短編
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善逸と同じ雷の呼吸の一門
その彼女が帰らない…だから一緒に一愛を探して欲しいと善逸に泣き疲れた炭治郎と伊之助は情報を集めつつ、任務先へと向かった。
そしてたどり着いた先はさびれた工場跡地…
使われなくなって久しいにもかかわらず、先日電気のような明るい光を見た者が居るという。
きっとこの場所に鬼が住み着いているのだろう。
そして、その考えは的中した。
入口から進んでいくと1つの扉があり、薄暗い部屋を天井から伸びる電球がぼんやりと照らしていた。
その部屋には鬼が一匹…
だが、肝心の彼女の姿がどこにもない。
「やはり来たか…鬼狩り共…お前達にいいモノを聴かせてやる」
「あああああああああぁぁぁーーーーーー!!!!!!」
何処からか聞こえてくる耳に痛いほどの悲痛な叫び声…
この声の持ち主が誰か…嫌でも分かってしまう。
「この、声…は…まさか」
「ヒヒッ分かるか?この声はな…先に来ていた鬼狩りの女の声だ。
雷の呼吸の使い手らしいなぁ…だから手足を拘束して人間が耐えられるギリギリの電流を流してやってるのさ!
この先恐ろしくて呼吸なんぞ使えなくなればいい!
殺さないだけマシだろう?」
「なんて、卑劣な…!」
「なんとでも言え!お前にはコレだ!俺の血鬼術…とくと味わえ!!」
炭治郎と伊之助は構えながら咄嗟に避ける。
そして放たれた其れは微動だにせず、棒立ちになっている黄色い彼に直撃した。
「善逸!」
「紋逸!」
「俺の術はな…霧で相手を包み込み、眠らせて動けないようにして意識だけはある状態で少しづつ食らっていくものだ。
コイツを喰らった後、あの女も喰らいつくしてやる!」
善逸の身体がガクリと崩れる
それと同時にシイイィィィ…と響く呼吸音
「あの鬼野郎…死んだな」
それを見て伊之助が呟く
「…あぁ…」
炭治郎が其れに同意する
…だって、善逸には効かない術だ。
むしろ、彼の意識を奪ってしまった鬼を哀れにすら思う。
眠っている時の善逸は強い。
速さに関しては柱にすら引けを取らないだろう。
「…でも、今の善逸は…かつて無いほど怒っている。
そういう匂いがする。」
ーーーー…
「炭治郎、パンドラの箱って知ってるか?」
「パンドラの箱?」
「好奇心でその箱を開けてしまった人物は世界中に絶望を振り撒いてしまったんだ。
でも箱の底には希望が入っていたんだってさ。」
ふと、以前善逸が話してくれた話を思い出した。
あぁ…でもこの鬼が開けてしまった箱には…希望など入ってはいないのだろうな…。
目の前の鬼は、不用意に其れを開いてしまった。
入っているのが絶望と恐怖なのだと知らずに。
この鬼は楽に死ねるのだろうか?
だって、彼からは純粋な…強い怒りを感じる。
自分に向けられた訳でもないのに…
冷や汗が流れる。
思わず鼻を覆う。
初めてだった。
ここまで怒りに恐怖したのは。
普段怒らない者が怒ると…ここまで恐ろしいのか…
隣を見ると伊之助が直立不動のまま固まっていた。
声も出ないらしく、その身体は小さく震えている。
「雷の呼吸…壱ノ型…霹靂一閃…六連」
バチバチと鳴り響く雷鳴…
辺りを照らす黄色い稲光…
その速さは正に閃光
鬼は何が起こったか分からない様子だった。
瞬く間に身体は細切れにされ、グシャリと地に横たわっているのだから思考が追いついていない。
「一愛は何処に居る」
「ヒッ…こんな…ありえない…!
なんでお前は平気なんだ!?
なんで俺が倒れている!?何をしたんだお前!!」
グサリと、鬼の身体に黄色い日輪刀が突き立てられた。
木霊する絶叫…
「もう一度聞く。一愛は何処に居る」
平然と…淡々と…善逸の口から同じ言葉が零れる。
思わずブルリ、と震えた。
我妻善逸と云う男は普段から相手が呆れるキレ方はするが相手が恐れる怒り方は決してしたことが無い。
この鬼は彼の奥底にある…誰も触れたことがない逆鱗に、触れてしまったのだ
「お、奥の…扉を出て…真っ直ぐに進んだ、へ、部屋に…」
その言葉を聞くと同時に、善逸は撫でるように鬼の首に刀を這わせた。
キン!と刀を鞘にしまうと、善逸は扉に走った。
「炭治郎、伊之助…後は頼む」
その言葉を最後に彼の姿は消えた。
「「…………」」
未だに思考が追い付かず、固まる。
「…善逸は…しのぶと同じくらい…怒らせたらヤベー奴だな…。」
「あぁ…肝に銘じておこう…。」
鬼を見る。絶命していた。
だが、その頸からは血の一滴も零れてはいない。
本来ならば日輪刀で頸を切断したらすぐさま身体が崩れ始めるのだが、この鬼はまるで時間が停止したように止まっている。
2人して顔を見合わせ、近寄ると…まるでソコには初めから何も存在していなかったように瞬時に鬼の身体が消え去った。
ーーー…。
あったかい…誰かに抱えられている…
あぁ…誰か、なんて…考えるまでもなかった…
「一愛…!!」
「…ぜん、いつ…くん…」
「っ!…よ、よかったぁ…、もうこのまま…目が覚めないのかと…思っ…」
いつものギャン泣きと違い、ただ静かに涙を流す彼…
泣き方一つでこうも印象が違うのか…と思わず笑みが零れる。
「何、笑ってんの!し、心配…したんだからな!!
おまえ、任務から帰ってこないし…
丁度帰ってきた炭治郎と伊之助に協力してもらって探しに来たら、鬼に捕まってて、電流、流されてて…!
お、おまえの叫び声…聴いた瞬間…頭が真っ白にになって…
き、気付いたら…目の前に…張り付けにされてて…!
ぐったりしてて…、し…死んじゃったのかと…思ったんだぞ!!」
真剣な顔でホロホロと涙を流す善逸くん…
本気で…心の底から…心配してくれたんだ…。
不謹慎かもしれない…怒られてしまうかもしれない…けれど…
「嬉しい…善逸くんに、そこまで想って貰えて…探しに来てくれて…ありがとうね」
頭を撫でてあげたくても、身体が麻痺しているのか、動かそうにも動かせない。
私の音を読み取ったかのように、善逸くんが私の手を取って自身の頬に押し付けた。
「俺も、ごめん!お前は俺より強いから1人でも大丈夫なんだって思ってて…大丈夫なんてこと…無いのに!
お前が生きてて…よかった…!!」
肩口に顔を埋めてやっといつもみたいにひんひん泣き出した善逸くん。
その姿を見るとなぜだか安心する。
扉の方を見ると炭治郎くんと伊之助くんが歩いてくる。
皆で迎えに来てくれたんだ…。
ヘラりと笑いかけると2人とも安心したように駆け寄ってきてくれた。
(あ、ところで…鬼は?)
(え、そんなん炭治郎か伊之助が倒してくれたに決まってるだろ?)
((…………))
(あ、そうなの?お手数おかけしました)
(…いや…)
(…ふん!)
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