【ベルトの首輪】
「ああんっ!あっ、ん!あん・・・っ!」
ほぐし方を知らなくて散々悟飯さんを傷つけてきたあの失敗を繰り返さないよう、中で二本の指をバラバラに動かし、時には指を開いてアナルを拡げる。
どうやらアナル拡げる瞬間が悟飯さんは感じるらしいのだが、悟飯さんを歓ばせるもっとイイトコロを俺は知っていた。
二本の指を折り曲げてそこを擦ると、悟飯さんの腰がビクリと揺れて、俺の指を咥え込んだアナルがヒクヒクと口をすぼめる。
「あああ!あっ!トラ・・・クスッ!・・・あっ!」
こうなると悟飯さんは抑えが利かない。
譫言みたいに繰り返し俺の名を呼び、その先の行為を急かしてくる。
「あ、ああ、んっ!とっ・・・とらぁ・・・っ!」
泣きそうな声を出されると、俺も弱い。
焦らすのはまた今度にして、俺は悟飯さんの唾液で濡れたモノを後ろから宛てがった。
最初はゆっくりと、その後はあまり時間をかけずに一気に貫いた方が悟飯さんに痛みを与える間隔が短く、悟飯さんの躯に負担をかけずに済むらしい。
「うっ、くっ!・・・あっ・・・!」
侵入を始めた時には痛みで顔をしかめていた悟飯さんも、俺が根元まですっぽり収まる頃には快感を感じて喘ぎ出す。
「ああっ、あっ!あっ、あっ・・・!」
わざとポイントを少しずらして突き上げるが、それでも悟飯さんは甘い声を上げて白い背中をのけ反らす。
ほどよく筋肉がついた、しなやかで綺麗な背中。
俺の、大好きな―
いつまでもポイントをずらし続ける俺に、不審に思ったのか悟飯さんは精一杯首を後ろに傾ける。
俺は動きを止めて悟飯さんの疑問に答えた。
「悟飯さんの感じるトコロに当てて欲しいですか?だったら、これからは悟飯さんが動いて下さい。俺はもう動きません。俺のが悟飯さんのイイトコロに当たるよう、自分で動いて、自分でイッて下さい」
「・・・っ、無茶を言うな、そんなこと出来るわけないだろう。・・・ぐっ・・・!」
悟飯さんの抵抗の声に、俺は再びベルトの端を軽く引っ張った。
「言うとこを聞いて下さい。あなたは今、俺の犬なんだから」
冷たく言い放つと、悟飯さんが唇を噛み締める。
いつも穏やかで、笑顔しか見せない悟飯さんの辛そうな顔。
快感は与えられたいが、自ら求めるほど浅ましくもなれない。
悟飯さんの中で葛藤と戸惑いがせめぎ合っているのかと思うと、背中がゾクゾクする。
「出来ませんか?だったら抜きましょう。俺は今すぐ止めたっていいんですよ」
なんてのは、嘘。
いまさら途中で止められるワケがない!
だが、ようやく観念したのか、悟飯さんはおもむろに腰を動かし始めた。
「う、んっ!くぅ・・・っ、う、くっ・・・んっ!」
恥じらいを感じて、悟飯さんの頬が赤くなっているのが後ろからでもわかる。
細い腰がくねって何とも悩ましい限りだが、これが悟飯さんの精一杯なのだろうか。
妻子を持つ大人の男にしては動きがぎこちない。
その緩慢な動きに、段々と俺の方が焦れてきた。
一生懸命俺に自分の前立腺を擦りつけてる悟飯さんに興奮して、尚更もどかしさを感じる。
ほんの少しだけベルトを引っ張るとご悟飯さんの白い咽喉が反らされ、何とも言えない恍惚感に襲われた。
「俺と悟飯さんが繋がってるトコロが、俺に丸見えですよ。さっきからずっと、滑りが良くなってるでしょう?それはね、悟飯さんのアナルから、いやらしいアナル汁が出てるからなんですよ」
俺の露骨な表現に、悟飯さんは聞きたくないと首を左右に振る。
「ああ、いあやらしい汁が出てるトコロはまだあった」
構わず俺は先を続ける。
まだ一度も触れていない悟飯さんのペニスを掴んで。
「ほら、ここ・・・。こんなにヨダレを垂らして、カーペットにまで零れているじゃないですか。難しいことを言う上のお口と違って、悟飯さんの下のお口はどちらもだらしがないですね」
俺の指摘に、悟飯さんは自分の下半身を見下ろして愕然とした。
悟飯さんから溢れた先走りは、四つん這いの大勢なのにカーペットにまでダラダラと垂れ流れていた、一筋の細い滝を思わせた。
「う・・・嘘だ・・・こ、こんな・・・っ」
どうやら悟飯さんには、自分の躯のことなのに、目の前の現実が信じられないらしい。
「嘘じゃないですよ。妻子持ちのクセに、俺に抱かれるのがそんなに好きなんですか?」
こんなになるまで感じているのに、まさか嫌だとは言えまい。
いつもいつも、抵抗ばっかりして下さるけど。
「―好きだ・・・」
ふいに、蚊の鳴くようなか細い声が俺の耳に届いた。
「トランクス、君が、好きだよ」
今度は、愕然とするのは俺の方だった。
まさかこんな回答が返ってくるなんて。
「だから、君が何かを溜め込んでいるくらい、僕にはわかる」
悟飯さんの言葉に、今までのモヤモヤがたちどころに消えていく。
悟飯さん俺の精神状態に、気づいてた?
