神様の言う通り/HQ!!
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佐倉 要(さくら かなめ)
*****
治くんと角名くんと同じクラス。
ざっくり系女子。
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―――前方からとても楽しげな声が聞こえてきた。声の主を確認しようと視線を向けるとやはりというか何というか、もう片方の宮くんと銀島くんがこちらへ歩いてきていた。何でも良いけどこれ、傍から見たらカツアゲされてるように見えたりしないだろうかと思わないでもない。というかこれ以上バレー部と関わるのは胸やけがしそうなので、一刻も早くこの場から去りたい。思わず眉間にしわを寄せていたら、宮くんに「もうちょい鼻押さえとけ」と小声で言われた。何事…?と疑問に思いつつ、とりあえず言う通りに再びタオルを当てておくことにした。
「喧しいわ。しばらく様子見なあかんから先帰っとれ」
「どないしたん?もしかしてマジで泣かして……ってめっちゃ血ぃ出とるな!?やば!?」
「ちょっとぉ、暴力はまずいんとちゃいます治くーん?」
「違う違う、ちょっとドアにぶつかっちゃったんだよ」
「うへ、打ち所悪かったか。災難やったなぁ」
「っちゅーわけやから先帰れや」
「しゃーないやっちゃな。また泣かすなよ?」
「俺も残って治の面倒見るから大丈夫」
「ほんならええか。お大事になー」
……しばらく黙って会話を伺っていたが、とりあえずもう片方の宮くんと銀島くんはさっさとお帰りになるようだ。銀島くんのお言葉に軽く頭だけ下げつつ、2人が何やらあーだこーだと騒ぎつつ去っていくのを見送った。完全にいなくなったのを見て溜息を吐いた時。
「俺らのこと苦手やろ」
「!?」
宮くんからド直球な質問を投げつけられた。本人を目の前にしてどう答えるべきか……と悩んだが、今更体裁を良くしようという気も起きないので正直に申し上げることにした。
「……そりゃ殆ど話したこともないですから。バレー部でよく乱闘してるって聞くし、どんなヤバい人達なのかと思うじゃないですか」
「大丈夫、乱闘してるのこいつと侑だけだよ。他のメンバーは至って無害です」
「侑が人格ポンコツなのが悪い」
「じ、人格ポンコツ……」
先ほどのやり取りを見るに常に仲が悪いというわけでは無さそうだが、有り体に言えば2人ともなかなか気が短いタイプなのだろう。こちらの宮くんは比較的大人しいように見えるけど、その辺りは流石双子と言わざるを得ない。これから席が変わるまで出来るだけ刺激しなように気を付けよう。しみじみと心に刻んでいると、さっさと帰りたいという気持ちが先行しすぎて忘れていた事実を思い出した。
「……顔洗ってきます」
「ああ、せやな。ほんならついでに俺もなんか奢るわ」
「いやいや、良いですって」
「良くないわ。タダでポッキー1箱くれた神を無下に出来るか」
「神」
「お前その神に怪我させてるんだけど」
「だからちょっと凹んでたんやって!」
凹んでたのか、それは全く気付かなかった。どうやら私はあの一瞬でクラスメイトから神に昇格していたらしい。まあでもよく考えたらポッキーをあげた対価と思えば凡そプラマイゼロだろうか。奢って気が済むならそうさせておいた方が面倒にはならないか、という結論に達した。
「それなら神は唐揚げ食べたいっす」
「ん、買っとく」
「っていうか神を自称してるのウケる。今度から佐倉さんのこと神って呼ぼう」
「俺も」
「神は人間の中に隠れて生活してるので神と呼ばれるのはちょっと困りますね」
「やばい何か設定出来てる」
「毎日後ろでこっそり拝んどくわ」
