雷一門の兄弟子に成ったんだが
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俺を正しく評価し認める者は善!!
低く評価し認めない者が悪だ!!
その言葉にハッとなり、目を開けると、辺り一面色んな映像で溢れかえっていた。
俺は特別だ、お前とは違う!
お前らとは違うんだ!!
「コレは…」
きっとコレは総て獪岳の記憶なのだろう。
生きてさえいれば、なんとかなる
死ぬまでは負けじゃない
そうだろうけどさ…
他の人を犠牲にしたり、騙したり、見下したり、妬んだり…
そんな事を続けて生きて…
お前は本当に満足だったのか…?
鬼にまでなって…
世話になった師範を死なせて…
最後には弱いと見下していた弟弟子に頸を斬られて…
そして…たった独りで死んでいった…
本当なら、俺じゃなくてお前が…‘獪岳’がやり直すべきだったんだ。
「要らねーよ。こんなクソみたいなやり直し」
後ろから聞こえた声にバッと其方を向けば、鬼の姿の獪岳が立っていた
「…でもコレは、お前の身体だ。
なんで俺がお前に成ったのかは分からないけど…本来なら俺の方が異物なんだ…だから」
「俺に返すってか?…今更?
…ハッ!それで?あのカスとジジィと仲良しごっこでもしろって?…想像しただけで吐き気がする。」
獪岳はそう言って酷く顔を歪めた。
「…自分を正しく評価し、認める者が善…なら師範も善逸も…そうだったよ。
だって、2人はお前の事認めていた。
お前は強いと…優秀なのだと…お前がそれを受け入れなかっただけだ」
「…結果が伴ってなければ意味なんて無えんだよ。
その身体はテメェにくれてやる。
精々彼奴等と仲良しこよしでもやってろ。
…だがな、これだけは言っておくぜ。
お前は鬼に成る。必ずな。」
次の瞬間には景色がガラリと変わり、目の前には見覚えのない天井があって…自分はベッドに横たわっていた。
鬼に成る
未だにその言葉だけが耳に残り、心臓が煩いくらいにバクバク鳴っていて…無意識に起き上がろうとするとズクン!と背中に痛みが走った。
「っ…」
あ、…そうだ…俺と善逸は鬼に襲われて…俺は善逸を庇って怪我を…
そこまで思い出して、脳裏に浮かぶ善逸の姿
雷を纏い真っ直ぐに奔るその姿は、正に…
…嗚呼…今なら…今だからこそ…少しだけお前の気持ちが分かるよ。
きっと…獪岳は解っていたんだ
基本の型を磨き、極め抜き、正しく使いこなしていた善逸には…
どう足掻いても…
「…敵わない…なぁ…」
惨めな気持ちになんてならない
とても誇らしく、嬉しく思う
けど…ほんの少しだけ、悔しい
弟弟子に守ってもらった事実が
そしてほんの少しだけ…寂しい
そんな弟弟子の成長が
善逸はこれからもどんどん成長していく。
炭治郎達と出会ってからは特に
俺が守ってやらなければいけない…弱い弟弟子は…もう何処にもいない。
いや、最初から善逸は弱くなどなかったか。
…俺は、これからどうすればいいんだろうか。
「獪岳くん!目が覚めたのね!」
暫くぼんやりと天井を見ていると、扉の方からカナエさんが顔を出した。
…あ、じゃあここって…
「ここは蝶屋敷よ。
獪岳くんの怪我が酷かったからここまで運んで治療したの。
…背中、まだ痛いでしょう?
痛み止めと化膿止めの薬があるから食後に飲んでちょうだいね。」
やっぱり…
「…すみません…お世話になってしまって…
あの…善逸は?怪我とか大丈夫ですか?」
怪我は多分大丈夫なはずだ。
それ程深くはないように見えた。
断言は出来ないけれど。
でもやはり心配ではあるのでカナエさんにそれとなく聞いたら、何故か苦笑いされた。
「怪我の方はね…大したことないの。
…だけど…」
…?………あっ…(察し)
叫びまくって迷惑かけてるのか。
多分薬が嫌だの、傷が痛いだのと喚いているのだろう…。
「……すみません…ご迷惑を…」
「私は気にはならないのだけれど…アオイやしのぶが怒ってしまって…あと鳴柱様も…」
何それカオス
え、じゃあ今宥められる人居ないってこと!?
