毎日北くん!/HQ!!
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立花 耀(たちばな あかる)
*****
北さんと大耳さんと同じクラス。
いつも楽し気な美術部員。
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私が教室で絵を描いている時、大体は北くんが隣でじっと絵を眺めている。初めのうちは気恥ずかしさがあったけど、今ではすっかり慣れてしまったので見られていても特に何も言わない。曰く、「見ているのが好き」だそうだ。彼も特別美術が苦手というわけでもないんだし、興味があるなら自分で描いてみたらどうだろうと勧めたこともあった。が、それについてはやんわりと断られてしまった。まあ私もバレーに興味があるならやってみたらどうだ、と言われても断るだろうなと思ったのでそれ以降は積極的に勧めたことは無い。
こうしてほとんど毎日絵を見て貰っているというだけでも、とても貴重なことなのだろうなぁと思っている。その気持ちだけは3年目になった今まで一度も忘れたことは無い。とはいえ私が美術に対して意識が高いのかと言ったら正直そんなことはなく、見てくれる人がいると分かっているからずっと続けられているというのもあるのだ。きっと彼がいなかったら、どこかで絵を描くことが嫌になっていたかもしれない。だから私にとって彼はとても大事な友人と言うか、同志と言うか、上手くは表現できないが凡そそんな所だ。
―――私がこうして唐突に物思いに耽っているのにも理由がある。
「おはよう。浮かない顔やな」
「おはよう……」
「今回は?」
「……佳作やて」
そう、以前に応募していた絵画コンクールの結果が出たのだ。美術部には定期的に決まった大きな大会があるわけではなく、先生から勧められたもの、或いは自身で見つけたコンクールに応募するという形になることがほとんどである。そして今回の結果が佳作。佳作は賞には入らなかったが次いで良い作品と言った位置づけと認識して良いだろう。結果として何にも選ばれなかったというわけではない。
「ちゃんと選ばれとるやん」
「せやねん!せやねんけどぉ……」
―――それは分かっているのだが、やはりどうせなら入賞したい。3年になると避けては通れぬ受験という最大の壁が待っている為、後半になるにつれて絵に掛ける時間も減らさざるを得なくなってしまう。そうなる前に何とか1度くらいはドドンと大賞を勝ち取りたいのだ。が、結果はお察しである。儘ならぬ悔しい気持ちを本日の標的であるミネラルウォーターへとぶつける。
「展示は?」
「しとるよ、こっから電車で3駅くらいのとこ。今月いっぱいくらいやったと思う」
「ほんならバァちゃんと見に行くか」
「うう、いつもありがとなぁ……」
北くんはこうして結果が出て展示が行われると、余程都合の悪い時以外は必ず見に来てくれるのだ。場所が近ければ北くんのお祖母ちゃんも一緒だそうで、どうやら彼女も私の絵を楽しみにしてくれているらしい。もはや私の絵は北家に生かされていると言っても過言ではないだろう。
「はー拝も。今度何か好きなもん奢るわ、何がええかな?」
「別にいらん。こっちが好きで見に行ってるんやし」
「いつもそれェ!もうちょいこう、無いの?」
「無い」
この男はいつもそうだ!無欲と言うかなんと言うか、こちらが何かしらお礼をと思っても彼はその感謝の意を示す隙すら与えてくれない。それだけがずっと不満なのだが、私は代わりに日常的にモデル料と称してお菓子や飲み物を提供している。そう言えば特に渋ることも無く素直に受け取ってくれるのだ。本当なら望むものを渡せれば一番なのだけど、こればかりは致し方ない。彼は未だに生態が謎な部分が多いので、この最後の3年目に出来るだけ彼の生態を暴くのも密かな目標だったりする。
「無いけど、立花は次の日曜暇か?」
「ん?暇しとるよ」
「ほんならまた案内してや。それでええわ」
「むー、そんくらいならいくらでもするけど……」
私が何か奢ろうかと言うと、結構な確率でこう返ってくる。特に場所が若干遠い時などはお祖母ちゃんを連れて行くわけにもいかないので、私が一緒に付いて行くことが多かったりするのだ。後は時々大耳くんや尾白くん、赤木くんなどのバレー部メンバーが一緒だったりとか。めちゃくちゃ絵画に興味があるというわけでも無いだろうに、都合がつけば何かと来てくれるのだから皆優しいなぁと思う。まあきっと皆で遊びに行く建前にでもなっているのだろう。日課のデッサンを終えてスケッチブックを閉じた瞬間、そこでハッと気付いて勢いよく北くんの方へ顔を向けた。
「……っちゅーか何気に北くんのお祖母ちゃんと一緒なの初やな!?」
「ん、せやったか?」
「初やって!やば、ちょっとテンション上がってきたわ!おみや用意しとかな」
「だからいらんて」
北くんのお祖母ちゃんが見に来てくれているらしいことは話には聞いていたが、何かとタイミングが合わず実際に一緒に行ったことが無かったのだ。いつも楽しみにしてくれているという彼女に、直接お礼が言える機会が出来たのは非常に喜ばしいことだ。次の日曜日までに何か準備しておかなければ!と今から意気込むのだった。
―――――
(……やっぱおかしいわあの2人)
(同じクラスになってしみじみ痛感する気持ちは分かるけどな)
(アッハハ、今更すぎるわ)
(何の話や)
(お前はすっとぼけんのも大概にせぇよっちゅー話や!)
(……ああ。すっとぼけとるのは向こうの方やろ)
(((えっ)))
(しょーもない話してる暇があるならさっさと着替た方がええやろ)
(おい信介今の何や、ちょお待ちぃ!)
(……まじ?これはお赤飯炊く流れ?)
(いや、それはまだ早いんとちゃうかな……)