雷一門の兄弟子に成ったんだが
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「ん、…あれ?ここ…」
あ、そうだ…俺はじいちゃんから修行だと山を行き来するよう言われたんだった…。
打ち込みより走り込みのがまだマシなので泣きながらも山の上まで走って…
戻ろうとしたら突然ヒュン!と風を切る音がしたから咄嗟に避けたら今まで俺が立っていた場所には短刀のようなものが深深と刺さっていた。
「ひっ…」
それに驚いて後ずさると今度は踵に何か引っかかって、すぐにブォン!という音が聞こえて頭を引っ込めたら真上を紐に括り付けられた丸太が通り過ぎた。
あ、あ、あんなのに当たったら頭蓋骨粉砕するっ…!!
う、嘘でしょ!?
来る時はこんな罠みたいなの無かったのに!!
「ひぇ…しぬ…こんな…死んでしまう……っうぇ…、…兄ちゃん…!」
善逸、今日一日頑張ったらご褒美あげるな。
大丈夫お前は出来る子だ。
今朝、そう言って兄ちゃんは俺に弁当と飲み物を持たせてくれた
どうして?
じいちゃんも兄ちゃんも…俺を信じてくれる
直ぐには出来ない事も俺が出来るようになるまで待っててくれる
修行は辛いけど…ここに来てから色々な事が怖くなくなった。
例えば顔に迫ってくる掌が怖かった。
俺にとってそれは叩かれる合図だから。
ギュッと目を閉じて吹っ飛ばされるのを覚悟して体を固くして痛みに耐える。
だけど中々痛みが来なくて、次に感じたのは頭に置かれた掌
髪を梳くように優しく優しく何度も何度も繰り返されるそれ
最初は何をされているのか分からなかった。
あぁ…頭を撫でてくれてるんだ。
嬉しい。
嬉しくて、嬉しすぎて泣いてしまった。
俺は兄ちゃんのおかげで人の手が怖くなくなった。
兄ちゃんは俺が安心すると言ってからよく俺の耳を掌で塞ぐ。
最初はビクってなった。
だって、よくヘマをやらかして怒られる時耳を引っ張られたから。
でも兄ちゃんは優しく触れてくれて…
抱きしめるみたいに頭を抱え込んでくれるんだ。
掌から聞こえてくる兄ちゃんの音…
凄く安心する優しい優しい音…
兄ちゃんも、勿論じいちゃんも…
こんな、何の役にも立たない俺なんかにとても優しくしてくれる。
俺の事を信じてくれる。
誰からも必要とされない。
俺は俺の事好きじゃない。
でも、ここに来てから2人は俺を必要としてくれるんだ
出来ないことが出来るようになったら凄く褒めてくれるんだ
だからかな。
俺は俺の事がちょっとだけ嫌いではなくなった。
頑張りたい…2人の自慢出来る人間になりたい…。
「…って、思ってたんだけどなぁ…」
あの後走り出そうとした俺は…
落とし穴に落ちた。
「なっっんで!!こんな所に落とし穴とかある訳!!???」
おかけで足挫いたしさ!!
てかこの穴…俺が立ち上がって背伸びしても届かないとか…嘘でしょ!!登れないじゃん!!
「う、うぅぅぅ〜…じいちゃん…兄ちゃん…たすけてよぉ〜…」
それで泣いて泣いて、泣き疲れた俺は…
暫く眠っていたらしい。
目を開けると辺りは真っ暗。
横を見れば土の壁
上を見上げると丸い空の真ん中に丁度お月様が見えた。
どれくらい穴の中に居たのか分からないけど、もう兄ちゃんもとっくに帰ってきてるんだろうな…。
…探しに…来てくれないかな…
じいちゃんも、兄ちゃんも…俺が修行嫌がってるのは知ってる。
もしかして逃げ出したと思われた?
あ…じいちゃんに…兄ちゃんに見限られたら俺…どうすれば、いい…の…。
いやだ…嫌だよ…
もう見捨てられるのは…
こんなにも幸せを知ってしまったのに、この場所以外で…
じいちゃんでも兄ちゃんでも無い…俺の知らない誰かと、なんて…
俺はきっと…生きてなんかいけない…
「うぁっ…お、俺…頑張るから…
もう修行嫌がったりなんか、しないっ…からぁ…ふっ…、うえぇっ…
じいちゃ…っ兄ちゃん…っ!」
お願い…助けて…迎えに来て…
俺を独りにしないで
「善逸!!!」
「っ…」
兄ちゃんの…声…
心配、してくれてる…
「善逸!どこだ…善逸!!動けないのか!?
聴こえるなら、声が出せるなら…返事をしてくれ!!」
「っぁ…」
俺を、探しに来てくれた…!
「兄ちゃん、兄ちゃん!!!」
「っ善逸!!…はあぁ〜…良かった…!!
てか、何だこれ落とし穴?しかも深い…師範張り切りすぎだろ…
ほら、善逸。手を伸ばせ、届くか?」
「ひぐっ…う"ん"っ…!」
兄ちゃんは軽々と俺を引っ張りあげてくれて、着物についた汚れを払ってくれた。
「泥だらけだな…痛い所は無いか?怪我は?」
「うぇ…、あしぃ…いだいぃ…!!」
「あー…ひねったのか…とにかく帰ろう。腹減っただろ?怪我の手当もしないとな。」
「…ん、兄ちゃん…あのさ…俺、頑張ったよ…。」
だから、ちょっとだけ甘えてもいいよね?
いや、穴に落っこちて一日中グースカ寝てただけだろって感じだけど!
俺的には頑張ったんだよ!!
それに兄ちゃんは…
「ん、そうだな。ご褒美考えとけよ?」
ほらね。やっぱり、優しい。
「おんぶ、して欲しい。家まで」
俺がそういうと、兄ちゃんはポカンとした顔で見つめてきた。
う、こ…子供っぽいって思うけどさ…一度くらいされてみたいんだもん…。
「…そんなことでいいのか?」
「へっ?」
「…ほら。」
「う、うん」
そう言って背中を向けてしゃがんだ兄ちゃんに後ろからしがみつく。
膝裏をしっかり支えてくれて立ち上がった。
「…足、痛くないか?歩くぞ?」
「ん。大丈夫。痛めたの足首だから」
そんなこと、かぁ…
…兄ちゃんにとっては些細な事なのかな…。
でも俺はずっと…
「…ずっと、憧れだったんだぁ…
頭撫でられるのも…おんぶしてもらうのも…見ていて凄く羨ましかったから」
「…そうか。俺で良ければ幾らでもしてやるからな」
「…、…」
兄ちゃん…俺の兄弟子…
なんで、そんなに優しくしてくれるの?
いっぱい優しく甘やかしてくれた分を、俺はどうやって返せばいいの?
「…兄ちゃん…俺、修行頑張るね!もう逃げ出したりしないよ!…たぶん」
強くなろう
兄ちゃんを…じいちゃんを…
大切な家族を、守れるくらいに。
「…………えっ?なんて??幻聴???」
「その反応おかしくない!?」
俺は普段そんなに修行嫌がってる!?
アッ、嫌がってましたね!!
家に着くと兄ちゃんは夕餉を作ってくれて、じいちゃんは怪我の手当をしてくれた。
やっぱり、俺はこの2人が大好きだ。