4話
夢小説設定
この小説の夢小説設定▼デフォルト設定
城ヶ崎 新(じょうがさき あらた)
*****
ハルヒや双子と同じく1-Aクラス。
基本的に自己評価が低めのネガティブお嬢様。
ハルヒが一番の親友であり、何事もハルヒ優先で考えがち。
目が隠れるほどの前髪と重めの三つ編みを装備した野暮ったい外見。
兄が1人いる。両親は基本的に海外で不在。
親族関係の名前は固定です。
兄:進矢
義姉:結花
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
何やかんやで準備室に行っても良いという許可を得て、それからは無理くり正当な理由を生み出して少しずつ新と話すようになった。とはいえ長居すると鏡夜先輩に怒られるから、本当にちょっとの間だけだ。ずっと気になってることがあるからもう少し時間があればなぁと思ってるんだけど、まぁ同じクラスだしどっかで聞くタイミングあるだろう、と軽く思ってた……最初だけ。
「ハルヒ、食堂いこー」
「……あれ、新は?」
「今日は倉賀野さんと桜塚さんと食べるって」
「あ、そう」
放課後。
「……いない」
「新なら用事があるから遅れて行くってさ」
また別の日。
「図書館で本返しに行ってる」
更に別の日。
「今日はれんげちゃんと一緒に食べるって……」
……ここまでくると流石におかしくない!?ハルヒガチ勢の新がハルヒと一緒にいないとかどうなってるの!?お昼も放課後もいつの間にかいないし!ホントに同じクラスにいるのか!?って疑問すら湧いてくるんだけど!これではいつまで経ってもすっきりしないままだ。
*****
「ねえ馨、最近様子おかしくない?」
昼休み。ハルヒは開口一番でド直球な質問をかましてきた。心当りがありすぎて思わず噎せ込んでしまったが、深呼吸して何とか息を整え平静を装う。装うにしても遅すぎる気がするけれど。
「な、何さ突然」
「だって、ずっと新の行動気にしてるみたいだし……何か用事でもあるの?」
やはりというか、ハルヒにはお見通しだったようだ。観念したように両手を挙げ降参する。とはいえ、明確な用事と言う用事があるわけではない。ただずっと気になっていて聞きたいことがあるというだけだ。
「……聞きたいことがあって」
「ふーん。まあ、自分も最近はゆっくり話す機会が減っちゃったんだよね」
「そういやハルヒ、あんまり新と一緒にいないよね。喧嘩でもした?」
光の疑問にそういえばそうだね、と同意する。ハルヒがホスト部に入った頃は僕らが面白がって構い倒した覚えがあるけど、最近はそんなでもない……はず。いや何だかんだで慣れてしまったので、こうして一緒にいることが大半ではある。不思議な顔をする僕たちを見て、ハルヒは小さくため息をついた。
「してない。……そもそも新が近付きにくくなってるの、2人の所為なんだけど」
「「え、まじで」」
全く予想していなかった言葉が返って来て、僕も光も目を丸くしてしまった。一体どういうことだ。
「流石に自分も何かしたかと思って本人に聞いたんだよ。そうしたら新はまだ2人のこと怖がってるみたいだし、楽しそうにしてるのに邪魔したら悪いからーってさ。むしろ自分は新と一緒の方が気が楽で良いんだけど……」
「な、何それ初耳……」
「聞かれなきゃ言わないよこんなこと」
続くハルヒの言葉に、なかなかの衝撃を受けてしまった。確かに僕が初めて準備室に入った時、新は「双子(ぼくら)に見られたらまずい」といった様子だった気がしないでもない。でも僕は一応これでも準備室に入る許可も貰ってるわけだし、少しくらいは気を許してくれてるのかなーなんて考えていた……が、どうやら甘かったようだ。密かにショックを受ける僕とは違い、光は全く意味が分からんと言った様子だった。
「えー、僕ら全然怖くないジャン」
「……ハルヒはどう思う!?」
「ええ……?自分はもう慣れたっていうか、そもそも怖いと思ったことがないし」
「全く参考にならない……」
「そりゃハルヒに聞いても無駄でしょ。どうしたの馨」
「いや、ちょっと……」
ハルヒが参考にならないことなど分かっていたけれど、誰かから客観的意見がほしかった。僕らは昔からやりたいことは周りなどお構いなしに際限なくやってしまう。最近は少しずつ気にするようにはなってきたけど、それでもまだまだその辺りの加減が分からない。うんうんと頭を捻っていると、ハルヒが何か納得したように口を開いた。
「ああ、2人とも何かやらかす時って大体悪戯のレベル超えてるし、そもそも言動に棘があるから所謂”いじめっ子”みたいに見えるんじゃないかな」
「「そこまで言わなくても良くない!?」」
「客観的に事実を述べただけだよ」
相変わらずストレートにぶち込んでくる。新の反応をしみじみ思い返す限り、恐らくこれが正解なんだろう。流石親友はよく理解していると感心しつつも、想像していなかった展開に思わず机に突っ伏した。
「う、ええー……新は絶対いじめないって言ったのにー……」
