毎日北くん!/HQ!!
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立花 耀(たちばな あかる)
*****
北さんと大耳さんと同じクラス。
いつも楽し気な美術部員。
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「―――大耳くんストップ、そのまま2分!」
「はぁ!?」
「はは、やっぱりなぁ」
本日の開口一番は、挨拶ではなくこれである。北くんと大耳くんが朝練から戻ってきたのを確認し、目の前を通り過ぎる直前に制止をかける。戸惑いつつも大人しくしてくれている大耳くんに感謝しつつ、ぱぱっと鉛筆を取りクロッキー帳にその姿を描き込んでいく。ちなみにこれは今回が初めてではない。私は何となく目についたクラスメイトに声をかけモデルをやってもらうことが多々ある。もはやクラスの不定期行事のようなものなので、すっかりクラスメイトも慣れてしまったようだ。時折面白がって立候補してくれる子もいたりするので、私としてはとても有り難い限りである。そんなこんなで約2分。仕上がったものをじっと見つめ自己評価をしつつ、ようやく大耳くんを解放してやった。
「大耳くんありがとー、もうええよ!あとおはよう!」
「……おはよう。知ってはいたけど、いきなり来るとびびるわこれ」
「んふふー、抜き打ちテストみたいやろ?」
何やそれ、と苦笑しつつ大耳くんは席へと向かっていった。これは私にとっては絵の練習であると同時に、皆とコミュニケーションを取る手段であったりもする。普段話さないような子でも積極的にモデルをお願いして、そこからちょこっとずつ話せるようになったりするのだ。私はそれが何よりも楽しかった。「皆友達!」なんて綺麗事を言うつもりはないけれど、これから先少しでも皆の心に残るような人間になれたらいいなと思っている。このクラスを制覇するのも遠くは無いな!なんて意気込んでいると、いつの間にか私の後ろに回っていたらしい北くんが先ほど描いた絵をじっと眺めていた。
「いつ見てもすごいわ」
「北くん、クロッキー好きやもんな」
「あっという間に出来上がってく様を見るんはなかなかおもろいからな」
「せやろ?まー私はまだまだやけどなぁ」
やっぱり2分ではまだ足りなかったかな。少しだけ間に合わなかった部分を見て、次はどう描き進めようかと思案する。およそ5分くらいあればちょうどいいかなと思うけれど、流石に朝の短い時間をそこまで奪ってしまうのも少々忍びない。ということで私がお願いするのは大体2、3分と決めている。勿論許可を得られれば5分お借りしたりもする。
昔よりは随分と描けるようになったか、と一息ついてクロッキー帳を閉じた。それに合わせて北くんも自分の席へと座った……が、何やら大変物言いたげな様子でこちらをじっと見ている。なんだ、大耳くんはもっと男前だとでも言いたいのだろうか。分かる、私もそう思う。もうちょっとじっくり時間が取れたらばっちり男前に描くから許してほしい。などと心の中で勝手に謝罪をしていると、彼の口から全く予想していなかった言葉が飛んできた。
「まあ別にクロッキーやなくても、立花の描く絵ぇは何でも好きやけどな」
「……何やそれ初耳!?」
「そら言うたことないし」
思わぬ褒め言葉に私が動揺しているというのに、この男は顔色一つ変えず言ってのけるのが憎い。それでこそ北くんという感じだけども!何で突然そんなことをと思ったが、多分私が「クロッキーが好き」と言ったことに対するフォローなのだろう。そもそも自分の絵を好んでくれると言うだけでも嬉しいのになぁ……というか!
「そんならもっとバンバン褒めてくれてもええのに!」
「割といつも褒めてるやろ」
「……ハッ、せやった!ありがとう北くん好き!」
「いやどんだけちょろいねん」
そんなで大丈夫か?と割とマジトーンで心配されてしまった。いや、北くんはいつ如何なる時でもマジトーンだったので私は気にしない。やっぱり絵は今までずっと頑張って続けて来たものだ、それを見て褒めてもらえるというのはとても嬉しいし、それを伝えてくれる人が身近にいるというのは本当に有難いことだなと思う。良いクラスメイトを持ったなぁとしみじみしていると、そういえばまだ言っていない言葉があったことを思い出した。
「おはよう北くん!」
「おそよう」
「遅くない、全然遅くないやん!まだ朝やろ!」
「いやでもタイミングがなぁ」
くそう手厳しい。なら明日は朝イチ決める!と言うと、いや別にとあっさり返されるのだった。どっちだよ!と心の中でこっそり突っ込みつつ、一限の数学へと思いを馳せる。苦手なんだよなぁ数学。だからと言って放り投げる私ではないけれど、こればかりは相性というものもある。と思ってる。多分。まあいざとなれば隣の優秀な方に助けを請えば良いだろう。
「毎度は助けんからな」
「……何故バレた!」
ベシッと机に数学の教科書を叩き置いて、その上にべっしょりと突っ伏すことしか出来なかった。うう、帰ったらまた数学の問題集とにらめっこしなければ……。
―――――
(なぁ信介、俺が教室に入る前に「気ぃつけろ」って言うてたやろ。アレ何で分かったんや?)
(まだ立花が他の奴と喋っとったから、今日はクロッキーか思っただけやけど)
(んで?)
(多分朝練帰りの連中を狙って待っとったんやろ。ついでにお前はまだ標的になったこと無かったしなぁ)
(標的て。いやそれよりも、ようそこまで……)
(いつものことやからな)
(……)
(何やその微妙な顔は)
(いや、何でもないわ……)