「隼(はやて)、一緒に帰ろう。」
「あ、彰助。いいよ」

私は高２になっていた。
幼馴染の久原 彰助(ひさばら しょうすけ)が私を誘ってくれたので、今日は彰助と帰ることにする。

他愛もない話をしながら、歩いていたら。

「あ！！」
「ん？どうした、隼」
「あ...あれ.....」

私は震える指を抑えつつ、前方の二人組を指さす。

「ん？高３の、皇ノ世 聡(かみのせ そう)先輩と風魔 深嶺(ふうま しんりょう)先輩だな」
「ふうま、しんりょう......」

初めて知った。彼女の名前。

「どうしたんだ？なんか思い入れでもあるのか？」
「いや、大したことじゃないの。でも....あまりに...美しくて...」
「そうだよなぁ、風魔先輩はお綺麗だし、皇ノ世先輩もクールだし、お似合いの美男美女高嶺カップルだよな」
「え！？」
「え？」

カップル、という言葉を聞き、何故か私は...ガッカリしていた。
もしかして私、皇ノ世先輩の事が...いや、無い。
何故？何故ガッカリした？
そんなことを考えていたら、

「皇ノ世せんぱーい！」
「え！？ちょ、ちょっと彰助！？」

久原彰助め....こいつ...。

「ああ、久原じゃないか。どうしたんだ？」
「いや、隼が話したいみたいなんです....風魔先輩と」
「ちょ、ちょっと、ほんとに待ってよ彰助！！」

私は焦りながら、彰助を必死に高嶺カップルから離そうとする。
まぁ私の腕力ではとても無理なのだが。
「深嶺と？.........なぁ、深嶺。深嶺と話したいそうだ」
「え？私と？」
「ヒィッ....！？」
「い、嫌がってそうなんだが...聡...」

少し焦りながら皇ノ世先輩に助けを求める風魔先輩。

「あ、待って、違うんです！！嫌とかじゃなくて...あの....」
「？......あ！」
「え？」
「いや、話を遮る様で申し訳ないんだが、君、風船をの子か！」
「えっ」

まさか、覚えてくださっていたなんて...。
もう、何年も前の話なのに...。

「覚えていてくださっていたんですね」
「ああ、凄く綺麗な髪色をしていたからな」
「綺麗....？」

今まで私は、この髪色のせいでいじめられていた。
なのに、それなのに、綺麗....だなんて....。
私は、嬉しい様な、不思議な様な、何とも言えない気持ちになった。
何にしろ、髪色を褒められたのは初めてだっった。

「ああ、瞳の色と相まって、とても綺麗だよ。君、名前は？」
「ありがとうございます...黒川崎 隼(くろかわざき はやて)です！」
「隼か、いい名前だな」
「もしよろしければ、イカ子と呼んでください！」
「え？ハハハ、どういう経緯でイカ子なんてアダ名になったんだ？」
「適当です！」
「適当、か！ハハハハ！」

風魔先輩は、何故かツボに入った様でずっと笑っていた。
普段はどこか冷たげで大人っぽい出で立ちなのに、笑うとどこか子供っぽくて...私はその飴玉を転がすような笑顔にとても惹かれていた。

「あー、イカ子。私と話したいんだな？」
「はい！」
「今から暇か？」

えっこれは...もしかして....お誘いがくる！？！？
しかも私はこの後暇！！
ああ、なんということ！

「暇です！！」
「そうか、聡、悪いけど今日はこの子と帰ることにするよ」
「ああ、分かった。じゃあまたな」
「ああ。久原も悪いな、取ったようになってしまった」
「いえ！全然、お気になさらないで下さい」
「じゃあ行こうか、イカ子」
「はい！先輩！」

ああ、神様！
ありがとうございます！！