1
「あなたの事が好きです」
え.......っと....ちょ、ちょっと待って?
この人はお店の常連さんで。
いつもオレンジジュース飲みながら勉強してて。
私は告白なんてされたのはじめてで。
今はただお会計してただけで。
「お、お客様...?あ!ひょっとして人間違いでしょうか...?他に可愛い店員いっぱいいますし...」
「いや、あなたの事が....好きなんです」
ま、まいったな....。
でも、こんなに真っ直ぐな瞳で見てくる彼を、無下に扱うことは私にはできなかった。
「お客様...もしお話がしたいのなら、とりあえず、バイトが終わるまで待っていただけないでしょうか....」
「勿論です!」
「あの...22:00なんですけどぉ.....」
お客様の顔つきが、カッと変わった。
ああ、流石にそんな遅い時間まで待てないかな、と思っていると。
ものすごい手の動きをしながら熱弁しはじめた。
「22:00!?女子がそんな夜道を帰るなんていけません!!!」
「え、えっ」
「店長に直談判しなければ!!」
「ちょ、それは...!」
私は彼をなんとか説得して、待っていてもらうことになった。
そしてバイトが終わり、制服を脱ぎ私服に着替えた私は、窓側端っこの席に座る彼を迎えに行った。
彼が正面に座るよう言ってくれたので、席につく。
「お待たせしました...すみません、こんな遅い時間まで待たせてしまって」
「こちらこそ、話に付き合わせてしまうようで申し訳ない」
「いえ.....あの、おいくつでしょうか?」
見たところは同い年くらいに見える。
もし同い年や年上だとしたら、敬語を使わせるのは悪いので、私は一応質問をした。
「15歳、雄英高校一年生です」
「ゆ、雄英...!?すごい、エリートじゃないですか!それに私と同い年だし、敬語じゃなくてもいいですよ。あの、お名前は?」
「じゃあお言葉に甘えさせていただこう、飯田天哉だ」
「いいだ、てんや....さん」
名前をなんとなく反復してしまう。
すると飯田さんはなんだか嬉しそうな表情になった。
「....どうしました?」
「いや、その....名前を呼ばれたのが嬉しくて」
ぴゅ、ぴゅあ〜〜〜だ〜〜〜!?!?
名前呼んだだけで喜んでくれる男子がこのご時世にいる!?
しかも呼んだわけじゃないし!
「あ....あの....えっと...」
「....今日は急にすまなかった」
「! い、いえ」
「でも....好きなんだ」
飯田さんは、悔しそうな、苦しそうな表情を浮かべて、胸あたりで拳をぎゅっと握った。
「あの....ごめんなさい、私、男性が苦手で...」
「なっ!本当か!」
「はい....」
想いに応えられたらとどんなに思ったことか。
こんなに真面目に私に好意を抱いてくれている人がいるなんて。
でもだめ、実際話すと上手く言葉が出てこないし、それに、
「もし付き合うってなったら....そういうことも、しなくちゃですよね」
「そういうこと....?とはなんだ!」
「えっ」
ぴゅ、ぴゅあだ....本当に。
そういうことはそういうことじゃん!!!とも思ったけれど、私はなんとか恥ずかしい気持ちを抑えつつ説明しようとする。
「その....え、えろい.....こと....」
「なっ....!?そんな言葉女子の口から言うものではない!!それに、俺はそんなことしなくたっていい。....君といられるだけでいい」
「な.....」
なんというか、飯田さんのいい人感がひしひしと伝わってくる。
そんな....私なんかと一緒にいられるだけでいいって、謙虚すぎませんか!?
そもそもなんで私に好意を抱いてくれているんだろう...。
「あの、なんで私なんかのことを...」
「それは....あの日、俺はいつも通りここで勉強していた。すると君が、オレンジジュースを持ってきてくれて...勉強お疲れ様です、いつも偉いですね。これは私のサービスです。店長には内緒にしててくださいね。...と言って笑った。俺は...いつになってもそれが忘れられなくて....」
「飯田さん.....」
そういえばそんなこともあったような気がする。
そんな些細なサービスをずっと覚えて、それで私に好意を抱いてくれていたなんて...。
「...でも、君は男性が苦手なんだろう?何故俺にあんなサービスを」
「え、それは....勉強を頑張って偉いのに性別は関係ありませんし、頑張ってる飯田さんはかっこよかったですし、純粋に私がサービスしたくなっちゃって....」
私は俯きながらポツポツと言葉を紡いでいく。
言い終わっても、飯田さんからの返事はなかなかなかった。
私は飯田さんの方をチラ見する。
すると、またそこには嬉しそうな顔の飯田さんが。
「あのぉ....」
「かっこいい.....」
「飯田さん....えっと....」
「はっ!!いかん!!!」
「あはは....」
かっこいい、って私が何の気なしに言っただけで、そんなに幸せそうにしてくれるなんて。
私の言葉に一喜一憂してくれる人がいることに驚いた。
「君、同い年なんだろう?俺だけ敬語を使わないのもおかしい、タメ口で構わない」
「あ....え、と、でも私口悪いんで....」
「そんなことないだろう」
「.....」
いや、ほんと話し方に女子力ないんだよな。
心の中で思ってる話し方はまだましなんだけど、口にした途端口が悪い...というか男勝り?というかで...。
「じゃあ、お言葉に甘える....ね?」
頑張って女子っぽい話し方を模索してみたけど、変じゃないだろうか!?!?
