Prolog
夢主の名前
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最後に聞こえたのは…
誰かの声だった…気がする…
―…手を、のばして…!!―
その声に応えようと、精一杯腕を伸ばすけれど…
その人に届くことは無くて…
その後はプッツリと意識が途絶えて…
気付いたら、町の広場のような所に佇んでいた。
キョロキョロと回りを見回してみても知ってる人なんて誰も居なくて…
当たり前の事だけれど、行き交う人たちは私に目もくれずに通りすぎていく。
まるで私がこの場所には存在していないかのように。
私の居場所は此処には無いと云われているようで…
ココが何処なのかも、なぜココに居るのかも…
自分が誰なのか…ソレすらも今の私には分からなくて…
私は怖くて立っていることさえ出来なくて、ペタリとその場に座り込んだ。
考えを巡らせようとしても、頭の中には何も浮かばない…
まるで真っ暗な闇に塗りつぶされているかのようで…
いつの間にか、恐怖で震える自分の身体を抱きしめて俯いていた
…っお願い…誰か…
たすけて
「大丈夫?」
そんな私の想いに応えてくれるように、ポツリと呟かれた声と…
差し出された掌。
パッと反射的に顔を上げると、心配げに私を見つめる一人の男性が居た。
「っ…ぁ…」
そっと、その手に触れる
ジンワリと伝わる人の体温…
その温もりが何故か嬉しくて…
ポロポロと涙が零れた。
「うぇ!?ι
えっと君、どこか痛いの?
どどど、どうしようっ…!
薬?いや、お医者さんに見せた方がっ!」
その人は驚いてアワアワと狼狽え、差し出した手を離そうとして…
それだけの事なのに、私は思わず両手でその人の手をぎゅっと握りしめていた。
「あっ…平気、です…身体はどこも痛く、ありません。
だから…」
もう少しだけ、このまま…
手を握っていてほしい…
「えっ…そ、そう?
えと、じゃあ…立てるかい?
いつまでも地面に座り込んでいたら汚れちゃうから…
そこのベンチに座って。」
そう言いながら、その人は腕に力を込めて私を立たせてくれて、後ろのベンチに座らせてくれた。
「これ、よかったら使って?」
スッと差し出されたのは真っ白なハンカチ。
隅の方に小さく‘A’と刺繍がされていた。
「ちょっとだけそこで待ってて!」
「…あ…」
その人はそう言い残すとパタパタと走っていってしまった。
離れていった手が少しだけ名残惜しい。
けれど、先程のような恐怖は消えていて…
身体の震えもいつの間にか治まっていた。
「・・・・・・」
なにげなしに広げてみたハンカチからは、ふわりと石鹸のいい匂いがした。
たすけてって想ったら、あのひとが来てくれた…
声をかけてくれた…
暖かい手を差し伸べてくれた…
「…うれしかった…」
そっと頬にあてたハンカチ…
ふわふわと柔らかいそれは、流れる涙をやさしく受け止めてくれた。
「おまたせ。
これ、よかったら…どうぞ。」
歩いて戻ってきたさっきの男の人。
両手に持っていた片方を、はい。と差し出されて思わず受け取ってしまった。
「これは…」
「アイスなんだけど…
その、冷たいもの食べたら落ち着くかなって…。」
容器に入った丸い形のアイス。
一緒に渡されたスプーンで少し掬って口にいれた。
「おいしい…」
私がそう言うと、よかった…という声とホッとしたような笑顔。
私も、それにつられて笑っていた。
「ふふ…あの、ありがとうございました。
さっき声をかけていただいて、とても嬉しかったです。
それにアイスまで…」
「そんな…気にしないで!
困っている人を助けるのは当然の事だよっ!」
「…きっと、貴方に助けられて嬉しい思いをした人は沢山居るんでしょうね…私のように…。」
大袈裟だなぁ~と笑う貴方。
さっきまでの私は…
真っ暗な闇の中にいたも同然だった。
そんな闇の中から…貴方は私を救ってくれた…。
それこそ、大袈裟に聞こえるかもしれないけれど…
私にとって貴方は…
光そのものだったのです。
「…何度お礼をいってもいい足りません…
本当にありがとうございました。
…えっと…」
そこでフと気付く。
私はまだこの人の名前を知らないのだ。
「あ…まだ自己紹介をしていなかったね…
僕はアシュトン。
アシュトン・アンカースだよ。」
これが彼と…
アシュトンと私との出会い。
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