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私は、特異者だ。
具体的には、緑の髪。緑の瞳。
そして、前世の記憶をもっている事。
前世の記憶については隠せるのだから、いいのである。
だが、容姿については...もはやどうしようもない。
小学生というまだ未熟な時期は自分とこ違いを受け入れられないのである。
それ故、私は、まぁ...いじめにあっていた。

「あ...」

授業の一環で作った、風船。
出来がよく作れたので、私は気に入っていた。
風船なんて、割れたら終わり。
色んな人が、私の風船を割ろうとしてきた。
だけど私は、これだけはと死守してきた。
なのに...ふと風船は手から離れ、木に絡まってしまった。
ああ、何故私ってこうなんだろう。
つくづく、だ。
だが...。

「引っかかっちゃったのか?」
「え...」

小豆色の艶やかな髪。
深紅に染められた挑発的な瞳。
薄桃色の瑞々しい唇から発せられる、麗しい声。
私の心臓が、とくんと飛び跳ねた。

「ちょっと待っててな」
「も、もしかして取ろうとしてるんですか?む、無理です、よ!」

中等部の制服を纏った彼女に、私は言う。
すると彼女はにっこりと微笑んだ。

「無理じゃないさ。見てな」
「あ、!」

彼女はピョンっと飛び跳ね、数十メートルも上にある風船を片手で取り、地表に帰ってきた。

「はい、どうぞ」
「あ...ありがとうございます...」
「礼には及ばないさ。それ、君が作ったのか?すごくいい出来だ、到底私には出来ないなぁ」

彼女は笑うと、じゃあ、と言って去っていった。
とても、とても、憧れた。
こんな人になりたい、と心の底から思った。
ああ、名前を聞けば良かった。
あんなに素晴らしい人なのだから、私なんかが話しかけてはいけないのだと理解はしていた。
でも、次にあったとき、名前を聞こうと、話しかけようと思ってしまった。

それから、私は中等部に進級したが、彼女を見かけることは一度としてなかった。
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