりだったのではと考える。そして同じタイミングてこちらに迷い込んでいた瑞希も頭を打ち、元の世界に戻れたのだろうと推理する。
「なんか桃角桜介と桃華月詠が鬼で、桃角と付き合ってるとか訳わかんないこと言ってると思ったらまた怪我するし。ほんと心配したんだから」
「心配かけてほんとごめん」
「じゃ、帰るね。また明日」
「うんまた明日」
友達が帰った後、瑞希は毛布を頭まで被って(やっとゆっくり眠れる)と瞼を閉じた。
直ぐに毛布の中からは瑞希の穏やかな寝息が聞こえてきた。
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階段から足を滑らせて気絶した瑞希を運んだ桜介は、応急室のベッドに寝かされ、瑞希の目が覚めるまでずっと傍にいた。
瑞希の瞼が開かれ、目が合った時、前回のこともあり桜介は少し身構えた。瑞希は桜介を襲ったりなどせず、静かに名前を呼んで涙を一筋流した。
「パラレルワールドだったんじゃないかな、て思うんだ」
「パラレルワールド?」
「うん」
瑞希の話を聞いた桜介は別世界の瑞希の自分に対する態度に、そりゃ普段命を奪い合っている相手が目の前にいたら、攻撃するわな。と、納得した。
病室に時計が設置されていない為、桜介はポケットからスマホを取り出し時間を確認した。
時刻は既に20時を過ぎており、明日も出勤しなければならない桜介は「今日はもう帰る」と言って椅子から立ち上がった。
「ね、桜介」
「んだよ」
「大好き」
「…俺も」
──────完──────
【蛇足】
違う世界に迷いこみ、目が覚めてから数週間。瑞希はいつも通りの生活に戻っていた。
出動要請がかかり、出動した先で白の制服を着た桜介と対峙した。
瑞希の脳裏に歩道橋で見た、愛おしさを宿した桜介の顔がちらついた。
頭を振った瑞希は血でナイフを作り出し、駆け出した。