4話
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城ヶ崎 新(じょうがさき あらた)
*****
ハルヒや双子と同じく1-Aクラス。
基本的に自己評価が低めのネガティブお嬢様。
ハルヒが一番の親友であり、何事もハルヒ優先で考えがち。
目が隠れるほどの前髪と重めの三つ編みを装備した野暮ったい外見。
兄が1人いる。両親は基本的に海外で不在。
親族関係の名前は固定です。
兄:進矢
義姉:結花
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「―――顔を見られるのが怖い?」
「特に男にな。俺も最初にこいつの顔を見る時に傷害未遂を起こされて、止めるのに苦労した」
「いやいやいや、そこまでって流石にまずくない?」
ひとまず落ち着いて話せる雰囲気になった所で、まずは簡潔に事情を聞いた。聞く限り本当に原因自体はすごくシンプルだが、それにしてはあまりにも重症と言わざるを得ないのでは……?
「っていうか新の家だってそれなりの家でしょ、今までパーティーとかどうしてたのさ」
「そんなのほとんど出たことありませんよ」
「まじで、それアリなの!?」
「俺もおかしいとは思った。城ヶ崎は名の知れた企業であり、公の場でも何度か挨拶をした覚えがある。……が、俺はこいつの顔を一切知らなかった」
あの鏡夜先輩も知らない、というのだから本当なのだろう。城ヶ崎。名前は知っているし、ウチだって何度か見たことがあるはずなんだけど―――
「……ん?そういえば僕も、見たことあるの……男の人、だけかも」
「兄ですよ」
「そう、城ヶ崎が公の場に出てくるときはこいつの兄しかいなかった。正式な跡取りである以上、兄が出てくるのは別段おかしいことはない……が、妹がいるというのは話にしか聞いたことがなかったな。一度二度ならまだしも、毎回のように顔を出さないのは妙だとは思っていた」
「……で、その出てこない理由がこれってわけかぁ」
僕はそもそも妹がいるということすら知らなかったけど……確かにここまで重症となると迂闊には出られないか。にしてもよく学校に来てるなと思わないでもない。登校拒否は流石にまずいから苦肉の策として、って感じなのかな。うーん。
「お前はそもそも城ヶ崎の名前を見て気にならなかったのか」
「あ、いやほら、最初のころはね……?まだヤンチャだったっていうか……?ハルヒっていうとびぬけた特異点がいたから、あまり気に留まらなかったというか……?」
「大よそ他の連中も同じようなものか。今までの方向性のおかしな努力と無駄な気配遮断スキルが役に立っているみたいで良かったな?」
「ソウデスネ」
鏡夜先輩に指摘されてしどろもどろになる僕を他所に、新はもはや諦めの境地に至っているようだった。僕に見られるのがそんなにまずかったのだろうか、別にどうもしないのに……と、そうだ。
「……で、僕はどうすりゃいいのさ」
「今回は……完全に私の不注意です。言いたければ言えば良いんじゃないですか。この中でも被って誰にも見せなければいいだけの話ですから」
「見ていて鬱陶しいから止めろと言っているだろう。何度も言うがさっさと無い方に慣れろ」
「嫌ですぅぅぅ……ギャッ!」
鏡夜先輩は落ち着かせるためにかぶせていたウィッグを容赦なく取っ払っていた。いつもこんなことしてたんだろうか。ちょっと楽しそうだなとは思っていない。……やり取りを聞く限り、ウィッグを外しているのも鏡夜先輩の指示っぽいな。そりゃ無い方が頭も視界もすっきりする。何より結構可愛いんだから別に隠す必要も無いと思うわけだけど、そう簡単に出来ないから今の状況になっているわけで。
「……つまり、しばらくは僕も黙ってた方が良いってことだよね」
「ご覧の通りだからな、察しが良くて助かる。馨の方でまだマシだったと思うべきか」
「デリカシー無いからネ、光は」
「で、お前はこれからその光に長いこと隠し事をして生きなければならないわけだが、その辺り理解はしているんだろうな」
鏡夜先輩の言葉でハッとして、僕よりもやや単純な兄を思い浮かべた。
「…………あ゛、僕が後悔するって、そういう意味?」
「そういう意味だ。ちゃんと忠告してやったんだから、後輩思いの優しい先輩だろう?まあ、結局無下にされてしまったがな?」
「うっわぁ……そっか、そうだよなぁ……」
