【蜘蛛の糸-満月の夜に-後編-】

三者三様、思い思いに躰をいたぶられ、至る所から発生した電気が悟飯のペニスに重い衝撃を与えたが、本来なら開放されるべき衝撃は放出を許されずに行き場を失って狭い尿道の中を押し戻され、悟飯は睾丸に鈍い痛みを覚えた。

(もう、限界・・・!)

これ以上の責めも辱めも、これ以上焦らされるのもこれ以上嬲られるのも、すべてもう限界だと悟飯の躰は悟飯の理性に訴えかけている。
あらゆる欲求の中でも生理的欲求は何を置いても最優先されて然るべきだったし、とりわけ排泄欲だけは理性と羞恥心でコントロールできるような生易しい欲求ではなかった。
とにもかくにも、今すぐに射精したかった。

「・・・う・・・っ!」


ピッコロの指とローターを呑み込んだまま再び悟飯が下腹部に力を篭めると、中の異物を体外へ押し出そうとする括約筋の動きに合わせて、腸壁がローターごとピッコロの指を奥から圧した。
「そうだ、いいぞ悟飯」

観念して羞恥心をかなぐり捨てた悟飯に、悟飯の理性が排泄欲に負けて焼け切れたのを察してピッコロはほくそ笑んだ。
指を圧迫してくる温かくて柔らかい臓器の感触にピッコロが満足気に指を引き抜くと、ピッコロの指に数瞬遅れて最後のローターが後孔から吐き出され、すべての異物が取り除かれて数時間ぶりにようやく直腸が空になった状態に、悟飯が安堵から心身の緊張を解く。
途端に疲労感と脱力感が一気に押し寄せ、悟飯はピッコロの首にしがみついたままぐったりとその場にへたり込んだ。
弛緩した躰とは反対に、複数のローターによって無理矢理限界まで伸張させられた腸壁は、収縮を許された悦びに急いで元の形状を取り戻そうと、刻一刻と面積の縮小を謀る。
そんな悟飯の体内の変化などお構いなしに、ピッコロの分身は首に絡み付いた悟飯の腕を解くと、自身の胸に凭れかけさせるようにして悟飯の躰の向きを変えた。
逞しいピッコロの胸に背中を預けた悟飯の瞳に、己の体内から排出された物体がシートの上に転がる全容がぼんやりと映し出され、ぬるぬるした体液にまみれた得体の知れない蟲が不気味に蠢くさまに似た光景のおぞましさに、悟飯はぞっと背筋を凍らせた。
つい先刻まで、あの気味の悪い状況が己の体内で展開していたのかと思った直後、悟飯の脳はそれ以上の思考を停止させた。
恋人が見守る前であんな『物』を自身の尻から生み出していた現実ですら、事実であっても考えたくはなかった。
そんな悟飯の心境を慮ってか、それともただ用がなくなっただけからなのか、ピッコロが手を水平にひと振りさせると悟飯の尻を犯していた恐怖の対象は跡形もなく消え去り、悟飯は今見た光景の残像を己の脳裏から追い払おうと幾度となく頭を振った。

「よし、良いだろう。約束通り射精させてやる。溜まったものを思い切りぶちまけると良い」

正面のピッコロの言葉を合図に、脇に膝をついたピッコロの分身が再び悟飯のペニスを扱き始め、緩急をつけた手の動きに悟飯は腰を浮かせて喘いだ。

「あっ!あっ!ああっ・・・!あああっ!」

長い脚をMの字に開いた悟飯が絶頂に向かって一直線に昇り詰める有様を、ピッコロは表情筋ひとつ変えずに正面から傍観している。
その口もとの笑みは、悟飯の喘ぎ声が大きくなるにつれて深みを増していった。
やがて、いつも以上に固く膨張した悟飯のペニスが一際強く脈打つ寸前、ピッコロの分身は悟飯のペニスを扱く手を止めて、深々と差し込まれた金属棒を尿道からゆっくりと引き抜いた。

