【ベルトの首輪】
「やめろ、トランクス!あっ・・・!」
「そんな声出されて、やめられるわけないでしょう」
ここカプセルコーポレーションの社長室で、俺と悟飯さんは何度も抱き合った。
仕事中だという理由で、俺が求めても、悟飯さんはなかなか首を縦に振らない。
いつも、なけなしの無駄な抵抗をする。
「誰か来たら・・・う、んっ・・・」
うるさい口をキスで塞いだら、そのまま悟飯さんは何も言わなくなった。
俺は悟飯さんをその気にさせようと、遠慮のない濃厚なキスを続ける。
「んっ、くぅ・・・っ、ん、ん、ん・・・!」
悟飯さんから吐き出される、苦し気な声と苦し気な呼吸。
でもこれは、決して息苦しいからだけじゃない。
鼻にかかった悩ましい声で無意識に俺に応えて、悟飯さんは更に俺を興奮させる。
キスで脳を蕩かしてあげた後は、耳や首筋や悟飯さんの弱いところに次々とキスを落としていく。
躯は逃げられないよう、しっかりと抱き締めたまま。
それなのに悟飯さんは、ここと外界を隔てる扉を開けられるのを恐れて、何とか俺の腕から逃れようと懸命に躯を捻る。
時間どおりに悟飯さんが現れてくれた時、社長室には誰も近寄らないよう秘書達に頼んである。
カプセルコーポレーションの会長と孫家の家長とは旧知の仲で家族ぐるみの交流があり、中でも長男の悟飯さんが我が家全員のお気に入りなのは、カプセルコーポレーションの社員の間では周知の事実。
だから、学者という手堅い職を持つ悟飯さんが俺に逢いに来てくれる度、俺が秘書達に人払いをお願いしても誰も疑問に思わない。
それを知らない悟飯さんは、いつ何時開けられるかわからない扉への恐怖と、誰かに見られてしまうかも知れない羞恥に支配される。
「あ、あっ、や、めろ・・・っ!」
Yシャツの布越しに胸の輪郭をなぞれば、俺の指が敏感な部分を探し廻らなくても、悟飯さんの乳首はズボンの中の悟飯さんと同じく固く、俺に感じているのを主張している。
たまにしか抱き合えないせいか、元々の体質なのか、相変わらず悟飯さんは感じやすい。
乳首の周りを指の腹で撫で、頭を爪で引っ掻き、二本の指でつまんで擦ってあげると、首を左右に振りながら悟飯さんが喘ぎ始める。
「あああん!あっ、あっ」
引き締まった形の良いお尻を撫でまわしながら、片手でYシャツのボタンを難なく外していく。
ねぇ、俺って器用になったでしょう、悟飯さん。
悟飯さんを脱がせるテクニックなら、誰にも負けない!
・・・なんて、悟飯さんが他の奴に脱がされるところなんて、想像もしたくない。
悟飯さんはまったく気が付いていないけど、一歩ここを出れば、外には悟飯さんを狙う血に飢えた野獣がウヨウヨいるんだよ。
あなたの家の中にさえ、ね。
だから俺は、たまにどうしようもなくあなたを閉じ篭めておきたくなる。
ここに閉じ篭めて、一歩も外に出られないように、檻に繋いで。
でも、そんなことは不可能だから、せめて―
俺は悟飯さんのスーツのズボンからベルトを引き抜くと、悟飯さんの首に回して金具にベルトを通し、そのままきゅっ、とベルトの端を引っ張った。
金具はするするとベルトの上を滑り、大きな輪っかは次第に小さくなって悟飯さんの白い首を絞める。
あっという間に悟飯さんのスーツのベルトは首輪へと早変わりし、まるで犬みたいに悟飯さんはベルトの端を持つ俺に繋がれた。
「何をするんだ、トランクス!放せっ!」
「嫌です、放しません。今日は悟飯さんに、俺の犬になってもらいます」
「犬・・・!?」
俺の言葉に、悟飯さんは驚愕に目を見開いた。
いくら普段は優しくても、悟飯さんにだって人としてのプライドがあるだろう。
別に俺は、そのプライドを踏みにじりたいわけじゃない。
ただ、今の時間だけ、あなたを俺に繋いでおきたい。
年上の悟飯さんを恋人として繋ぎ止める年下の俺はいつも一杯一杯で、あなたを翻弄するだけの余裕もない。
あなたを見るあいつらの血走った眼に俺はいつもハラハラさせられて、それなのにあなたはそんな俺の気も知らないで、誰彼かまわずとびきりの笑顔を見せる。
そんなあなたに『ヒドイじゃないですか』と愚痴の一つも零してやりたいが、生憎と父譲りの俺のプライドが、悟飯さんに泣き言を言うのを許さない。
「そうです。今のあなたは、どう見ても俺の飼い犬じゃないですか。犬は悟飯さんと同じで、とっても頭が良いんですよ。更に賢い悟飯さんは、犬より忠実に、俺の命令に従えますよね」
「何・・・を言ってるんだ・・・いつもの君らしくない。どうかしたのか?」
俺らしくない?
