桃華月詠
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それから何度か逢瀬を重ね自分から告白をし、晴れて恋人となれた。告白が成功した日はスキップをしながら帰宅し道行く人々にドン引きされ、職場では花を飛ばしまくりドン引きされた。
それくらい幸せだったのだ。もう、これ以上ないかと思うくらいには。
その幸せが崩れたのはつい数十分前に遡る。朝の早い時間帯、万年人手不足の鬼関で珍しくお休みをもらった私は一人練馬へ朝食を食べに来ていた。朝食に何を食べるか占ってみたところ、パスタが出た。テレビ番組のイタリアン特集で練馬に出来た新しい店のことを紹介していたのを思い出し、スマホで検索してみるとモーニングセットを販売していたのでその店に決めた。
通勤ラッシュ前の早い時間帯、電車には眠そうな顔をした部活生やサラリーマンが乗っていた。電車に揺られて目的の駅に着く。改札を出て暫く歩いていると反対の歩道を歩いている月詠さんの後ろ姿が見えた。
(朝から会えるなんてツイてる!)
「つ──」
声をかけようとして、思考が停止する。月詠さんは桃機関の制服である縦縞模様のはいった上下白のスーツを着用していた。
私は今来たばかりの道を必死の形相で走る。あまりの形相にすれ違う人々がぎょっとした顔をするが、必死に走る。改札を通り、電車が来るまでの間の時間がとても長く感じた。
(早く、早くきて!)
電車に飛び乗ってまた電車に揺られて、家の最寄り駅に着くとまたひたすら走る。アパートの階段を駆け上がり、バッグから鍵を取りだそうとするが見つからない。端っこにあった鍵を見つけ出し、鍵穴に差し込もうとするが手が震えて上手く入れられない。
鍵穴に傷をいくつも作って、ようやく鍵穴に差し込んで解除する。
ドアにもたれかかり、ずるずるとその場に座り込みばくばくと鳴る心臓と荒い呼吸を落ち着かせる為に深呼吸をする。
──そして現在に至る。
月詠さんに正体が、淀川隊長にこの事がバレる前になんとか別れなければ。もしこの事がバレたら何を言われるか分からない。淀川隊長の顔が脳内に浮かび体が震える。
その時ピコン。とスマホの通知音が鳴った。音に驚いて短い悲鳴と一緒に肩がはねる。
確認してみると送り主は月詠さんからで『今度ここに行かないかい?』
お店のURLも一緒に送られてきたので開いてみると良い感じの店だった。
その日は夜からなら会えると返信し、決意する。
この日に別れを月詠さんに告げよう、と。