【trap-後編-】


その、柔らかくて丸い悟飯のバストを下からそっと押し上げると、ジースは先ほどの刺激で固く尖った先端を口に含み、母親から乳を貰う乳飲み子のように吸い始めた。

「あ、あっ!」

まただ、と悟飯は思った。
特別な好意を寄せている相手でもないのに、悟飯の躰は異性に触れられると不可解な現象を起こす。
くすぐったい筈なのに、ジースに吸われた胸の先端は、まるで電気に触れたようにびりびりとした小さな衝撃を感じていた。
雑多な人種の坩堝であるこの学園では、周囲を驚かせるほどの特異体質の持ち主も珍しくない。
ジースもそんな彼らと同じく、悟飯の予想もつかない特性を具えていて、舌先から微弱の電気を流せるのだろうか。
悟飯の推測の正しさを証明してか、ジースに胸の先端を舌で転がされ、ジースが生み出した電気は時間を追うごとにさらに強さを増してゆく。
おまけに、背後から悟飯を抱くバータに脇の下から脇腹、脚の付け根を愛撫されてぞくぞくとしたものが背筋を駆け上り、悟飯は堪えきれずに手の甲で押さえた口もとから苦悶に似た嬌声を上げた。

「くうぅっ・・・!」

「悟飯ちゃん、すっごいカチカチになってるよ」

揶揄を含んだ声でジースは言い、明らかに自身の愛撫が効力を発揮した結果を愉しむように、爪先で悟飯の固い乳頭を弾いた。
それとほぼ同時に悟飯の股間に辿り着いたバータの手が、充血して膨らんだ一点を下着の上から探り当てると、中指でそこをこねくり始めた。

「はあっ、あっ・・・!」

「こっちもコリコリしてる」

「けっこうHなんだね、悟飯ちゃん」

「イヤっ!やぁあ!」

悟飯の反応を愉しむふたりの言葉よりも、愛撫を施される度にその衝撃を蓄えて疼く一点を嬲られる灼熱感に、悟飯は頭髪を振り乱して悶えた。
季節は夏といえども本格的な猛暑にはまだ早い時期であるにも関わらず、締め切られて湿度が高くなった更衣室内の温度計は上昇を始め、呼吸と鼓動の早まった悟飯の白い肌を汗が不快に濡らしていった。
すすり泣きに似た声を漏らす口もとを覆う悟飯の手が悪い病気を発症した病人のように小刻みに震え、両の大腿部の筋肉は緊張と弛緩を交互に繰り返して、淫らな腰の動きを誘発した。
バータにいたぶられている股間からはぐちゅぐちゅと淫音が響き、バータの指先に布地が湿った独特の感触を伝えてバータの興奮を煽る。
この、悟飯にとって長く感じられた状況が一変したのは、股間のずくずくとした疼きが悟飯を支配する波を大きく押し上げた時だった。

「はあっ・・・!ああっ!!ああっ!!はあぁ・・・っ!!」

その瞬間、悟飯は声を高く張り上げたきり息を詰め、悩ましげにくねらせていた腰を天井に向かって大きく突き出して上半身を弓なりにしならせていた。
それまで緊張と弛緩を繰り返してきた大腿部は内側の筋を張ったままで痙攣し、悟飯が受けた衝撃の大きさを無言のうちに物語った。
悟飯の頭の中では落雷が起こったのか、見えない稲光が数回に分けて脳を直撃し、脳内を打つ雷は悟飯から瞬間的に視覚と聴覚と意識を奪った。
悟飯の中で強風と大波と落雷が同時に発生した様はまさに嵐そのもので、この嵐が過ぎ去った後も、悟飯は猛り狂ったような心臓の動悸に合わせて荒い呼吸を繰り返した。