てゆーかこれからずっと話し方つくっていくのきついし最初から大っぴらにしたらよかったかな!?
「ああ。ところで、どうやったら....君に振り向いてもらえるだろうか」
「そう...だね...?」
「君、話し方つくっていないか!?いちいち疑問形で話すなんておかしいだろう」
「あ、バレた」
「そんな気にすることではないだろう、話し方なんて」
いや...確かにそうだな。
でも....多分私、飯田さんに嫌われたくないっておもっちゃってるんだ。
だから本当の自分を見せるのが怖いんだ。
...でも、こんなに真摯に向き会ってくれてるんだから、私だって、ちゃんと、素で向き合わなきゃ...!
「わかった。素で話すよ.........ほんっっとに口悪いから.....嫌いにならないで....な??」
「可愛らしい容姿と違って、落ち着いた話し方というか....少し男勝りなのだな」
「そ〜言われるのがやなんだよ〜!!」
「はっ!!すまない!!!」
ピシーーッと背筋を改めて謝る飯田さん。
私はどうやったら彼に振り向くんだろう、と考えた。
でも....思い浮かばなかった。
一緒に過ごして、この人のことをもっと知る以外は。
「あの、もっと、一緒に過ごして、....君のことを知りたいんだ。そしたら....振り向く、かも......」
「それだけでいいのか??俺も、もっと君と過ごしたいと思っていたから...嬉しい」
私なんかと一緒に過ごしたい、なんてなんか言われたことないし。
不思議な感じだ。
「あと、試すようで悪いんだけど....一時間くらい....私と同じベッドで寝てくれない?それで手を出されなかったら信用できるし....」
「なっ!?そんな!!!手を出すわけなかろう!?」
「いやでも、信用の問題で....」
自分でも何を言ってるのかあんまりわかんなくなってきたけど、信用を得るにはそれが一番なのではと思った。
でも今考えれば自分を危険に冒す行為なのでは...?
たまに私は突拍子もないこと言っちゃうからなぁ....。
....そして気が付いたら、私の部屋、私のベッドで私は寝ていた。
...というか私と飯田さん。
あれ!?!?
いつの間に折れられたっけ!?
飯田さん折れたっけ!?
多分私はあがりすぎて色々な記憶が飛んでしまったんだ...。
私は飯田さんに背を向けて寝ている状態だったので、そ〜っと飯田さんの方を振り向いた。
すると飯田さんは、鼻ちょうちんを膨らませながら寝ていた。
「マンガか!?!?マンガなのか!?!?てゆーかほんとに手出さないんかい!!!!!」
「はっ!!!」
思わず大声でつっこむと、飯田さんの鼻ちょうちんが割れ、飯田さんはシャキーンと目を覚ました。
いや、シャキーンていう擬音が正しいのかはわからんけど...。
「手を出さないのかって....出した方がよかったのか!?」
「いやそんなわけないけど!!なんか...飯田さんなら、据え膳食わぬは男の恥とか言うかと思って...」
「それは...君、自身が据え膳のつもりないだろう?」
「へ?」
「なら俺は抵抗力もない女子に手は出さない」
なんか....こういう考えの方が、よっぽどかっこいいし男らしいんじゃない?
私は飯田さんの言葉が胸にしみていくのを感じた。
「えと、今日はもう遅いから帰りなよ。...疑うようなことしてごめんね、また....お店じゃないとこで会ってみたい」
「本当か!?」
目を(メガネを?)キラキラ輝かせて嬉しそうに聞いてくる飯田さんは、.....少し、少しだけね、.....可愛かった。
でも本人は可愛いなんて言われても嬉しくないだろうし、その気持ちは胸にしまっておく。
「ほ、ほんと。飯田さん誠実そうだし....」
「じゃあまた日程を決めよう!また邪魔させてもらう!」
「う、うん」
飯田さんは門限が結構やばかったのか、走って帰っていった。
...また邪魔させてもらうって、店にだよね??