確かにこれは鏡夜先輩の言う通りだったかもしれない。今までお互いに隠し事するなんて無いにも等しいのに。これから光に上手いこと隠していけるだろうか。ウーンと唸りながら頭をひねっていると、しばらく大人しくしていた新が恐る恐る話しかけてきた。
「えっと、馨、くん?」
「ん、ああそう馨の方。改めてよろしく?」
「…………」
へらり、と笑いかけるが、新は眉間にしわを寄せじっと僕を見つめるだけだった。
「な、何かまずいこと言った?」
「いえ、その、きちんと覚えようと……死活問題なので……」
「んな大げさな」
いや、まあさっきの暴れっぷりを見てしまうと本気で死活問題なんだろうな。そっちのが怖いわ!と心の中でツッコミを入れつつ。まあそう簡単に覚えられるものでもないと思うけど、覚えようとしてくれる気があるのはちょっと嬉しいかもしれない。
「何かコツとかは……」
「基本的には前髪を左に分けてる方が僕~」
「あとは、光の方が1割増し性格が悪いんだったな。お前は底意地が悪い方だったか?」
鏡夜先輩に楽しげに言い放たれ、ぎくりと肩を強張らせる。ついでに新までぎょっとした様子だった。
「その話蒸し返すの止めてよ、ほらちょっと新引いてるじゃん!!」
「やっぱり死ぬしかないのでは……?」
「何でそんな極端なワケ!?分かった、分かった新はいじめないから!!絶対!!」
「いえ、他の人もいじめないでくださいよ…」
「それはちょっと」
「ヒエ……」
またちょっと引かれてしまったけどそこは気にしない。だって誰にも何もしないのは面白くないし!なんて思っていたら、流石に見かねたらしい鏡夜先輩がフォローをしてきた。
「全く、俺の部下を怖がらせないでいただこうか」
「鳳先輩……」
何か良いこと言ってるけど、どう考えたって鏡夜先輩の方が怖くない?と思い、騙されそうになっている新にそっと補足をしてやった。
「新、それ後ろに『※但し自分は除く』って書いてあるやつだよ」
「ひえ、逃げ場がない……」
「だから僕は大丈夫だって!ホント!いじめないから……たまに遊びに来ていい?」
「おい馨」
手を合わせ、ちょこっと首を傾げつつお願いをしてみる。元々そのつもりがあったし、何よりも新に何となく興味が湧いた。鏡夜先輩の制止に不満な表情を返しつつ、僕はめげず抗議をする。
「だーってー!!良いじゃん、新もたまには話し相手ほしいでしょ?」
「え、まあ……でも時々鳳先輩が来ますし、個人的にはハルヒと話せると嬉しいというか……」
「振られたな」
「ヒドイ!僕だってかわいいでしょ!」
「ハルヒの方がかわいいです」
「即答」
「気をつけろ、こいつはおそらくウチの部一番のハルヒガチ勢だ」
「怖い……」
別にハルヒよりかわいいとは思っていないけど、こう、ちょっとくらい考慮してくれても良くない?と思いはしたけど、ハルヒガチ勢にはそんなもの一切関係ないのだろう。予想以上にバッサリ切られてしまったことに少々肩を落とす、が。
「……でも、そうですね。特に害がないのであれば、別に来ても怒りはしません。既に知られているなら、少しも気は楽ですし」
「!ほんと!?安心して、超無害だよ!ほらほら良いでしょ鏡夜先輩!」
まさかのお許しが出るとは思わなかった!ここぞとばかりに2人を交互に見やりつつ無害アピールをする。鏡夜先輩は少し悩んだ後、観念したようにため息を吐いた。
「……ハァ、用事が無いときには絶対来るな。用事があっても長居はするな」
「まっかせて!用事ならいっぱいあるs」
「無 駄 な 用 事 で 来 る な よ ?」
「……へーい。あ、ねえねえ。この中ではウィッグ取ってるんだよね?そのままでいてね?絶対他の人は入れないから!」
「はあ、そもそも鳳先輩からもそう言われているので…」
鏡夜先輩に念押しされつつも、綺麗なご尊顔を拝見することが許されたので良し。許可を得られたことに満足していたが、そういえば何かを忘れているような気がする。何だっけ……。
「……で、お前はマーカーを取りに来たのでは?」
「ハッ、そうだった!新、マーカーどこ!?」
「ああ、そういう……えっと……あった。どうぞ」
「いやーすっかり忘れてたよ、ありがとー」
そうだった、色々ありすぎて完全に頭から飛んでいた。新から新品のマーカーを受け取り、ようやく本来の任務を達成した……所で、鏡夜先輩に思い切り首根っこを掴まれた。
「用事は済んだな?さっさと戻るぞ」
「え、おわ、ちょちょちょ、引っ張らないでよ!あっ、新!今度からは遊びに来るからねー!」
「遊 び に 来 る な 馬 鹿 者」
鏡夜先輩に引きずられるまま、僕は手を振りつつ準備室を後にした。
「…………嵐のようだった……」