【蜘蛛の糸-満月の夜に-後編-】

初めての夜桜見物を快諾してくれたピッコロに桜の名所を尋ねられた悟飯は、以前に友人らから伝え聞いたメジャーな花見のスポットを幾つか上げたのだった。
まずはパーティー会場のカプセルコーポレーションに一番近い、西の都の中心部に位置する広大な公園。
次に、悟飯が通っていたオレンジスターハイスクールの側の、自然を生かした比較的規模の小さな公園。
3つ目に、住宅街の中央を割って流れる河の両脇に桜並木が続く、景観の良い散歩道。
そして最後に候補に上げたのが、近年になって工業地帯と倉庫街を結ぶ沿線上に新設された、壮大なスケールの公園だった。
街の経済発展を目的として造られたこの公園は様々なイベントの会場として使用されるだけでなく、春は花見、夏はキャンプとバーベキュー、秋には紅葉狩りと、テーマパークの一端を担っていた。
公園内には無料開放のフィールドアスレチックやミニ遊園地、サイクリングロードが設置され、公園を取り囲むようにして巨大な駐車場と駐輪場が整備されている。
公園の外には片側4車線もの大きな沿線道路が公園と住宅街を分断するようにして横たわり、倉庫街から工業地帯へと荷物を運搬する車両が時間帯を選ばず走行している。
なるべくひと気のない大きな公園をと望むピッコロに、この公園ならば近隣に民家はなく、季節がらイベントの開催もないこの時期はテーマパークとしてはシーズンオフの期間で人目を気にする心配はないだろう、と悟飯は説明した。

『なるほど、うってつけだな。そこでならお前も、ポポやデンデを気にせず大きな声が出せそうだな』

内部構造の特殊な神の宮殿の個室であっても、他の住人の存在を気にして抑え切れない声を懸命に堪えてしまう悟飯を知るピッコロのこの台詞に、ピッコロの言わんとすることを察した悟飯はピッコロとの濃厚な抱擁への期待に頬を染めたものだ。
『気にしなくて済むどころか、この立地条件なら僕が悲鳴を上げたところで誰も助けに来てくれませんよ、きっと』

言葉のあやではなく、悟飯はそう答えた。
これは、悲鳴を上げるほどの激しい行為を悟飯が望むが故に口を衝いて出たのではなく、ピッコロと抱き合う度につい悲鳴を上げそうになってしまう己を自覚した上での、単なる例え話だった。
それをピッコロも承知してくれているものだとばかり、悟飯は思い込んでいた。
だが、現実は悟飯が予想していたのとはかなり違っていたようだった。
おそらくは、あの時すでにこのシナリオがピッコロの中で出来上がっていたのだろう。
悟飯を別室に連れ込んだ後、ピッコロは悟飯だけを先にパーティー会場へと向かわせた。
ひとり別室に残ったピッコロに、ふたり揃っての登場で注目を浴びないように取り計らってくれたのだと、悟飯は感謝の気持ちすら抱いていた。
とくに、突き刺さる父の視線から悟飯を庇う為なのだろうと。
それが、実際の状況はどうだ。
ピッコロがひとりきりになる機会を設けたのは、悟飯への気遣いなどではなく、快楽劇の演出の準備が目的だったのだ。
この演出の為に造り出された分身にそれぞれ上半身と下半身を拘束された悟飯は、性器の敏感な部分だけを徹底的にいたぶるピッコロの責めへの抵抗を完全に防がれていた。
如何に力の強い悟飯でも体格差と身長差に大きな違いのあるピッコロに3人がかりで押さえ込まれてはどうにもならず、唯一自由を認められた頭を、駄々を捏ねる幼児のように激しく振り乱して劇の終幕をせがむ以外に自己を主張する手段がなかった。

「やだぁっ・・・!!やだあぁ!!」

円を描くように亀頭冠を指先で擦られ続け、耐え切れなくなった悟飯が涙と共に漏らす掠れた嗚咽を、端整な頬を歪ませてピッコロは聴いていた。
ピッコロの手の中では、ブジーで突かれて赤く腫れた悟飯の鈴口から溢れた体液が僅かな白濁液と混ざり合い、白く泡立ってグチュグチュといかがわしい音を立てて聴覚の鋭いピッコロの鼓膜を卑猥に揺らしている。