家に...じゃないよね???
え.......っと....ちょ、ちょっと待って?
この人はお店の常連さんで。
いつもオレンジジュース飲みながら勉強してて。
私は告白なんてされたのはじめてで。
今はただお会計してただけで。
「お、お客様...?あ!ひょっとして人間違いでしょうか...?他に可愛い店員いっぱいいますし...」
「いや、あなたの事が....好きなんです」
ま、まいったな....。
でも、こんなに真っ直ぐな瞳で見てくる彼を、無下に扱うことは私にはできなかった。
「お客様...もしお話がしたいのなら、とりあえず、バイトが終わるまで待っていただけないでしょうか....」
「勿論です!」
「あの...22:00なんですけどぉ.....」
お客様の顔つきが、カッと変わった。
ああ、流石にそんな遅い時間まで待てないかな、と思っていると。
ものすごい手の動きをしながら熱弁しはじめた。
「22:00!?女子がそんな夜道を帰るなんていけません!!!」
「え、えっ」
「店長に直談判しなければ!!」
「ちょ、それは...!」
私は彼をなんとか説得して、待っていてもらうことになった。
そしてバイトが終わり、制服を脱ぎ私服に着替えた私は、窓側端っこの席に座る彼を迎えに行った。
彼が正面に座るよう言ってくれたので、席につく。
「お待たせしました...すみません、こんな遅い時間まで待たせてしまって」
「こちらこそ、話に付き合わせてしまうようで申し訳ない」
「いえ.....あの、おいくつでしょうか?」
見たところは同い年くらいに見える。
もし同い年や年上だとしたら、敬語を使わせるのは悪いので、私は一応質問をした。
「15歳、雄英高校一年生です」
「ゆ、雄英...!?すごい、エリートじゃないですか!それに私と同い年だし、敬語じゃなくてもいいですよ。あの、お名前は?」
「じゃあお言葉に甘えさせていただこう、飯田天哉だ」
「いいだ、てんや....さん」
名前をなんとなく反復してしまう。
すると飯田さんはなんだか嬉しそうな表情になった。
「....どうしました?」
「いや、その....名前を呼ばれたのが嬉しくて」
ぴゅ、ぴゅあ〜〜〜だ〜〜〜!?!?
名前呼んだだけで喜んでくれる男子がこのご時世にいる!?
しかも呼んだわけじゃないし!
「あ....あの....えっと...」
「....今日は急にすまなかった」
「! い、いえ」
「でも....好きなんだ」
飯田さんは、悔しそうな、苦しそうな表情を浮かべて、胸あたりで拳をぎゅっと握った。
「あの....ごめんなさい、私、男性が苦手で...」
「なっ!本当か!」
「はい....」
想いに応えられたらとどんなに思ったことか。
こんなに真面目に私に好意を抱いてくれている人がいるなんて。
でもだめ、実際話すと上手く言葉が出てこないし、それに、
「もし付き合うってなったら....そういうことも、しなくちゃですよね」
「そういうこと....?とはなんだ!」
「えっ」
ぴゅ、ぴゅあだ....本当に。
そういうことはそういうことじゃん!!!とも思ったけれど、私はなんとか恥ずかしい気持ちを抑えつつ説明しようとする。
「その....え、えろい.....こと....」
「なっ....!?そんな言葉女子の口から言うものではない!!それに、俺はそんなことしなくたっていい。....君といられるだけでいい」
「な.....」
なんというか、飯田さんのいい人感がひしひしと伝わってくる。
そんな....私なんかと一緒にいられるだけでいいって、謙虚すぎませんか!?
そもそもなんで私に好意を抱いてくれているんだろう...。
「あの、なんで私なんかのことを...」
「それは....あの日、俺はいつも通りここで勉強していた。すると君が、オレンジジュースを持ってきてくれて...勉強お疲れ様です、いつも偉いですね。これは私のサービスです。店長には内緒にしててくださいね。...と言って笑った。俺は...いつになってもそれが忘れられなくて....」
「飯田さん.....」
そういえばそんなこともあったような気がする。
そんな些細なサービスをずっと覚えて、それで私に好意を抱いてくれていたなんて...。
「...でも、君は男性が苦手なんだろう?何故俺にあんなサービスを」
「え、それは....勉強を頑張って偉いのに性別は関係ありませんし、頑張ってる飯田さんはかっこよかったですし、純粋に私がサービスしたくなっちゃって....」
私は俯きながらポツポツと言葉を紡いでいく。
言い終わっても、飯田さんからの返事はなかなかなかった。
私は飯田さんの方をチラ見する。
すると、またそこには嬉しそうな顔の飯田さんが。
「あのぉ....」
「かっこいい.....」
「飯田さん....えっと....」
「はっ!!いかん!!!」
「あはは....」
かっこいい、って私が何の気なしに言っただけで、そんなに幸せそうにしてくれるなんて。
私の言葉に一喜一憂してくれる人がいることに驚いた。
「君、同い年なんだろう?俺だけ敬語を使わないのもおかしい、タメ口で構わない」
「あ....え、と、でも私口悪いんで....」
「そんなことないだろう」
「.....」
いや、ほんと話し方に女子力ないんだよな。
心の中で思ってる話し方はまだましなんだけど、口にした途端口が悪い...というか男勝り?というかで...。
「じゃあ、お言葉に甘える....ね?」
頑張って女子っぽい話し方を模索してみたけど、変じゃないだろうか!?!?