「そんなこといつ言ったのさ!?……って、この前の時か。ねえ、そんなにヤバい何かがあるわけ?」
「ヤバいっていうか……ほんとに(※新が)この世の終わりの様相だったというか……」
「―――やっぱ僕だけ知らないの不公平!何なの一体!?」
光の憤る気持ちが分かるだけに、僕はここで何と返したら良いのか迷ってしまった。正直に言ってしまっては新を裏切ることになるだろうし、かといってここで光を上手いこと窘める自信もあまり無い。そうこうしているうちに―――
「新、昔に色々あって、顔を見られるのが怖いんだって」
「ハルヒ!?」
「これくらいは良いでしょ、むしろ知っておくべきだと思うし。鏡夜先輩にも伝えておくから」
「それで大丈夫なら、いいけど……」
―――ハルヒがあまりにもさらりと言ってのけるから驚いてしまった。でも、確かに事前に伝えておけば初めて会った僕らのようなことは起こりにくいかもしれない。少なからず光も驚いたようで、ばつの悪そうな表情になった。
「色々って、何?いじめとか?」
「……自分も詳しくは知らないんだけど、多分近い何かがあったんじゃないかな、とは思う」
「ふーん……それであの髪型なワケ」
「ちょっと光、変なこと言わないでよね」
「言うか!!僕のことなんだと思ってるのさ!?」
「えっ、非常識で口が悪い……」
「そ れ は い い !つまりそのことで僕たちにいじm……いじられるのが怖いってことデショ」
「まあ単純に言えば、そういうことじゃない?」
……あれ、ハルヒは新から聞いてないのか。何となくハルヒには全部伝えているものだと思っていたから、僕としては少し意外だった。まあ知っていたとしても、ここで軽率に漏らすような人間でもないだろうけど。しかしいじめ、いじめかぁ……最近は(個人的には)そんなでもないと思うんだけどなぁ……。
「だから僕は絶対にしないよーって言ったんだけど」
「あれだけ警戒心の強い新がそう言われて簡単に信じられると思う?」
「…………思いませーん」
ハルヒにぴしゃりと言い放たれ、再び両手を挙げる。
「あ、ハイハイ!新の歓迎会開いて友好を深めるってのはどう!?」
「ド派手にやる気でしょ、却下」
「何で!それがホスト部流じゃん、新にも実感してもらった方が親しみがわくんじゃない?」
「そんなことされても余計に恐縮するだけだよ」
光の提案もあっさりと跳ね除けられる。あの新が派手なものを好まないことは、初めてホスト部に来た時から分かっていたことではあるけど。そうなると僕たちに出来ることっていったい何があるんだろうか。
「出来る限り大げさなことはせずに、かつ僕たちが怖くないと分かってもらえるような……?」
「新に優しくしてあげれば……って思ったけど、それも逆効果かもなぁ」
「優しくするのもダメなの!?何それ難易度高すぎない!?」
「勿論ダメじゃないけど……何て言えばいいのかな、わざとらしいのとか、露骨すぎるのはちょっとね。だから、少しだけ言葉を柔らかくして、普通に接してあげるのが一番じゃないかな」
……つまるところ、あまり変に気を遣いすぎないでいた方が良いのだろう。一番の問題は、僕らの”普通”が新の”普通”と同じラインにあるのかということだ。
「普通って……僕ら基準でいいわけ?」
「さあ。そのさじ加減まではアドバイス出来ないよ」
「はー……他の女の子ならここまで悩まなくていいのに―――」
光がそう零した直後。
「……あの」
「「「………!!!???」」」
―――いつの間にか、しばらく席を外していた新が戻って来ていたらしい。全く気付かなかったというのも失礼な話だが、一体どこから聞かれていたのだろうか。これはあまり良くない流れな気がする。
「ごめんなさい.。私のことで余計な気を遣わせてしまって」
「ま、待って新、これはただこの2人にもうちょっと他人への心遣いを学んでもらおうと思って」
「ううん、大丈夫。これ以上悩ませるのも申し訳ないし、私のことは空気か何かだと思ってもらえればいいから。それだけ……です」
当然だが、表情は見えなかった。それでも声が少しだけ震えていたように感じた。新はそのままバッと頭を下げて、どこかへと走り去ってしまった。
「あ、ちょ、ちょっと待って新―――」
ハルヒが立ち上がり追いかけようとするのを見て、僕は咄嗟にハルヒの腕を掴んで止めた。自分でも理由はよく分からなかった。それでも、今を逃したらもう二度とチャンスが来ないような気がしたから。
「ハルヒ、僕が行く」
「え、馨、でも……」
「ちゃんと言葉は選ぶしきつく言ったりしない。少なくとも光よりは得意だと思うけど?」
「ハァ!?僕だってやれば出来るし!?」
不安げなハルヒを遮って、真剣な表情ではっきりと言葉を返す。実際光よりはマシだと思ってるし。ハルヒは随分悩んでいたようだったけど、その内困ったような、或いは怒ったような複雑そうな表情で僕を見た。
「……分かった、馨に任せる。泣かせたら怒るからね」
「ちゃんと新連れて来てよネ、僕も気になるし」
「りょーかい」