約束はまもるために
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あの後宿に一泊して善逸くんの今までの話を聞いた。
そして今はこれからの事を話しつつ、桑島さんのお家に向かっている。
もう頭はパンク寸前だ。
情報処理が追いつかない…。
えと、つまり…
「…じゃあ善逸くんは鬼滅の刃の単行本とかアニメを見てた…って事?」
「うん。ずっとお前の傍に居た訳だし…必然的に見ちゃうでしょ。
いやぁ〜…アレは衝撃だったな…。」
「…………」
善逸くんのその言葉に私は何も言えなくなる。
え、軽くない?
善逸くんにとったら自分の人生を他人に…しかも大多数にマルっと見られてるんだよ?
それに、
「ん?どした?そんな変な音させて」
「…善逸くんは…怒らないの?
自分の事や大切な人達の事がこんな風に知られてて…それに…物語の中のキャラクターだって言われて…腹が立たないの?」
私だったら嫌だ
八つ当たりになってしまうかもしれないけれど、其れを言って聞かせた目の前の人物に疑問とか色々吐き出してしまうと思う。
「あー…最初は確かに混乱したよ。
自分の行動してきた事が紙や映像で語られてるんだもん。
でも…俺は知れて良かったと思ってるよ。
炭治郎の事…他の人達の事…。
だって知っていれば、これから変えられるかもしれないじゃん」
「え…」
彼のその言葉に俯いていた顔を勢いよく上げる。
変えられる…死んでしまった人達を…救える…?
そんな…そんな事、考えもしなかった。
「俺はな、好機だと思うよ。
お前と出会えたことも、‘鬼滅の刃’を見聞きしてた事も
きっと神様がやり直してごらんって俺と名前を送り込んでくれたんだよ」
「………」
…なんて前向きな…
神様は、きっとそんなに優しくなんかないよ。
だって、一人の願い事を叶えていたら、世界中の人の願いも叶えないといけなくなっちゃうじゃない。
…でも、だったら…この現象をどう説明すればいいのだろう。
…善逸くんみたいに前向きに考える事なんて私には出来ない。
神様を信じる事も出来ない
でも、善逸くんの事は…信じられる。
どんな無茶ぶりでも彼の言う事は無条件で受け入れられる…。
それはきっと…両親以外で私を見守ってくれていた人だから、だろう。
こんな私の性癖にも引かずに…呆れずに…
ずっと、隣にいてくれた人
これからも…ずっと一緒に居てくれるような気がする。
「…私は神様は信じない
でも善逸くんは信じるよ」
私達2人にどれだけの事が出来るかは分からない…。
でも救える人は、救いたい。
今はまだ子供だけど、強くなって見せる。
そのために今から桑島さんの所に行くのだから。
「あ、そういえば…善逸くんは桑島さんに弟子入りしてるの?」
「いや、まだだよ。少し前までお寺でお世話になってたから。」
「善逸くん…獪岳が居たお寺って…まさか悲鳴嶼さんの…」
「そうそう。俺は獪岳みたいに盗みをして寺を追い出されるような事はしてないけど…やっぱり鬼はやってきたんだ。
藤の花の香は風だか動物だかで倒れて消えちゃっててさ…
鬼が屋敷に入ってくる前に俺に意識を向けさせて、日輪刀なんて持ってないから朝日が登るまで一晩中鬼ごっこだよ…。
流石に疲れたよねぇ…。」
善逸くんは身振り手振りでこれまであったことを語ってくれた。
「凄いね…善逸くんは脚早いもんね…
それで、悲鳴嶼さんやお寺の子達にお別れしてきたの?」
「あ〜…」
善逸くんはあからさまに目をそらした。
え、まさか…
「色々説明するのとかお別れ言うのとかアレだし…そのまま街まで降りてきちゃった。
お金も稼がなきゃだったし…街を転々としながら働かせて貰って…牛込まで来たってわけ。」
「それ、悲鳴嶼さんめちゃくちゃ心配してるんじゃ…
それに鬼殺隊に入ったら顔合わせるかもしれないんだよ?気まずくない?」
「…それは考えてなかったわ…え、どうしよう…俺、怒られる!?」
あの人の場合、泣かれる方が確率高そうだけど…。
「お説教は覚悟しといた方がいいかもねぇ…」
え、嘘ヤダ…俺鬼殺隊入るのやめようかな…
そんな事をブツブツ言ってる善逸くんを見ながらふと思う。
「…あのさ、善逸くん…私…名前…どうすればいいの?」
「…は?」
「だって、この身体は善逸くんのものだけど…私には自分の意識があるし…
あと、善逸くんの事もなんて呼べばいい?
善逸くんも外見は獪岳だし…
桑島さんにも、どうやって名乗ろう…。」
我妻善逸って名乗ればいいんだろうけど…
外見は獪岳でも私にとっての善逸くんは横を歩いてる彼なわけで…。
「…単純に考えればいいんじゃないの?
自分の名前名乗ればいいんだよ。
俺だって見た目は獪岳だけど中身は我妻善逸だもの。
下手に慣れてもいない名前名乗っても呼ばれた時反応できなかったら怪しまれるかもでしょ?
確かにお前は一度死んじゃってるけどさ…俺にとってお前はずっと名前なんだよ」
…やっぱり善逸くんは凄い…
その言葉がストン、と私の中にハマって色々悩んでるのがおかしな事に思えた。
そっか…私は私でいいんだ…。
「…ふふ…善逸くんは凄い…私の事…私より分かっててくれる…
二人目のお父さんみたい」
「待って!?せめてお兄さんにしよう!!?なんで父親!!?
俺まだそんな歳じゃ…アッ…精神年齢はそんな歳だった…
でも!俺にこんなデカい娘は居ないから!結婚すらしたことないのに!!
てか見た目的に2歳くらいしか違いないでしょーよ!」
…そんなに怒らなくても…
「…じゃあ、善にぃって呼んでもいい?」
「んぐっ…ま、まぁ…兄なら…うん…いいよ。」
善にぃ…兄…かぁ…うぃひひ
なんて言いながら嬉しそうに笑う善逸くん
…獪岳の顔でその笑い方はイメージが崩壊するな…
私も一人っ子だったからお兄ちゃんとか嬉しいなぁ…。
「よっし!元気出た!頑張ろうね!善にぃ!!」
「…お前も大概、単純だよな…。」
後ろで善にぃが頭を抱えながらため息をついているとは知らずに、私はちょっとだけ先の出来事にワクワクしていた。
…ところで…桑島さんの家って…何処??
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