俺が、いつも優しいだけの男だと思ってた?
俺が左手に持つベルトの端を軽く引っ張ると悟飯さんの首が絞まり、咽喉がぐっ、と鳴る。
「あなたにはわからない理由です。それより、苦しいでしょう、悟飯さん?これ以上絞められたくなかったら、素直に俺の言うとこを聞いた方が賢明ですよ」
俺の言葉にこれ以上の交渉は無理だと悟ったのか、更に咽喉に喰い込むベルトに顔を赤らめた悟飯さんが、涙に瞳を潤ませて小さく頷いた。
「そうです、それでいいんです。まずは、下を全部脱いで下さい」
ベルトを引き抜かれたズボンは元の位置より少しばかりズレて、悟飯さんの細い腰にかろうじて留まっているようにも見える。
はだけたYシャツの隙間から鍛え上げられた腹筋が覗き、ズボンの縁スレスレにお腹の中心の窪みが見えた。
俺の視線の先で悟飯さんがファスナーを開け、下着と一緒にゆっくりとズボンを下ろしていく。
そこから現れた悟飯さんは先走りで濡れていた、脱いだ下着との間に一瞬だけ糸を引いた。
「たったあれだけで、もうこんなに濡れてるんですか?」
揶揄う俺の声に、悟飯さんは色の白い頬を真っ赤に染める。
こういう純な反応をするところが、悟飯さんとの年齢差を感じさせない。
悟飯さんは俺より8歳も年上だけど、悟飯さんには俺をリードするなんて、多分無理だろうな。
「次は俺のを咥えて下さい。挿入がスムーズになるよう、悟飯さんの唾液でたっぷり濡らして下さいね」
俺の言葉にこれから起こることを想像したのか、悟飯さんは更に真っ赤になった。
それでも膝まづいて俺のズボンの前を緩めると、おずおずと可愛いい口に含んで舌で施し始める。
俺達はお互い男性経験は相手が始めてで、特に受け身の悟飯さんは男への愛撫なんて殆ど知らない。
はっきり言って経験不足で、これも、お世辞にも上手いなんて言えない。
「はぁっ・・・。俺を感じさせようなんて、しなくていいんですよ。悟飯さんの唾液で、俺のペニスがべちょべちょに汚れればそれでいいんです」
眉根を寄せて俺のをしゃぶり続ける悟飯さんの耳の穴に俺は人差し指を捩じ込んで、指をぐりぐりと動かした。
フェラの時こうしてやると、含んでる音が頭の中に響いてとっても卑猥な気分になる、と何かの本で読んだ。
嘘か本当かは、俺自身は悟飯さんにして貰ったことないからわからないけど、満更でまかせでもなかったようで、それから悟飯さんが一変した。
「ふぁ・・・!あっ・・・!んん、んーっ、うん、んっ!」
甲高い声を上げて、ビクリ、ビクリ、と躯を竦ませる。
キツく寄せられた眉根と潤んで細められた瞳が、俺のを舐めて恍惚とした表情になっているかのように見える。
首からぶら下がったネクタイとはだけたYシャツの間から悟飯さん自身が見え隠れして、全裸の時よりエロチックだ。
加えてこのベルトの首輪。
俺が悟飯さんを支配しているみたいで、そそられる。
「もっ、もういいですよ・・・っ。悟飯さんも、そろそろコレが欲しいでしょう?」
眼鏡の奥の瞳が一瞬揺れたかと思うと、視線があらぬ方へ逸らされた。
悟飯さんは年齢のわりには純情で、俺としてはもう少し欲望に忠実になってくれると嬉しいんだけど。
フェラをしながら悟飯さんも感じていた証拠に、悟飯さん自身からは先走りの液が垂れ流れて、ぬめった光りを放っている。
俺は二本の指でその光りを掬い取ると、悟飯さんを後ろ向きにさせ、二本の指を一気に突き立てた。