今までも、これからも
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鬼の爪が一愛の身体に突き刺さる瞬間
彼女の腕を引き、自身の腕の中に抱き込む。
あと少し遅れていたら完全に腹を貫かれていただろう。
俺はほぼ無意識に鞘から刀を抜き、鬼の頸をはねた。
「っは、はぁっ…」
カシャン…と刀を手から取り落として、彼女をキツく抱きしめる。
体が震える
心臓の音がうるさい
呼吸も乱れて、涙が止まらない
だって、もしかしたら…さっきの攻撃で彼女を失っていたかも…と思うと…怖くて、たまらないんだ…
「っ一愛…!」
「ぜ、善逸…く…ごめんなさいっ…私っ…善逸くんが死んじゃうと思って…夢中で…!」
後ろから抱きつき、肩口に顔を埋めている俺の頭を…一愛は優しく撫でる。
その手も、その声も震えていた。
分かるよ。怖かったんだよな。
「うん…大丈夫…俺も、お前も…生きてる。…生きてる、よっ…!」
「っ善逸くんが死んじゃうなんて、いや…嫌なのっ!…怖いよ…!お願い…側にいて…離れないで!じゃないと…私…っ」
うん。側に居るよ。離れないよ。
俺も、もう無理だ。
お前の傍を一時でも離れたら…きっと…気が狂れてしまう
分かってる。
こんなの、きっと周りに迷惑ばかりかけるんだろうな…。
でも、無理なんだ…ダメなんだ。
お互いの体温を感じられなくなったら、側を離れたら、姿が見えなくなったら、声が聞こえなくなったら、…そう考えると…恐ろしくてたまらない。
どれくらいお互いに抱きしめ合っていたのか分からない。
炭治郎と伊之助が来てくれたけど、俺達はいつまで経っても震えが止まらなくて…
2人は何も言わずに蝶屋敷に行こう。と促してくれた。
ーーーーーー……
「…炭治郎くん、伊之助くん…今大丈夫ですか?」
「あ、しのぶさん…はい。2人とも、ようやく眠った所です。」
「…コイツら、おかしいぞ。前はこんなんじゃなかったのに。
ここに来る間もベタベタ引っ付いたままで…
でも、離れろなんて、言えなかった。…そう言ったら…コイツら2人とも、死んじまいそうな気がしてよ…。」
「伊之助…
俺も、そう思いました。軽率に2人を引き離したら…いけない気がして…善逸と一愛からはとても強い恐怖の匂いがしたんです。」
「…これは、親方様にも報告しなければいけない程の事態です。
産屋敷に行きましょう。」
ーーーーーー…
産屋敷家屋内のとある一室…
その場には柱も集まり、張り詰めた空気だけが漂う。
そんな中最初に言葉を発したのは当主である産屋敷耀哉だった。
「しのぶ。詳しい話を聞かせてくれるかい?」
「はい。あの二人は幼い頃から共に育ち、同じ雷の呼吸を習い離れることはほぼ無い状態だった様です。
鬼殺隊に入るまでは。
その時はまだそれぞれ別の任務についたり、他の隊員と組んだりして側を離れることは可能だったようですが…
先日、善逸くんと一愛さんは2人で任務に着き、お互いの死を意識して…其れが極限状態になってしまったのだと思います。」
「其れ、とはなんだい?」
お館様の疑問にしのぶは一度目を伏せた。
「…あの子達は幼い頃から無意識に依存し合っていた…。
其れがお互いの死の恐怖で…間違ったものに凝り固まってしまったんです。
共依存と云う形で。」
「…共依存…相互依存みたいなものですか?」
炭治郎が問う
「いいえ。言葉は似ていますが、全くの別物です。
「相互依存」は、お互いの異なる部分や、好きな部分以外のところも許容し合って、認め合っている状態を指します。
「共依存」の場合は…お互いが依存し合っている状態で、所謂…盲目状態に陥っているんです。
自分と相手の区別がなくなり、心理的に重なってしまっているため、相手のことや…自分自身のことも上手く見えなくなってしまっている…
ですが、無理に引き離そうとは絶対にしないで下さい。
お互いの存在が感じられなくなったら…きっとあの子達は壊れてしまう…。
ですので、お館様…これは私からの提案です。
あの二人は必ず同じ任務に着かせてあげてください。
それが無理ならば、鬼殺隊を辞めさせるべきです。」
しのぶのその言葉に皆息を飲んだ。
巫山戯るなと言いたげな者も居るが、その言葉は喉に張り付いて出てこない様だ。
皆お館様の言葉を静かに待った。
「…分かったよ。しのぶ。これから2人は同じ任務に着けるように配慮しよう。
…皆も軽く考えずに、気を付けてあげてね?」
「「「「御意」」」」
話はまとまった。
けれど、快く思わない隊員が数名外で聞き耳を立てていたことに…話を真剣に聞いていたもの達は気づかなかった。
ふざけるな
隊員の中には親友同士や恋人同士の者も居て、それでも一緒の任務なんて稀なのに…
寄りによって自分達より階級の低い後輩が特別扱い?
ふざけるな!!
柱達が屋敷に集まり、胡蝶しのぶもこの場にいる今蝶屋敷には数名しか居ないはず。
隊員達は目配せしながら頷き合う。
四六時中共にいる事など不可能なのだと思い知らせてやる
柱達の後ろ盾が有るからと甘えきったその根性を叩き直してやる
そんな軽い気持ちだった。
任務なのだからと理由をつけて引き剥がしてしまえれば、その内どうにでも成るだろうと
其れが後にあんな悲劇を生むなんて…彼等は思ってもみなかったのだ。
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