などと大変ぐだぐだな会話を繰り広げつつ、私は結局コンビニに寄ることになった。お手洗いを借りて顔を洗いながら「あれ、これさっさと洗って出てったらばれずに帰れるのでは?」と思ったが、お手洗いを出てすぐ近くで角名くんに「おかえり」と声をかけらえてしまったので逃亡計画はそっと無かったことにしておいた。宮くんは今買っている所だと言うので、ひとまず外に出て待つことにした。
「そういや佐倉さんって家はどの辺?」
「そんなに遠くないですよ。ここから大体右に真っ直ぐ歩くだけです」
「なら帰る方向は一緒だから家まで送ってくよ」
「えっ、何それ。角名くんは親切の塊かなんかか?」
「この状況で女の子を1人で帰すほうがどうかと思うんだけど」
すごいなぁ角名くん。ずっと怖い人だと思っててごめん、めっちゃ良い人だったわ。やっぱり実際話してみないと人となりは分からないものだなとしみじみ思っていると、買い物が済んだらしい宮くんがコンビニから出てきた。そのままほい、とから揚げの入ったカップを手渡された。コンビニのフライヤー商品などあまり食べないのだが、たまには悪くないだろう。
「ありがとうございます。ということでお1つどうぞ」
「え、自分が食べるんとちゃうの」
「ありがたく頂きますけど、神は小食なので2つもあれば十分ですね」
「ならもっと他にあったやろ。何でわざわざ唐揚げにしたんや」
「2人とも食べるかなぁと思いまして」
人様の金で買ったものを分けるもの少々忍びないとは思ったが、貰ったのは私なので食べようが分けようが私の自由だろう。ポッキーの対価だし。宮くんにカップを差し出していたら、きょとんとしていた所から何を思ったのか突然拝まれた。
「神か……」
「え、ええ……そんなしみじみと……」
「俺も貰っていいの?」
「どうぞどうぞ。買って頂いた身で言うのもなんですが」
「やった、あざっす」
「くっ、いつもならふざけんなと言いたい所やけど、神が許可をしたのなら逆らえんわ……」
「こいつガチで言ってる」
何やかんやで2人に唐揚げをおすそ分けして、私も残りを頂くことにした。さっさと帰ろうとか思ってたはずなのに、結局のんびりまったり過ごしちゃったじゃないか馬鹿野郎。壁に頭を打ち付けたい衝動を抑えつつ、ごちそうさまでした、と空になったカップをごみ箱へ捨てる。
「オッケー?それじゃ帰ろっか」
「何やその一緒に帰ります的な言い方」
「方向一緒だし。送っていくつもりだけど」
「え、俺も行くわ」
「逆方向じゃん」
「今同じ方向になった」
何を言ってるんだこやつは。角名くんは方向が同じだと言うから断る理由が特にないとしても、流石に逆方向の宮くんまで来ることも無かろうに……とは思うのだけど。
「あかんの?」
「……そんな捨てられた子犬みたいな目で見るんじゃない!良心が痛むだろ!」
「熊かなんかの間違いだと思うよ」
ちょっと分かる!と叫ぶのは止めておいた。このまま断ろうとしても不毛な争いになる予感しかしなかったので、申し訳ないと思いつつせっかくの厚意に甘えることにした。ここで無駄に時間を潰すよりも余程ましだろう。
それから買ってきた新刊の話をしたり、2人からバレー部の話を聞いたりしながらのんびり帰り道を歩いて行った。平和に終わるはずだった1日がとんでもない事になったものだ。ポッキーをあげただけでこんな展開になると誰が予想しただろうか。やや遠い目をしながら歩いていると、ようやっと我が家の前に着いた。
「ホントに家まで送ってもらって申し訳ない」
「俺らが勝手にやってるだけやし、気にせんといてや」
「有り難さの極みっす」
「ははは、お大事にね」
「また明日なー」
2人は私を送る任務を終え、ひらりと手を振って帰路に着いた。また明日、そりゃそうか2人とも同じクラスだしな。この醜態を晒した上でどんな面して登校すればいいのだろうか、と就寝時間までずっと悩む羽目になってしまった。ネタにさえされなければそれでいいのだけど……。