てゆーかこれからずっと話し方つくっていくのきついし最初から大っぴらにしたらよかったかな!?
「ああ。ところで、どうやったら....君に振り向いてもらえるだろうか」
「そう...だね...?」
「君、話し方つくっていないか!?いちいち疑問形で話すなんておかしいだろう」
「あ、バレた」
「そんな気にすることではないだろう、話し方なんて」
いや...確かにそうだな。
でも....多分私、飯田さんに嫌われたくないっておもっちゃってるんだ。
だから本当の自分を見せるのが怖いんだ。
...でも、こんなに真摯に向き会ってくれてるんだから、私だって、ちゃんと、素で向き合わなきゃ...!
「わかった。素で話すよ.........ほんっっとに口悪いから.....嫌いにならないで....な??」
「可愛らしい容姿と違って、落ち着いた話し方というか....少し男勝りなのだな」
「そ〜言われるのがやなんだよ〜!!」
「はっ!!すまない!!!」
ピシーーッと背筋を改めて謝る飯田さん。
私はどうやったら彼に振り向くんだろう、と考えた。
でも....思い浮かばなかった。
一緒に過ごして、この人のことをもっと知る以外は。
「あの、もっと、一緒に過ごして、....君のことを知りたいんだ。そしたら....振り向く、かも......」
「それだけでいいのか??俺も、もっと君と過ごしたいと思っていたから...嬉しい」
私なんかと一緒に過ごしたい、なんてなんか言われたことないし。
不思議な感じだ。
「あと、試すようで悪いんだけど....一時間くらい....私と同じベッドで寝てくれない?それで手を出されなかったら信用できるし....」
「なっ!?そんな!!!手を出すわけなかろう!?」
「いやでも、信用の問題で....」
自分でも何を言ってるのかあんまりわかんなくなってきたけど、信用を得るにはそれが一番なのではと思った。
でも今考えれば自分を危険に冒す行為なのでは...?
たまに私は突拍子もないこと言っちゃうからなぁ....。
....そして気が付いたら、私の部屋、私のベッドで私は寝ていた。
...というか私と飯田さん。
あれ!?!?
いつの間に折れられたっけ!?
飯田さん折れたっけ!?
多分私はあがりすぎて色々な記憶が飛んでしまったんだ...。
私は飯田さんに背を向けて寝ている状態だったので、そ〜っと飯田さんの方を振り向いた。
すると飯田さんは、鼻ちょうちんを膨らませながら寝ていた。
「マンガか!?!?マンガなのか!?!?てゆーかほんとに手出さないんかい!!!!!」
「はっ!!!」
思わず大声でつっこむと、飯田さんの鼻ちょうちんが割れ、飯田さんはシャキーンと目を覚ました。
いや、シャキーンていう擬音が正しいのかはわからんけど...。
「手を出さないのかって....出した方がよかったのか!?」
「いやそんなわけないけど!!なんか...飯田さんなら、据え膳食わぬは男の恥とか言うかと思って...」
「それは...君、自身が据え膳のつもりないだろう?」
「へ?」
「なら俺は抵抗力もない女子に手は出さない」
なんか....こういう考えの方が、よっぽどかっこいいし男らしいんじゃない?
私は飯田さんの言葉が胸にしみていくのを感じた。
「えと、今日はもう遅いから帰りなよ。...疑うようなことしてごめんね、また....お店じゃないとこで会ってみたい」
「本当か!?」
目を(メガネを?)キラキラ輝かせて嬉しそうに聞いてくる飯田さんは、.....少し、少しだけね、.....可愛かった。
でも本人は可愛いなんて言われても嬉しくないだろうし、その気持ちは胸にしまっておく。
「ほ、ほんと。飯田さん誠実そうだし....」
「じゃあまた日程を決めよう!また邪魔させてもらう!」
「う、うん」
飯田さんは門限が結構やばかったのか、走って帰っていった。
...また邪魔させてもらうって、店にだよね??
家に...じゃないよね???
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