淀川真澄
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一ヶ月と少し前、鬼を逃がした後私は急いで書類を作成し、改竄したものを上司へ提出した。捕らえられた際に撮られた写真を加工し、似ても似つかない人物の写真を作りデータを保存する。証言などは彼が何も話さなかったおかげで手を加える必要が無く、直ぐに提出することが出来た。
改竄した書類を提出した際、上司はさっと目を通して「ご苦労さま」とだけ言って受け取った。こういう時日頃の行いって大事なんだなと実感する。最初に担当していた先輩達にも気づかれることはなかった。
変わりなく日々過ぎていく中、私は誰にも言えない熱を燻らせていた。ふとした瞬間に彼の事が頭に浮かび、会いたい、あの声が聞きたい、と時が経つ度に彼への思いが私の胸を焦がしてゆく。
華の金曜の夜、二十一時過ぎ。帰宅する人波から外れ、私は路地裏へと足を向ける。薄暗くて臭いこの道はできれば避けたいが、通れば少し早く家に着く。早く帰ってゆっくりしたくて、気づけば毎週この道を通るのが習慣になっていた。
自分の靴音だけが響く路地裏で、壁にもたれかかるように立っている人がいた。私の他にも人がいた事に驚いていると、その人がスマホから顔を上げ、目が合う。
私はもしかしたら夢をみているのかもしれない。目の前に現れた、二度と会うことはないだろうと思っていた好きな人の姿に笑みが溢れる。
「会いに来てくれたんだ、嬉しい♡」
心がぽかぽかと温かくなり、今すぐこの場で飛び跳ねたくなる。恋する乙女な部分がはしゃぎまわっている反面、桃機関の情報に関する部門に所属する部分が彼が私に会いに来た理由を考える。
冷静に考えて敵である私に来るなんて愚行でしかない。危険を冒してまで会いに来る理由を考え、一つの仮説を口に出す。
「上から言われた?私を利用しろって」
「……ああ」
「いいよ」
ゆっくりと彼に近づきながら
「利用されてあげる。どんな情報だって貴方にあげる。だからそのかわり」
数m、手を伸ばせばぎりぎり彼に触れられる距離で歩みを止める。
「貴方の愛を頂戴」
たとえそれがまやかしで、手に入れるものが虚しさでも、私は彼がほしい。
「…」
「…」
無言で見つめ合い、静かな路地裏に車の走行音と室外機の鈍い音だけが響く。
先に動いたのは彼の方だった。ぎりぎりだった距離を詰め、完全に触れられる距離にまで近づいてくる。そのまま手を伸ばされ、頬に添えられて唇に熱が触れる。
ロマンチックとは言えない路地裏の臭いと雰囲気の中、密約は交わされた。