兄妹でトリップしました
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目を開けるとそこは…
見たこともない場所でした。
「お兄ちゃん…ここ、何処??」
見るからに古めかしい建物ばかり…
まるで京都の街並みみたいだ
「トリップktkr!」
「はい!?」
「鬼滅世界キタ──ヽ('ω')ノ──!!」
「お兄ちゃん落ち着いて!?」
なんでこんなにはしゃいでるんだこの兄は。
いつもは無気力無表情なくせに…いや、今も無表情だけども
「鬼滅…って鬼滅の刃?トリップ?
漫画とかゲームの世界に行くことだよね?え、じゃあここ大正時代!?しかも鬼とか居るの!??」
嘘でしょ、ヤバいじゃん!
下手したら死んじゃう!!
ヤダー!お家帰りたい!!
ねぇお兄ちゃ…って居ない!!?
ちょ、どこ行ったの!?妹置いていくとか酷い!!
キョロキョロと辺りを見回したらお団子屋さんの椅子に腰掛けてた。
…はしゃぎすぎて疲れたな…アレは。
まったくもー…
「お兄ちゃん…何してるの」
「空ー…疲れたー…甘いの食べたいけどお金無いー…」
…そうね、私達この時代のお金持ってないもんね。
なんかいいバイトでもあれば…ん?
「あの…ご主人…コレは…」
店の柱に貼ってある紙
それには新商品の案募集!と書かれていた
「あぁ…家は古くからある老舗なんだが…そろそろ商売が難しくなってきて…なんか目新しい品を考えようとしたんだが中々ねぇ…」
ふむ。御品書きを見てみると定番はみたらしと餡子のお団子…あとは餡蜜…か…
メニューとしては少ないかな…
私達が居た現代ならパフェとかケーキとか色々あるんだけど…
この時代に洋菓子はまだあまり取り入れられていないだろうし…
でもキャラメルとかチョコレートはあるんだっけ?
「…あの…私から案を出してもいいですか?」
「本当かい!?なんでもいい!!ぜひ頼むよ!!」
「空ー…お菓子作るのー…?」
「うん。上手く行けば試食とかさせてもらえるんじゃないかな?」
作るものとしては…やっぱりお団子屋さんだからそれだよね…。
あとは…どんな味にするかだけど…
うーん…この時代ってモノに寄っては高級品の物もあるし…
…餡子の味を増やすか…
思いつくのは…ゴマ団子、醤油と海苔のお団子…あと…なんかあるかな…
「…お兄ちゃん…餡子の味って何があるっけ?」
「んー…野菜は〜?さつまいもー…かぼちゃー…枝豆ー…白餡ー…」
それだ!!
お兄ちゃんナイス!!
「流石お兄ちゃん!!すごい!えらい!!」
思わず頭を撫でる。
兄に対してどうかとは思うけど。
ひとしきりお兄ちゃんを撫でた後ご主人に説明する。
必要なもの殆どお店に揃っていた。
でも枝豆は仕入れないと無いみたいで、またの機会となった。
ご主人に台所…厨?を使う許可も頂いたし、必要な道具も用意してくれた。
…よし!じゃあ、早速やりますか!!
お団子の方はご主人が作ってくれるみたいなので私は包丁とまな板を借りて野菜を刻む。
この時代には電子レンジなんて便利なものは無いので鍋で茹でるしかない。
あとは肝心の餡子作りだ。
先ずボウルにたっぷりの水を入れて、小豆を優しく洗い水を切る。
鍋に小豆と5倍の量の水を入れ、沸騰するまで強火で茹でて…
沸騰したら小豆をザルにあげ、水で洗い流す…
…よし!アク抜き完了っと。
再び鍋に小豆と5倍の量の水を入れ強火にかけて、沸騰してきたら弱火に…
あ、この時代は基本釜戸だからご主人に調整してもらってる。
…コンロって便利だよね…。
無くなって気づくこのありがたみよ…。
因みに小豆が激しく動かないくらいの火力で煮続るのがポイントだ
常に小豆が煮汁に浸かっているように、途中で水をつぎ足しながら40~50分煮る…
…その間暇だな〜…
お兄ちゃんも外の椅子で日向ぼっこよろしくウトウトして…いや、アレ本格的に寝てるわ…もう…。
神経図太すぎる…。
呆れながらため息をついているとご主人が話しかけてきた。
「いやぁ〜…大したもんだな…兄ちゃん!