「いっ・・・!イ、クッ・・・!」

自身の前立腺を尿道越しに犯していた金属棒がその全貌を白日のもとに露わにした瞬間、悟飯は白く弾けた頭の片隅で、それが『ブジー』と呼ばれるステンレス製の医療器具であるのを認知した。
そのブジーによって行く手を阻まれていた白濁液が、ようやく念願叶って開放された悦びに、自由になった尿道から勢いよく噴射する。
通常の射精のように律動的に放出されるのではなく、間隔も開けずに放物線を描いて卑猥に白濁液が迸るさまは、射精と呼ぶよりももはや排尿に近かった。
そんな失禁のような射精の間、等間隔に拍動しないペニスに代わって悟飯は下半身を激しく痙攣させ、ピッコロの分身の腕の中でアーチ状に背中をしならせた。

「ハァッ・・・、ハァ、ハァ・・・ッ、ハッ・・・!」

「・・・上出来だ」

尿意を堪えた後の排泄のような爽快感と多幸感と、数時間に渡って我慢させられた性的欲求を許された充足感と陶酔感が織り成す快感に、肩と胸を上下させて荒い呼吸を繰り返す悟飯の頬に恍惚とした笑みが浮かぶ。
ホースから散水したような悟飯の白濁液を咄嗟に身に纏ったマントで受け止めたピッコロが、己の期待を裏切らない優秀な弟子に労いの言葉を、健気で従順な恋人には期待以上の成果に賛美の声を投げた。
ピッコロの褒賞を未だ冷めやらぬ快感に放心の呈で聞いた悟飯は、その優しい声音に、長い責め苦が終わりを告げた気配を感じてホッと心身を緩和させた。
ピッコロが悟飯のこの心境を知ったならば、弟子の考えの甘さを『愚か者』と叱咤したに違いない。
だが、ピッコロは弟子を諌めるような真似はせず、悟飯の白い躰を抱く己の分身に目配せをひとつ送っただけだった。

「えっ・・・!?」

突然、背後から羽交い締めにされ、悟飯は思わず喫驚の声を上げた。
背後からだけでなく横からもM字に開脚した脚を強い力で押さえつけられ、悟飯が戸惑いと疑問の眼差しを正面のピッコロに向けると、視線の先でピッコロは悟飯の精液に濡れたマントを悠々とした動作で取り払っていた。
その口許には相も変わらず笑みが刻まれていたが、それまで悟飯への愛しさが浮かんでいた頬には、悟飯が今まで見たこともないような冷酷さが滲んでいた。

「このオレが・・・」

唄うような軽やかさで悟飯に近付くと、ピッコロはその足もとに紳士然として跪き、尖った悟飯の顎を捕らえて己の胸の内を語って聞かせる。
茫然と見守る悟飯にはピッコロの動きがスローモーションのように見え、恥辱と汚辱にまみれた責めと継続的に与えられた快感と悦楽に、機転の早さと回転の早さに定評のある悟飯の脳が元来の優秀さと鋭敏さを喪失しているのを、持ち主に教えていた。

「お前に“抱いてくれ”なんてことを言わせる為に、わざわざ道具を使ったなどと本気で思っているのか?」

「・・・何、ですって・・・!?」

それでは今までの責めは一体何だったのかと驚愕に震える悟飯の問いはおおよそ音声と呼べるしろものではなく、いきなり股間に伸びてきたピッコロの手を制止させるだけの効果はもたらさなかった。
射精直後の過敏になった悟飯のペニスの先端への愛撫を開始するピッコロの指には、微塵の躊躇も見られない。
それまで緩急自在に陰茎を扱いて悟飯を追い詰めた分身には倣わず、亀頭と亀頭冠のみを執拗に愛撫するピッコロの責めに、悟飯は強烈な痛痒間に苛まれ、2度に渡った絶頂で掠れた声で悲鳴を張り上げた。

「あっ、あっ!!やめてっ!!やめてぇ!!」

「ここでは泣き叫んだところで誰も助けには来ん。オレにそう教えたのは、お前だろう」

無情にも悟飯の悲鳴を歯牙にもかけないピッコロの言葉に、長いこと擽られ続けて感覚過剰になった表層神経を更に刺激されるようなむず痒さと、過敏な部位へ与えられる快楽への苦痛と僅かに感じ取った快感に混乱する悟飯の頭の片隅に、数時間前のピッコロとの会話が途切れ途切れに思い出された。
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