流転する願い
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3人の背中を見送りながら、私はこの後の事を考えていた。
この後の任務がどれ程壮絶なものなのか…
それを知っている私は本当は止めてしまいたかった。
でも…そんな事をすれば、この後のストーリーにどんな影響があるかも分からない…。
それにきっと、止められない。
だって彼等は鬼殺隊なのだから。
だからこそ、私は見送るしか出来なかった。
決して簡単な任務ではない…
彼等も無事では済まない。
死なないと分かっていても、とても平常心ではいられない。
もしかしたら、何かの影響で彼等が亡くなるような事があったら…?
不安でたまらない…良くない想像が頭を過ってしまう…。
その後…何とかお仕事をこなしていくけれど…
やはり、ひささんには分かってしまうのか、早めにお休みをもらってしまった。
部屋に居ても何もすることが無いので、縁側に出て月を眺める。
この月の下、きっと沢山の命が虹の橋の向こうへ渡っているはず…。
私にどうにかする力がないのは分かっている…
だから…せめて祈ろう。
「どうか」
神様どうか、彼等を守ってください。
今の私には祈ることしかできないけれど。
その日は全く眠ることが出来ず、ただただ私は月を眺めていた。
陽が昇った時、私は一つの覚悟をする。
彼等を守る力がないのなら…せめて役に立つことをしよう、と。
今の私に出来る事…
この短い期間に出来るようになった事…
夜が明けた後に起こることに備えて。
ーーーー……
その連絡があったのは、お昼を過ぎてからだった。
しのぶさんの鎹鴉が目の前の地面に降り立つ。
その足に結ばれた文を見て、息を飲んだ。
震える手で手紙を広げ、内容を確認する。
『至急、応援求む』
私は文を握り慌てて、ひささんの元へ走った。
昨晩殆ど眠れていない事なんて、全く苦にならなくて…。
それよりも、そんなことよりも。
今はただ、あの人たちの傍に…あの人の傍に。
「ひささん!」
走って駆け付けた私を見て、ひささんは少し驚いたけれど、手に持っていた文を見せると急いで支度を手伝ってくれた。
背中に荷物を背負って、私は昨晩3人を見送った門を出る。
向かうは蝶屋敷。彼等の療養先。
昨晩の任務で彼等は、藤の花の家紋の家にやってきた時よりも重症だとの事。
決して短い時間ではなかったけれど、何とか急ぎ蝶屋敷へ到着した。
私が玄関の戸を叩くと、すぐに奥からアオイさんたちが出迎えてくれた。
「あの…!しのぶさんの烏の手紙を読んで此方にきました…!」
中へ案内を受けながら、簡単に説明してくれたアオイさん。
忙しそうなその背中を見て、何とも言えない緊張感がはしる。
案内された部屋は、沢山のベッドが並んでいて…
「来たばかりで申し訳ありませんが」
アオイさんが後ろ手に扉を閉める。
手前に並んだ3つのベッド。
白い布団の中にいる人達を見て、思わず涙が滲んだ。
ひどい怪我で、全身包帯だらけ。
それでも…
どれだけ酷い怪我をしていても…。
「…皆生きてる…!」
よかった…本当にっ…!
一頻り泣いたあと、私は涙を拭いアオイさんに指示された仕事をこなす為に足を動かした。
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