手際が良すぎて本格的な菓子職人みたいだぜ!!」
わはは!!と笑いながら背中をバシバシ叩かれる。
ちょ、痛いから…やめてください!
そしてやっぱり男に見られるのね…。
いいけどさ…。
「イタタ…よく母の手伝いをしていましたし、お菓子作りは好きなので…。」
ご主人と色々な話をした。
主にお菓子作りの話だが。
とりあえず、今日作ってみる餡は…
定番の小豆…あとは白餡…
ずんだは無理だけどうぐいす餡は作れそうとの事。
あとは、さつまいもとかぼちゃがあるので其れを裏ごしして餡子にしようと思う。
そうこうしてる内に時間が経ち、数粒小豆をヘラにのせ指で潰してみる。
小豆は芯まで柔らかく煮えていたので、ザルにあげて煮汁を切る。
ボウルの上にザルを置き、煮上がった小豆をのせてヘラで潰しながらこす。
この作業がまためんどくさい!
でも作ってる過程はどんな作業でも楽しいんだよねぇ…。
…よし。あとはご主人に大きなボウルを借りてその中に水を入れる。
こした小豆の入ったザルを水に浸けて、ユラユラと揺らす。
コレは水に沈殿したあんを使うための作業だ。
ザルに残った小豆の皮を取り除き、残りの小豆も同様に繰り返す。
そして水にはった餡の上澄みを捨てて、薄皮を取り除くためにもう一度こす。
水で濡らした布きんをザルの内側に広げ、こした液状あんを入れる。
布きんで汁気を搾って、水を流しながら布きんの上から揉むように洗って…しっかりと搾り、中身をボウルに開けて、と…。
よし!さらしあん完成!
あとはコレと水、砂糖を加えて木ベラでかき混ぜる。
ぼってりとした固さになったら塩を入れてよく混ぜ、火を止めて…
あとは冷まして完成〜!!
時代が違くても作る過程は同じなのでやりやすい。
こし器とかあればもっとよかったんだけど…そこはしかたない。
こし餡は手間だけど、粒あんはもっと早い段階で出来る。
あとは野菜を茹でて裏ごしして…
数時間かけてご主人と共に黙々と作業に徹する。
苦労の甲斐があって、数種類の餡が大量に出来た!
はあぁ…疲れたぁ…。
あとはコレをお団子にからめて…。
ふわぁ〜…美味しそう!!
目の前には色とりどりの餡子に絡んだ1粒づつのお団子達。
目でも楽しめるし、匂いからして食欲を刺激してくる。
最早暴力だ。
「よし!じゃあ試食してみるか!ほれ、兄ちゃんの分だ!」
「え、私もいいんですか?」
「何言ってんだ!一番の労働者じゃねーか!!遠慮なく食ってくれ!!」
うわああぁぁ!!ありがとう!!ご主人!!
「では早速…いただきま〜…「パク。…うむ。美味しー…」ファッ!!?お兄ちゃん!!いつの間に!!
…ってあーー!!!私のお団子!!!」
「うまうまー…やっぱり空は料理上手〜」
ひ、酷い…お兄ちゃんは寝てただけで何もしてないくせにぃー!!
うぅぅぅーー…!!!
私が涙目でお兄ちゃんを睨んでいると、ご主人が新たにお団子を持ってきて笑いながら私に手渡してくれた。
貴方が神か!!
「あ、ご主人、せっかく新しい品を作ったんですから試食という形で客引きをするのはどうですか?」
私はお団子1粒づつに爪楊枝をさして餡をからめ、お皿に分けて盛り付けそれをお兄ちゃんに渡す。
「はい。お兄ちゃん。外でお客さんの呼び込みよろしくね。」
「…えー…俺〜…?」
「こういうのは可愛い子がするって相場が決まってるんだよ。
私とご主人が試行錯誤し労働している間お兄ちゃんは日向ぼっこしながら爆睡してたんだから、これくらい当然でしょ?
働かざる者食うべからずだよ。」
食べた分は働け。
笑顔でそう告げると、お兄ちゃんは渋々と外に出ていった。
…数分後、その兄がとんでもないお客を連れてくるとは…この時の私は知る由もなかったのでした。