「・・・悟飯ちゃん・・・?」

「おい、オレ達より先にイッちまったぜ、ジース」

「マジかっ!?オレ達すげぇな、バータ!」


―トラップを仕掛けた甲斐があった―


声には出さないが、ジースとバータの胸中には共通した思いがあった。
ジースとバータのふたりは、悟飯がここを訪れるよりも早く、床に無造作に置かれたレトロな鉄製のドアストッパーに気付いていた。
バータはこれを、悟飯がジースと盛り上がっている最中にこっそりと通路の中央付近まで移動させ、何も知らない悟飯をドアストッパーが待ち構える通路までジースが巧みに誘導したのだった。
『一緒に携帯を探してあげる』なんていうのはただの名目で、真の目的は悟飯に襲いかかる為の隙を作らせることにあった。
下心もなしに好みのタイプの女子生徒に親切にするほど、ふたりは紳士的でもいなければ善良でもない。
さらには、手段はどうあれ憎きトランクスに対して何かひとつでも優越感を持ちたがっていたふたりには、今夜の偶然の出逢いはまたとない絶好のチャンスだった。
その好機を見事にものにし、思惑通りにことが運んだふたりには、悟飯の性体験の有無はさしたる重要性を持たない事柄だった。
ところが、日頃の蓄積された鬱憤がなおも幸運を呼び込んだのか、彼氏のいる今時の女子高生にしては珍しく、悟飯は清純なままだと言うではないか。
何も知らない悟飯に対してあらゆる『初めてのこと』を試したいと望むのは、性への衝動と関心の高い思春期の男子には至極当然の成り行きだった。
与えられる快感に戸惑う様子から悟飯が未だ手入らずの乙女であるのは間違いないが、果たしてこちらの経験はどうなのかと、ジースは呼吸の整え終わらない悟飯の唇に己の唇を合わせるとすかさず舌を差し込んだ。

「ふぅっ・・・!」

「あっ!!ずるいぞ、ジース!!」

突然のジースの抜けがけに憤るバータの怒声をものともせず、ジースは舌の根が攣りそうになるほど悟飯の口内の奥深くまで侵入した舌で悟飯の舌を追い、標的を捕らえると、木の幹をよじ登る蛇のように密着して絡み付いた。

「んんっ・・・!う、んっ・・・!」

またもや悟飯の脳内には電流が発生し、もはや悟飯にはジースが発電体質であろうことは疑う余地がなかった。
ぬるぬると口内で動き回るジースの舌から伝わる電気に悟飯は何度も躰を竦ませ、唖然とふたりを見守るバータに口惜しい念を抱かせた。

「悟飯ちゃん、可愛い・・・。よ~し、こうなったらオレも・・・!」

蛇淫の性の如く一向に悟飯の唇を開放しないジースに業を煮やしたバータは、ジースと口付けを交わしたままの悟飯を冷たい更衣室の床にそっと横たえた。
バータが諦めたと見て取ったジースは調子に乗ってか、自ら押し倒したわけでもない悟飯の両手首を独占の証とばかりに掴んで押さえ込み、なおも執念深く悟飯の舌を弄ぶ。

「悟飯ちゃん、オレはこっちのお口にキスしてあげるからね」

悟飯の唇を占領するジースには一顧だにせず、バータは夢中で口付けるふたりの足もとに回り込むと、物理的にも情緒的にも抵抗のできなくなった悟飯の下着をするすると脱がせ始めた。
途中で恥じらう悟飯のささやかな抵抗はあったものの、快感に翻弄されて力の抜けた状態でのそれは無益のレベルのものに過ぎず、大人になり切れない悟飯の精神年齢を象徴したファンシー柄の下着は、呆気なく持ち主の脚先から抜けていった。

「悟飯ちゃん、脚開いて」

下着が脱がされるのは仕方がないとしても、せめて中身は見られたくない。
わずかに残った理性で悟飯がそう願うのは、異性の眼に局部を晒した経験のない乙女なら当然のことだった。
だが、悟飯の羞恥心を無視した要求に悟飯が応じる気配を見せないと、焦れたバータは力尽くで己の望みを叶えてしまい、無情にも悟飯の願いは儚く宙に舞った。
しかも、『脚を開く』という行為は『脚を左右に拡げる』ものだとの悟飯の先入観を嘲笑う角度と高さで。
興味津々のジースが悟飯との接吻を続けたままで顔の角度を変えてちらりとそちらを見遣ると、懐中電灯の灯りに照らされて陰影をつけた悟飯の陰毛が垣間見えた。
その陰毛に向かって伸びたバータの長い舌先が、陰毛の向こう側に消えてゆく。

「んっ、んんっ、んんっ、ん―っ!!」

バータの舌先を小陰唇の内側に感じた悟飯は、これまでよりひときわ高い嬌声をジースの口の中に放り込んだ。
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