約束はまもるために
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「あー…やっぱり覚えてないかぁ…
でもさ、自分の死因なんて覚えてない方がいいと思うんだ!
俺だったら覚えてたくなんて無いし!」
ポカン…と固まる私に善逸くんは一生懸命励まそうとしてくれる。
「私、善逸くんに成ったんですか?!
そんなぁ…私は善逸くんになりたかったんじゃなくて、善逸くんと兄妹になったり、あわよくば同期になって一緒に任務したかったのにいぃぃ〜!!!」
「え、そっち!?いや、…なんか…ごめんね?
…って、そうじゃなくて!!
自分が死んだ原因がなんで電車とか、現実世界での未練とか、そういうのは!?」
「え?うーん…未練かぁ…しいて言えば鬼滅の刃の続きを最後まで読めなかった事ですかね…?
もう死んじゃってるなら原因とか聞いても仕方なくないです?
なんにせよ、私が何故亡くなったかはどうでもいいですね。」
私が首をかしげながらそう云うと善逸くんはなんとも言えない表情で小さくため息をついた。
「…君、俺の事以外には無関心すぎじゃない?
見てて思ったけど淡白過ぎだと思うんだよね俺は。
もう少し周りに関心を持ちなさいよ…。」
…彼は、さっきからなんだか引っかかる物言いをする。
「…そう言えば、善逸くん…私の事知ってる風でしたけど…」
まるで善逸くんが私が生きていた時代に存在していて、私の傍で全部丸っと見聞きしてたみたいな…
…………ま、まさかね!そんな事ある訳…
「あー…うん…。その…申し訳ないんだけどね…君が産まれてから死ぬまで全部傍で見てました。ごめんなさい。」
……………な、そっ…え、………え!!?
「なんでそうなったかと云うと…
俺は死んでからずっとふわふわした感じで漂っていたんだよ…。
まぁ詰まるところ、幽霊みたいなもんだね。
で、年号も昭和、平成って変わっていったみたいだけど…その辺はぼんやりとしか覚えてないんだ。
でね、平成になってから君が産まれた。
この辺りからまるで目が覚めたみたいに鮮明になってさ…ず〜っと君の成長を見届けてきたから感覚的には兄のような気持ちだよねぇ〜…」
腕を組みながらうんうん頷いている善逸くんを見ながら自分の記憶を掘り返してみる。
「…待って。ちょっと待ってください。
…じ、じゃあ善逸くんは私が鬼滅の刃にドハマリして色々やらかしてる黒歴史も知ってる…ですか??」
お願い。知らないと言って。
嘘でもいいから。
嘘でもいいからぁ!!
でも私の願いは虚しく、善逸くんはそっと目線を逸らした。
「…うん…まぁ…。」
…いっそ殺せええぇぇぇぇー!!!!
「鬼滅の刃のアニメ雑誌の切り抜きをファイリングしたり、動画サイトで俺に合いそうなイメージソング探したり、缶バッジとかカードとかガチャとか俺が出るまでやったり、鬼滅グッズのUFOキャッチャーで散財したり、原作本全巻二冊づつ買って読む用と保存用に分けてたり、アニメも録画予約して暇さえあれば見てたり、Blu-rayも観賞用と保存用と買ってたり…。
あ、でもアニメショップに飾られてる俺の等身大のパネルを売ってくださいって店員さんに迫って困らせたのはどうかと思うよ?」
いやあああぁぁぁーーー!!!!
すみませんごめんなさいあやまるからもうかんにんしてくださいおねがいしますしんでしまいますうぅぅぅ!!!!!
「…しにたい…いっそ人生一からやり直したい…」
ふふふ…もう私のライフはマイナスよ…
なんでこの世には羞恥死とか無いんだろう…今なら間違いなく死ねる。
あ、私もう死んでたや。ははは…。
「あ、あの…ごめんね?君を追い詰めるつもりで言ったんじゃないんだ!
君からしたら恥ずかしい事なのかもしれないけど、俺は嬉しかったんだよ?
だって、こんなに真っ直ぐに…一途に好いて貰った事なんて無かったから。」
彼のその言葉を聞いて私の今までの羞恥心は吹っ飛んだ。
「なにいってるの!貴方は沢山の人に好かれてる!愛されてる!
善逸くんを好きなのは私だけじゃないんですよ!?
私の傍に居たなら自分がどれだけ多くの人から好かれてるか分かるはずです!!」
確かに、善逸くんの産まれも育ちも恵まれなかったんだと思う。
でも我妻善逸を愛して止まないのは私だけじゃない!
全国に一体何人我妻善逸ファンが居ると思ってるの!!
もっと!自覚を持って!!人気投票2位!!!
「ふふ、…うん。そうだね。知ってるよ。
でも、沢山の誰かよりも…君が…
今まで俺が見守ってきた君が俺を好いてくれた事が何よりも嬉しかったんだ。」
…、…これ、あの…こんな事言われて、私善逸くん推しに刺されない?呪われない??
彼の何気ない一言にgkbrしてる間に善逸くんは周りを見ながら呟く。
「あ、もう目が覚める時間だね…。
君は俺に成ってるけど、心は君のままだから安心してね。」
善逸くんの言葉に辺りを見回すと一面茜色に染まっていた。
あぁ…もう善逸くんとお別れなんだ…。
私が彼に成り代わったって事は今此処に居る我妻善逸という人物は何処に行ってしまうんだろう…。
「そんな悲しそうな顔しないで?
大丈夫だよ。直ぐに会いに行くから。」
えっ…会いに?ってどういうことです?
「俺もね…ある人物に成ってるんだ。」
彼は最後に爆弾を投下した
…とんでもねぇ善逸くんだ!!
そうですかまた会えるんですかやったー!!
私のしょんぼりを返せ!!
真っ暗になった空の下…蒲公英は全て綿毛になっていて、私と善逸くんが消える瞬間一斉に空に舞い上がったのが何とも幻想的で美しかった。
蒲公英の綿毛にも花言葉があったような…
なんだっけ…。
「少しの間だけど…お別れだね。さよなら。」
「うん。さよなら。善逸くん。」
その言葉と共に私の意識はブラックアウトした。