「啼け、悟飯」

手の中から発せられる破廉恥な音を掻き消すほどの動物の鳴き声と同様の喘ぎ声を望むピッコロの胸には、一途にピッコロを慕ういたいけな弟子への情けは桜の花弁の数ほどもない。
或いは本当に、悟飯がひたすら快感を求めるだけの獣と成り下がるのが、ピッコロの願いなのかも知れなかった。
そんな、一切の容赦のないピッコロの手によって苦痛と快感の狭間の迷路に嵌り込んだ悟飯の腰が、意図せずに跳ね上がっては再びビニールシートへと戻って行く。
その腰の動きに合わせて、悟飯の後孔はある時は存在しない何かを吞み込もうとするかのようにキツく入り口を閉じ、またある時は空の直腸から何かを吐き出そうとするかのようにピンク色の肉襞を表出させた。
生々しく卑猥に蠢く後孔をピッコロの眼前に曝け出した悟飯の背筋を、瞳から溢れる涙とともに吹き出した汗が、ガラス窓を伝う雨のような雫となって冷たく下へと流れていった。

「やめてっ!!やめて下さい、ピッコロさんっ・・・!!やめてぇ!!」

髪が乱れるのにも構わず、流れる涙と汗と涎を飛び散らせながら悟飯は、まるでそれ以外の言語をすべて忘れてしまったかのように、無我夢中でただひたすら効力のない言葉を繰り返した。
無意識のうちに放つ言葉と同様に、意思とは関係なく勝手に暴れる躰も、もはや悟飯が意識して制御できるものではなかった。
躰が本能的に反応してしまうほどの強烈な感覚の前では、理性も自制心も、存在の無意味なただの単語と化していた。

「そうだ、悟飯。いいか、オレと抱き合う時には理性など必要ない。羞恥心などというくだらないものも、捨ててしまえ。このオレを求める本能、それだけあれば良い。・・・わかるな?」

ペニスをいたぶる手を止めて、ピッコロは月光に煌く涙を湛えた黒い瞳を覗き込みながら切々と語った。
だが、大声を張り上げて耳鳴りを起こした悟飯の耳にその声は届かず、ピッコロが何を話しているのかわからないままに、悟飯は遮二無二に首を縦に振った。
悟飯の前後不覚のその行動を了承と受け取ったのか、ピッコロは溢れる体液で汚れた手を亀頭冠から離すと、今度はぬるぬると悟飯の陰茎を扱き始めた。

「あっ、ああっ・・・!」

今やあらゆる感覚が集中したペニスをリズミカルに扱かれることによって、そこから発生した電気は紙が水を吸うように悟飯の躰を侵食し、それまで悟飯を苦しめていた苦痛は徐々に快感へとすり替わっていった。
躰の隅々まで拡散してゆく電気が時折脳を掠め、腰を前後に激しく揺さぶりながら、悟飯は獣の咆吼のような声を張り上げて喘ぎ続けた。
セーターの上からもわかるほど大きく上下する胸板と、快楽という名の拷問に歪められた整った造形と、M字に開かれた両脚の中心部からぬるぬると溢れ出す体液が、今まさに咲き誇ろうと開花を進める桜の香りよりも強い淫靡の芳香を放った。
もしもこの現場を目撃した者がいたとして、それが仮に同性に興味のない男性だったとしても、淫らで艶かしく刺激的なこの光景に、ない筈の食指を動かされても不思議なことではなかった。
例え話ではなく悟飯の反応に興味津々のピッコロが、淫猥に開閉を繰り返す悟飯の後孔に誘われて細長い指を差し込んで直腸を掻きまぜると、闇空に連発で花火を打ち上げたような連続的な爆発が悟飯の脳を襲う。
白く弾ける頭で、尿に似たものが尿道をせり上がってくるのを感じた悟飯は、ピッコロが3人がかりで押さえ付けるのも困難なほどにがむしゃらに暴れ始めた。
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