親子の仲の良さをアピールする風を装いながら、一瞬、俺に向けられるキツイ眼差し。
弟の特権を振りかざすように、これみよがしに俺の目の前で悟飯さんの腕に絡められる腕。
他人には厳しくクールに対応するクセに、悟飯さんにだけ向ける優しい声音。
俺が自分の部屋に悟飯さんを連れ込むと、露骨に不機嫌になる肉親。
それらを何も知らず、惜しみもせずに彼らに与えられる悟飯さんの笑顔。
そのすべてが、こんなにも俺を苛立たせていた。
愛しい悟飯さんを、飼ってやりたいと思うほど。
「さすが悟飯さん、俺も母に似て頭が良いってよく言われるけど、悟飯さんの頭脳には勝てませんね」
「頭脳なんて関係ないだろう?僕が、君を好きだからわかることなんだから」
「・・・ねぇ、悟飯さん、だったら今日のこと忘れないで。毎朝このベルトを締める度に、俺を思い出して」
「君とのことは全部忘れてなんかいない。僕はいつだって、君を思い出してるよ」
悟飯さんは頭脳明晰だけど、恋愛事にはとんと疎い。
だからこれは、悟飯さんが計算して言った台詞なんかじゃない。
悟飯さんがもっと計算高い人だったら、俺はこんなに虜になったりしなかった。
あの時に敵から俺達を庇うように目の前に現れた背中は、潔いまでの気高い清らかさを、今だに失っていない。
「―悟飯さんっ!!」
俺はベルトを放すと、悟飯さんの細い腰を掴んでがむしゃらに白いお尻に何度も腰を打ちつけた。
肌と肌がぶつかる音に、微かに結合部が濡れた音が混じり、それらを圧して悟飯さんの喘ぎ声が社長室に響く。
「ああんっ、あっ、あっ!あんっ!ああっ!」
悟飯さんの中は絶えず変化して、堪えきれないほどの快感を俺に与えてくる。
俺が揺さ振る度に悟飯さんのペニスがぶるぶると振られ、悟飯さんから溢れ続ける先走りが、ぴちゃ、ぴちゃ、と音を立てながらあちこちに飛び散った。
俺がヌルヌルになった悟飯さんに手を伸ばしてグチュグチュと上下に扱いてやると、悟飯さんは呆気なく頂点に達した。
悟飯さんから精液が吐き出されるのに合わせて、悟飯さんのアナルがきゅっ、きゅっと締まる。
途端に俺は射精感に襲われて、慌てて悟飯さんから俺を引き抜いた。
「んぐっ!」
悟飯さんの後頭部を掴むと、俺は激しい呼吸の為に開いた口に、今まで悟飯さんの中に入っていたものを捩じ込んだ。
悟飯さんの頭を固定して、熱くなった咽喉の奥に俺自身を吐き出す。
悟飯さんの中に出したって、後で、俺のいないところで処理されてしまうんでしょう?
そんなの嫌だ、我慢出来ない!
だから、俺を全部飲み込んで。
一滴だって、零したら許さない。
「んっ・・・ぐっ・・・うっ・・・ごくっ・・・」
綺麗な顔を歪め、躯を引き攣らせながら悟飯さんが俺を飲み込んでゆく。
まるで拷問でもされてるかのように苦しむ悟飯さんに、ゾクゾクと弑虐心を煽られて舌なめずりをする俺の方こそ、肉食獣かも知れない。
周りの男達が悟飯さんに固執する理由がよくわかる。
この人は危険だ。
「ふぅっ・・・」
体の熱を吐き出し終えて俺を悟飯さんから引き抜く。
急激に萎えた俺が全部顔を出した時、悟飯さんの口端から俺が放ったものがタラリと零れた。
それを見た俺は、ぐったりと躯を横たえた悟飯さんの首に絡むベルトを掴み直し、豪華なデスクの上の受話器を取り上げた、。
俺が早口に要件を告げると受話器の向こうの声は戸惑いを見せたが、すぐさま平静さを取り戻して何事もなかったように承諾の旨を返してくる。
俺は悟飯さんに向き直り、電話の内容を伝えた。
「悟飯さん、今からここは立ち入り禁止になります。喜んで下さい。今日は一日、俺が悟飯さんを飼ってあげますからね」
俺を見上げる怯えを含んだ悟飯の瞳に、口端を吊り上げた俺の顔が映り込んでいた。
今日だけ、今日だけ俺に、あなたを飼わせて。
この、ベルトの首輪で。
END
ここまでお読み戴きありがとうございました。