【解放者-act.2-堕天使の翼-】

淫蕩な衝撃の余韻に動けなくなった悟飯の目の前で弟が2本の指を口に含み、たっぷりと唾液を絡ませた後で指を引き抜くと、そこには淫液に濡れたイチモツを彷彿させる創作品ができ上がっていた。
むろん、弟がこれから何をするつもりかなど、悟飯にはわかりきっていた。
わかっているからこそ、心境的には今すぐにでもここから逃げ出したいくらいなのに、これから起きることを期待した悟飯の秘部は、弟の指を飲み込みたがってひくりと蠢いた。
弟は、弟の挙動に釘付けになったまま身動ぎひとつできない悟飯に獲物を見るような一瞥をくれると、狭い脚の間をくぐって双丘の奥をまさぐってきた。

「ふぅ・・・っ、ぐっ・・・!」

弟の指が労なく悟飯の秘部を探り当てて躰にめり込んできた時、久々の挿入で蘇った異物感に悟飯は顔を顰めて喘いだ。
しかし、長いこと忘れていた感覚はその後も悟飯の支配を続けることはせず、後から生まれた快感にすんなり王者の座を明け渡した。
弟は、いきなりの激しいピストンで悟飯の躰に負担を与えるようなことはしなかった。
中の感触を愉しむように、内部構造を確かめるように弟の指がゆっくりと動き、その緩慢さが、却って悟飯に異物感と快感が交代する猶予を与えていた。

「・・・へぇ・・・。ナカは空洞になってるのかと思ったら、意外と狭いんだね・・・。隙間なく俺の指を包み込んでるのに、すごく柔らかい。・・・内臓なんだから、あたりまえか。・・・でも、一箇所だけ感触が違うところがあるね」

そう言うと弟は、感触が違うと述べた一点を指先でなぞり、途端に悟飯は躰の最奥から生まれた電流に背筋をぞくぞくと震わせた。

「んんっ・・・!ん、んっ・・・、あっ・・・!」

「ここだね、兄ちゃんの感じるとこ。前立腺って言うんだって?」

どこか物珍しそうに話す弟の声が遠くに聞こえ、数ヶ月ぶりに味わう快感に悟飯の両脚は筋が張って、筋肉がびくびくと緊張と弛緩を繰り返した。
怖いものを見た時に似た感覚に襲われた腰を浮かせると、下着ごとズボンが足もとから抜け、自由を得た拍子に悟飯は、無意識のうちにいつものように両脚を広げていた。

「・・・女みたいな反応するんだね・・・。やっぱり、慣れてるんだ・・・」

弟の声には揶揄も侮蔑もなかった。
だが、悟飯の反応に父との10年の歳月を超えた営みを思ったのか、声のトーンには寂しげな響きが篭っていた。
悟飯は弟の言葉に一瞬だけ正気に戻ったが、秘部の中を泳ぐ弟の指に翻弄されて長いこと平常心を保っていられなかった。

「あっ、あっ、あっ・・・!」

断続的に背筋を昇る電流に悟飯は腰をびくびくと震わせ、白い咽喉を仰け反らせて立て続けに嬌声を上げた。
父が失踪してから暫く忘れていた淫靡な炎が躰の最奥で燃え上がり、それが舌先でちろちろと悟飯の腰と背骨と理性を舐め取っていった。
淫らな炎が裾を翻す度に脳内に電気が走り、その電気はダイレクトに下半身にも流れ込んで、滾る欲望は臨界点近くまで膨れ上がった。
だが、快楽の頂点を迎えるには弟のゆるい愛撫は決定打に欠き、快感が蓄積されるもどかしさに、悟飯は成長期よりふた回りも細くなった腰をくねらせた。

「うわっ、エっロ・・・!水道の蛇口を締め忘れた時みたいだ。先走り汁がダラダラ流れてる。先走りって、少ししか出ないものだと思ってたけど・・・。兄ちゃん、『ココ』ってそんなに気持ちイイの?」

いつの間にそんなに濡らしていたのか、弟の言葉に羞恥と情けなさを覚えた悟飯は、朱く歪んだ己の顔を左右から両腕で隠して弟の視線を遮断した。
人体は、こと快感に関して意図せず過剰反応を起こすことがある。
ましてや感覚や神経が、自己の意思で思い通りにコントロールなどできよう筈もない。
その事実を悟飯は今になって思い知らされていた。

