短編
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炭治郎くんが今にも泣きそうな顔で私を見る。
その口は何か言いたいけど言えない…そんな感じで開いたり閉じたりを繰り返してる。
弟弟子である善逸はグッ!と拳を作り、目に涙を貯めて、今にもこぼれ落ちそうなそれを我慢している様だ。
泣き虫な善逸らしくない。
「…姉ちゃんは…煉獄さんが死んで、悲しくないの?」
…どうしたのだろう…唐突に。
そんなの決まってる。
「悲しいよ」
「だって、だって今の姉ちゃんからは何の音も聴こえない!涙一つだって流してすらいない!
何でだよ!」
そうだね…
でも本当に、悲しいんだよ?
だけど何故か…何の感情も湧いてこない。
頭では分かっているのに…
もう彼は、何処にも居ない事
でも、何処かに穴でも空いているような喪失感が有るのだ。
だから言葉も感情も全てこぼれ落ちていく。
「何でだよぉ…姉ちゃんは、煉獄さんの事、好きだったんだろ!?」
「…え、?」
す、き?
好き…?
私が、煉獄さん…を…?
その言葉を理解したのと同時にカチリ、と何かがハマった音がした。
同時に穴が空き、こぼれ落ちていた中身はあっという間に満たされて、涙という形で私の頬を伝っていく。
「あ、あぁぁ…!!ごめ、姉ちゃん!
気付いてなかったんだね…
俺、姉ちゃんが煉獄さんを好きなのは音で分かってたんだ!
でも、姉ちゃんが自覚してないなんて思わなくて…ごめん…姉ちゃんっ…ごめんよ…!
俺が、余計な事言わなければ姉ちゃんはこんな悲しい音させなくて済んだのに!!」
あぁ…嗚呼…
そっか…
そっかぁ…私は煉獄さんが好きだったんだ…。
だから、彼が死んだと聞かされて、真っ先に心に蓋をしてしまった。
感情を全部閉じてしまった。
ソレに気付かなくて済むように、自分で穴を空けたんだ。
約束、していたのに。
ーーーーー。
「なぁ、桑島。君にひとつ頼みがある。」
「何ですか?そんな改まって。」
「もし、俺の身に何かが起きて帰ることが無かったら「あ、私この後任務が有るんでした。失礼します」ハハハ!任務ならば今し方こなして来たでは無いか!まぁ座れ!そして聞け!」
自分の身に何かが、なんて縁起でもない…
正直聞きたくなんて無かった。
でもその時は聞かなければいけない、と思ったんだ。
「…もしも、俺の身に何か起きて…例えば物言わぬ屍に成り果ててしまったら…
そして、もしその場に共に戦っていた仲間が居たならば…その時は…ーーー」
「おかえり」
「ぇ」
「善子…さん」
「おかえりなさい。善逸。」
「ねえちゃ…っ…うん!うん!!だだいばあぁぁーー!!!」
うおおおおーーーん!!と叫びながら走り寄ってくる可愛い弟弟子。
「おかえりなさい。炭治郎くん。」
「っ…はぃ…ただいま、もどりばしだっ…!」
上を向いて、拳を握りしめて、必死に泣くまいとしている炭治郎くん。
「おかえりなさい。伊之助くん。」
「…、おぅ。俺様はちゃんと戻ってやったぞ!ぜんこ!!」
善子です。
うん。伊之助くんはいつも通りだね。
「おかえりなさい。禰豆子ちゃん。」
「うぅー!むぅー!!」
今は夜。そしてここは蝶屋敷の中。
禰豆子ちゃんは背負子の中から勢いよく出てきて飛びついてきた。
元気だねぇ。よしよし。
「皆が無事でよかった。」
小さい禰豆子ちゃんを抱き上げたまま頭を撫でる。
そして腰にへばり付き、グズグズ泣いている弟弟子。
…腰が、生暖かい…コレ涙だけじゃないよね…ズビズビ言ってるから鼻水ついてるよね。
「善逸」
「………」
「ねぇ、善逸」
「…、グスッ…」
「ふふ、一番お兄ちゃんなのに、いつまで経っても泣き虫だね。
…聴こえるでしょ?私が、何を言いたいか…善逸には、何となくでも分かってるよね。」
「…どうせ泣き虫の弱虫だよ、俺は!
…分るよ…でも、俺は…姉ちゃんに酷いこと…」
「いいの。…ありがとう。気付かせてくれて、ありがとう善逸。」
また頑張るよ。
貴方の分まで。
もう涙は出てこなかった。
私はずっと…
貴方を
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