【trap-前編-】

だが、突如として正面のジースにひょいと両膝を割られ、過去を遡っていた悟飯の意識は唐突に現実に引き戻され、慌てて悟飯はふたりの意識を自分から逸らそうと試みた。

「携帯、見つかったの!ネズミの通り穴も!」

悟飯が叫ぶと、悟飯の視線を辿ったジースとバータは『あ』の形に口を開いた後、奇妙な偶然に破顔した。

「携帯見つかって良かったね、悟飯ちゃん」

「オレ達の任務も完了するな」

「そう、だから・・・」

「悟飯ちゃん、携帯でトランクス先輩とお話する予定だった?」

「やめちゃえよ、あんな男」

「えっ・・・!?」

「イケメンってさ、Hはヘタそうじゃない?」

「早かったりしてな」

「な・・・何・・・!?」

「オレ達が気持ちよくしてあげるよ」

「交代でいっぱい可愛がってあげるからさ」

と言うなりバータの手が制服のボタンにかかり、そこから先の行動を阻止すべく、悟飯は状況の飲み込めない頭で反射的にバータの手を両手で掴んだ。

「何するんですかっ!?」

「何って・・・悟飯ちゃんの身体検査だよ?」

「怪我とかしてないか、調べてあげるって言っただろ?」

ふたりの口から交互にぽんぽんと飛び出した言葉の意味も行動の目的も理解できない悟飯は、この時点に於いてもまだ、当初の課題のクリアへのこだわりを捨てられずにいた。
座面高の低い竹製のベンチの奥で、悟飯の携帯がメールの受信を知らせてランプをチカチカと光らせている。
一刻も早くそれを拾い上げ、トランクスからのメールを確認したい。
そこには何が書かれているのか、悟飯への甘いメッセージは存在するのか、週末のデートの誘いはないのか、如何に悟飯がトランクスに想われているのか、今までの不安と絶望の分だけ、確認したくて堪らなかった。

「あっ!!」

だが、悟飯に抵抗されて諦めたと思ったバータに脇の下から両手で胸を掴まれ、悟飯は予想だにしなかったバータの突然の行動に喫驚の声を上げた。

「やめてっ!!」

固くなった躰と声帯から悟飯はあらん限りの声をどうにか振り絞ったが、悟飯の期待も虚しく、ふたりの行動の制止を望む単語は何らの成果も上げなかった。
下から掬い上げるように胸を揉みしだくバータの中指で中央の実を円を描くように揺さぶられ、躰の中に電気が流れたような衝撃を受けた悟飯は、声を詰まらせるとびくりと腰を浮き上がらせた。

「悟飯ちゃん、もしかしてお風呂上がり?石鹸の良いニオイがする」

悟飯が腰を浮かせた拍子に股間に顔を埋めたジースが鼻をくんくん鳴らしながら尋ねるのに、悟飯は真っ赤に染まった顔を羞恥に歪ませた。
悟飯がこの世に生を受けて以来、こんなに恥ずかしい思いをしたことはない。
下着の上からとは云え、あろうことか股間の匂いを嗅ぐなんて。

「髪も生乾きだもんな」

動きを封じるように背後から腕を回すバータがショートヘアの悟飯の癖のある黒髪に頬を摺り寄せて言い、そのまま悟飯の耳たぶを喰んだ。

「・・・っ!」

バータに甘噛みされた耳たぶから脳にかけて、痛みに似ていながら痛みとは違う小さな何かが走り抜け、悟飯は瞬間的にぎゅっと両目を瞑ると肩を竦めた。
そんな悟飯の反応にもバータは怯む様子をまったく見せず、無遠慮に悟飯の耳穴に舌を捩じ込むと、小さな耳穴を掘り進めるように小刻みに舌先を動かし始めた。

「あっ・・・!あっ、あっ、あっ!」

これまで経験したことのない感覚がバータに嬲られる耳からダイレクトに脳に流れ込み、脳内の痺れに合わせて悟飯は切羽詰まった声を張り上げた。
バータの手の中では悟飯の心臓が驚く早さで心拍を刻み、同世代の純粋無垢な少女の演技ではない生々しい反応に、ジースとバータの下半身は早くも欲望がはち切れんばかりに漲った。
下半身に血液が集中したふたりと同じく、脳内の電流とは別に悟飯の下半身のある一点にも鈍い衝撃が集まり、それが悟飯の躰の最奥に淫靡の炎を灯す。
その炎を煽るように、ジースはまるで凍えてかじかんだ手を暖めるような熱い吐息を悟飯の股間に吹きかけた。

「ああぅ!」

ジースの熱い吐息が官能の炎を一気に燃え上がらせ、刺激を受けた一点から快感の連鎖が生じて悟飯の下腹部を甘く疼かせる。
そのうずうずとした連鎖反応に、悟飯の下着の中の筋肉が淫らな収縮を繰り返した。

(何、これっ!?)