「…あー…あの…カナエさん…善逸の病室は何処ですか…?」
「…大丈夫?本当ならもう少しの間安静にしていた方がいいのよ?」
いやいや、収集つかないでしょ…
泣いてる相手に怒鳴るのは逆効果だ。
善逸の場合音に敏感な分怯えている時怒鳴るのは更に。
言い分を聞いて、頭を撫でるなりして落ち着くまで待っててやらないと…。
俺はカナエさんに手を貸してもらい、ベッドから起き上がって立ち上がった。
数歩歩いてみたが、辛いのは寝る時と起き上がる時くらいで、他は普通にしてれば痛みは無い。
一応カナエさんが手を繋いでくれて善逸の居る病室に向かう。
近付くにつれ、泣き声と怒鳴り声が聞こえてくる。
…え、これ煩すぎない?
他の患者さんに迷惑では??
「善逸!!静かにせんか!!大した傷ではなかろう!!治療に専念するために薬もちゃんと飲め!!」
「うぇぇぇーー!!!ヤダヤダヤダァァァーーー!!!!
俺、ずっと苦い薬飲んでばっかじゃん!!??
なんで!!??もうやだよおぉーー!!!」
…うるせー…鼓膜に響く…師範の声もデカいが、善逸の声は本当凄まじい。
自分で声を聞いてて耳が痛くならないのだろうか…。
「うわあああぁぁん!!!にいちゃあああぁぁん!!!」
はいはい。兄ちゃんですよ〜。
わんわんと布団に突っ伏して泣いている弟の金髪をポンポンと撫でてやる。
するとガバッ!!と顔を上げ、その勢いのまましがみつくように抱きついてきた。
「兄ちゃ…ごめんねえぇぇ〜!!
俺のせいで怪我させちゃってえぇぇ〜〜!!
無事でよかったよおぉ〜〜〜!!!」
はいはい。お前も元気そうでなにより。
…だから、あの…ちょ…背中にまわした腕を緩めてくれ。
痛い痛い。めっちゃ傷が有るところにしがみついてるから!!
「っ善い「いい加減にしてください!!
その人も怪我してるんですよ!?
それは貴方が一番よく知っているでしょう!?
なのにいつまでも泣きわめいて周りに迷惑をかけて…恥ずかしくないんですか!!」………」
おっふ……さすが学級委員長タイプ…
室内が水を打ったように静まり返った。
「…私はもう付き合いきれません。他の患者さんの所に行ってきます」
空気を一変させた本人は言うやいなやスタスタと部屋の外に歩いていってしまった。
「…善逸?怪我は大丈夫か?…よく頑張ったな…」
そう声をかけて頭を撫でていると、グスグスと泣きながらもその瞼は下がり、頭を枕に横たえてやるとスヨスヨ寝息を立てて眠ってしまった。
「…はぁ…アレだけ騒がしくしていたのに…獪岳さんが来た途端コレですか…大きい駄々っ子を持つと苦労しますね?お母さん?」
「…やめてください…しのぶさん…」
誰がお母さんか。
「…獪岳…怪我の具合はどうなんじゃ?」
「あ、はい…立ったり歩いたりは問題ないです。
…ただ、起き上がるのはちょっと辛いですね…」
「…そうか……」
師範はそのまま何やら考え込んでしまった。
どうしたんだろう?
「獪岳さん、とにかく今は怪我を治すことに専念してください。
何かあったら呼んでくださいね」
「あ、あの…じゃあ一ついいですか?
善逸と同じ病室にはできませんか?
その方が俺も直ぐ対応出来ますし…」
「…わかりました…ここは幸い2人部屋ですから、獪岳さんは今日からここでお休みになってください
では、また検診に来ますのでゆっくりしていてくださいね」
そう言ってしのぶさんも退出して行った。
「…獪岳…儂もやることが出来た。家の方に戻ることにする。
…くれぐれも…くれぐれも善逸を甘やかすなよ?」
2回言った…大事なことだから?
「まったく、お前は弟弟子に甘すぎる…だからいつまでたってもベッタリと四六時中くっついて…
お前は鬱陶しくはないのか?」
いや、全く。
後ろをくっ付いて回られるの可愛いですけど。
…でも…そうだよな…少しは厳しくしないとダメだよな…
甘えられても突き放さない…と…
………あ、無理
想像しただけで…あの泣きそうな顔思い浮かべたら…
「…すみません…無理です師範!」
そういうと盛大にため息をつかれた
「……やはり早めるべきじゃな…」
「?師範…??」
今なんて?
ボソリと声は聞こえたけれど俺には師範が何を呟いたのか聞こえなかった。
それを知るのは俺の怪我が完治し…
機能回復訓練を終えた後だった。