「・・・イカせてあげようか・・・?」

表情を読み取らせない悟飯に対して慎重そうに言葉を運んだ弟の声は、興奮と優越感に上擦っていた。
まるで己が悟飯を自由にできる権利を手に入れたような口ぶりに、悟飯の心は頑なになった。

「・・・余計なお世話だ・・・」

呟きほどの悟飯の返答は、強がり以外のなにものでもなかった。
本音を言えば、一定以上の高さを保ったままなかなか上がっていかない快感のボルテージがもどかしく、今すぐにでも射精してしまいたいくらいだったのだ。
とうぜん弟も悟飯の強がりを見抜いていたのだろう、弟はうそぶいてねめつける悟飯をものともせずに、溢れる体液に濡れそぼった悟飯のペニスに手を伸ばすと、おもむろにソレを上下に扱き始めた。

「あっ、あっ、あっ・・・!いっ、嫌だ・・・ヤメ、ロッ!・・・イキたく、なっ・・・!」

「こんなになってるのに、なに言ってんの」

明らかに笑いをかみ殺した声で、弟は悟飯の虚勢をぴしゃりと窘めた。
その弟の手は、さきほどのリズミカルさとは打って変わって亀頭部を中心にスピーディに動き、たちまち悟飯の意識を高波に乗せた。
弟はわざと音を立ててペニスを扱きながら、秘部に差し込んだ指での前立腺への愛撫も忘れなかった。
前後のウィークポイントを同時に攻められて、びくりびくりと何度も大きく竦んだ両脚のさきから徐々に痺れが広がってゆき、その痺れが大腿部に達する頃には、両脚の大きな竦みは小刻みな痙攣へと変わっていった。

「あっ・・・!ああっ!」

それまでと違う反応に悟飯の限界を勘づいたのか、とつぜん弟は舌ぜんたいを使って亀頭部を集中的に攻め始めた。
さきほどの悟飯と同じ愛撫を施す弟に、本番を回避する目的があったとはいえ愚かにも口淫でのテクニックの一部を披露してしまったことを、悟飯は悔いた。
弟への奉仕がそのまま我が身に返ってくるなど、今の悟飯にはまったく皮肉としか言いようがなかった。

「イっちゃいなよ」

弟は、勝利の目前を確信していた。
その弟への反発心から射精を堪えたい悟飯を、射精欲求と排泄欲が同時に襲って苦しめた。

「放・・・せっ・・・!嫌・・・だッ!イ、ヤ・・・っ・・・あっ、あっ、あっ・・・!」

最後の抵抗は言葉だけだった。
如何に意思の強い悟飯と云えども、性欲の限界を迎えて体外へ放出されるべく尿道をせりあがってくる白濁液を押し留めることはできなかった。
甘美に痺れた腰を中心にして躰をしならせ、痛いほど筋の張った両脚を高々と掲げて悟飯は達した。
まるで雑巾を絞るみたいに全身が引き絞られ、そこから知性と理性と自制心と、血液が搾り取られているようなエクスタシーだった。
そうして数ヶ月ぶりの前立腺での射精に、悟飯は至福の陶酔感と、直後に訪れた強い倦怠感の双方を味わった。

「・・・ごちそうさま。兄ちゃんのイってる時の顔、すごくイイね・・・。興奮する」

内臓で得られる快感のダメージは深い。
かつて『最強』の名を欲しいままにした最盛期の力の片鱗も感じさせないほどぐったりと脱力した悟飯はもはや、さも愉快そうに話す弟に反論する気力すらも失っていた。
暴れる鼓動に激しく息を切らせた悟飯の足もとで、弟が放出されたばかりの悟飯の白濁液を己のペニスに塗りたくっているのを、非難も制止もできずに悟飯は呆然と見守った。

―もう、どうにでもなれ―

本気でそう思った。
こんな状態での抵抗がまったくもって無意味なことくらい、思考力が低下した頭でもわかるのだ。
抗ったところで、結果が変わるわけでもない。
想いを断ち切られてもなお父に対して従順である証として、貞操を守りきった清い躰で再び父と相まみえる未来さえ諦めて無抵抗になった悟飯の両脚を大きく開くと、弟はゆっくり腰を沈めてきた。
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