性的刺激に対して免疫不全の悟飯は、自身の躰が引き起こす反応と未分類の感覚に驚愕と戸惑いを覚えた。
悟飯の下半身は紛れもなく悟飯の身体の一部であるのに、悟飯の意思とは関係なく、悟飯の知らない反応を勝手に始めてしまう。
それは、横隔膜の痙攣と同じく、持ち主にとってはこの上なく不本意ではた迷惑な症状だった。
そんな悟飯に確かな手応えを感じたジースは、快感を与えるのを勿体つけるように悟飯の両脚の付け根を親指の腹でなぞり、唇を歪めながら上目遣いで悟飯の表情を窺った。
見上げた悟飯は、暗がりの中でもわかるほど息を乱し、上からひとつずつゆっくりとバータが制服のボタンを外してゆくのに、まるきり気付いていなかった。
だが、胸もとに風が通るのを感じた悟飯は慌てて自身の躰を見下ろし、ことの成り行きを理解した途端に躰を捩ってふたりの魔の手から逃れようともがき出した。

「おおっと」

「ダメだよ、暴れちゃあ。制服が破れちゃうよ?」

「逃げようとしても無駄だよ。さっき、オレが鍵をかけたからね」

「やめてっ!!どうしてこんなことするの!!」

「どうしてって・・・。さっき言ったじゃない」

「トランクの野郎より、オレ達が悟飯ちゃんを気持ちよくしてあげるんだってば」

「トランクスさんは、こんなイヤらしいことしないっ!!」

「あれぇ?じゃあ、悟飯ちゃんは・・・」

「・・・何にも知らないんだ・・・?」

「お願い・・・これ以上はやめて・・・!初めてはトランクスさんに、って決めてるの・・・」

「・・・だってさ。どうする、ジース?」

「う~ん・・・どうしようっかなぁ?」

「他のことなら、何でもしますから・・・お願い・・・!」

「そこまで言われたら、諦めるしかねぇか?どうするよ、ジース?」

「だったらさぁ、交換条件ってのは、どう?」

「・・・交換条件?」

「そ!・・・実はさ、オレ達ここに来る前にAV見ててさ、かな~り欲求不満が溜まっちゃってるわけよ。だから、悟飯ちゃんがオレ達を別の方法でイカせてくれたら、諦めるよ」

「・・・本当に・・・?」

「ああ、本当。約束する」

「おいおい、ジース・・・」

「・・・その代わり、悟飯ちゃんがオレ達をイカせられなかったら、その時は・・・。わかってるね・・・?」

がっかりした様子を見せながらも、ふたりは共に悟飯の涙声に折れたようだった。
最後の砦を死守しようと藁にも縋る思いで訴えた悟飯は、彼氏の存在を知りながら不埒な行いをしたふたりを責める気持ちよりも、自身の願いが叶えられるかも知れない交換条件に一筋の光明を見出していた。
トランクスの為に純潔を守れるのなら致し方ないと、悟飯がぎこちない動作で了承の意を示すと、ジースとバータは懐中電灯の光りの中で互いにアイコンタクトを交わした。

「交渉成立だな」

「でもさ、交換条件の為にオレ達もう少し悟飯ちゃんに触っててもイイかな?少しでも悟飯ちゃんが気持ちよくなってくれたら、その反応でオレ達も早くイケるかも知れないからさ」

悟飯の願いを受容したふたりと、譲歩の限界を悟った悟飯とで妥協点が打ち出され、観念して躰の力を抜いた悟飯の制服のボタンを外す作業が再開された。
はだけた制服の下から上下で1セットの下着が垣間見え、妖艶さとは無縁の女子校生らしいファンシーな柄を認めたジースとバータは、口々に下着と悟飯の愛らしさを褒めた。
だが、同じ言葉でもトランクスの時とは違って悟飯の心は微塵も高揚せず、偶然の産物による我が身の不幸を嘆いて沈んだだけだった。
もしも、こんな風に他の男子生徒からイヤらしいことをされている悟飯をトランクスが知ったならば、との考えに至った悟飯の心の中では罪悪感が膨らむ一方で、トランクス以外の者が悟飯に幸福感を与える魔法を持たないのを改めて思い知らされていた。

(ごめんなさい、トランクスさん。ごめんなさい・・・)

制服と下着の上部を剥ぎ取られ、トランクスへの謝罪を繰り返す悟飯の白い胸が露わになった時、ジースとバータのふたりは歓声を上げた。
映像ではない、直に触れられる同学年の女生徒の暖かい裸の胸が目の前にある。
しかもその胸は、悟飯の華奢な体つきからは予想もできなかった豊かさで、欲望をかきたてる白くて丸いラインと左右のバランスの良さが、殊更にふたりの興奮を煽った。




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