【パレット-ふたりの色-】


(ま、いいか。また次のチャンスがあるさ)

もともとのおおらかな性格ゆえに過去にはこだわらない悟空は、未来への期待と希望を胸に、愛撫をねだるようにヒクつく悟飯の秘部に二本の指を立てると緩やかに捩じ込んだ。

「んんっ!ん、ん、んっ!あっ・・・!」

性交渉を持ったばかりの蕾が固かった頃とは違い、悟飯の秘部は今では嬉しそうにやすやすと悟空の指を呑み込んでゆく。
中で指を一回転させてからゆっくりとピストン運動を繰り返すと、間もなく腸液が分泌されて動作がスムーズになってくる。
これが、悟空が悟飯の秘部を『イヤらしい』と評する所以であった。
悟空はいつも、悟飯の秘部が濡れるまでは指を浅くしか挿入させない。
秘部への愛撫はここまでが序の口の段階で、悟飯が濡れてからが本格的なスタートだった。
人差し指と中指を交互に動かして指先で腸壁を引っ掻くと悟飯の両脚がびくびくと痙攣を始め、そのままぐるりと指の腹で腸壁をなぞってやると、臀部が揺れるのと同時に悟飯のアナルがきゅっと指を締め付ける。
バタ足の要領で二本の指が悟飯の中を泳ぐと、その感触による快感に悟飯が無意識に下腹に力を入れるのか指を包む肉が奥から指を圧迫し、人差し指に中指を引っ掛けてピストンを繰り返すと、指の出し入れに合わせて中から腸液が溢れ出した。
その淫猥な音に更なる興奮を掻き立てられた悟空のシンボルは限界まで膨張し、悟飯の秘部との逢瀬を期待して懇願の涙を流す。
いつもの悟飯を組み敷く体勢と違い、悟飯の下半身が丸見えのこの体勢では指の動きに合わせての悟飯の反応が手に取るようにわかり、それらの反応のひとつひとつが悟空に歓びと征服感を与えた。
とくに悟空を感激させたのは、悟空が挿入を想定して秘部の入り口を二本の指で拡げた時、中の肉が悟空のシンボルを求めて指を更に奥に誘おうと蠢いたことだった。
男冥利に尽きるとはまさにこのことだ。
悟飯がこいつを欲しがっている、と思うと悟空は居ても立っても居られなくなり、これ以上はないほどに硬くそそり立った己の自慢のシンボルに手を伸ばした。

「悟飯、挿れっぞ」

悟飯に苦しい体勢をとらせたままで焦るように悟空が挿入を開始すると、ぎち、と悟飯の括約筋が痛い手応えを伝えてくる。
脳に針を突き刺されるような鋭い痛みに、悟飯はぎゅっと奥歯を噛み締めた。
もはや今の悟飯には、さきほどの悟空の無茶な要求に従う余裕はない。
ただ、悟空がその身を完全に悟飯の躰に埋め込むまで、呼吸を止めて痛みに耐えるしかなかった。
それでも最近では悟飯の腸内から分泌される特殊な分泌液のおかげで、潤滑剤やそれに代わるものを使用しなくとも、少ない抵抗で悟空を受け入れられるようになっている。
以前よりスムーズになった挿入に、悟飯が痛みを堪えなければならないのは挿入時のほんの数秒間のことであった。
悟空が悟飯の中を突き進む間にも痛みは少しずつ快感へとすり変わってゆき、悟空が腰を深く沈み終える頃には前立腺を刺激される快感に、悟飯は全身を大きく痙攣させた。

「悟飯、オメェ濡れてっぞ。ホント、ヤラしい尻してんなぁ」

悟飯の脳が耳から得た情報をシャットアウトしたくなるようなお決まりの台詞を吐き、悟空は無理な体勢から激しく動き始める。
この男はどうしてこうも毎回、悟飯が聞きたくない言葉で聴覚を刺激するのだろうか。
しかも、瞳を開けば嫌でも見たくない光景まで視界に飛び込んでくるとあっては、悟飯は拳と瞳と唇を同時に閉じてデリカシーのない父親に無言の抵抗を示すしかなかった。
そんな、父親より繊細なメンタルを持つ悟飯の躰は、両手では数え切れない回数の悟空との濃厚な性交渉により、精神面より更に過敏になりつつありある。
悟空の舌に口腔内を掻き回されればうっとりと瞳を濡らし、指先でのソフトなペッティングでは知覚過敏の歯のように僅かな刺激でも反応し、本来の機能や生理現象とは逆の用途に使用されるいじらしい箇所は、悟空のシンボルを埋め込まれると女のように悦楽の涙を流す。
そして、悟空の唾液に濡れたやや茶色味がかかったピンク色の胸の突起は、待ち侘びた春の訪れに開花を急ぐ蕾のような膨らみを見せた。
悟空に汚されるまでは小さな蕾だったそれが行為を重ねる毎に花びらを広げてゆく様子も、悟空はありありと言葉に表した。
その表現のストレートさと生々しさに悟飯は戸惑い、その都度声に出すのではなく、心の中で事実だけ受け止めてくれたら良いのに、と思う。
自身の尻が濡れているかどうか悟飯にはわからないが、ただの自己防衛の為の生理現象を『イヤらしい』などと言われたのでは堪ったものではない。
だが、悟空の言葉に反発しようにも、悟空の激しい腰の動きに衝撃波と紛うほどの電気の直撃を脳が受けていてはどうにもならなかった。
しかも、いつものオーソドックスな体位と違い、前立腺を突かれることで発生した電気は背筋を駆け上る間もなく脳へと流れ込み、悟飯は反抗の意識の為ではなく顔を歪ませて全身を痙攣させた。
その痙攣が激しい動きの中でも悟空に伝わり、ベッドに固定された悟飯の全身をいつもより高い位置から見下ろす優越感と相俟って、悟空の支配欲が言いようのない歓喜の咆哮を上げる。
この支配欲の酒に、悟飯の快感をコントロールしている優越感のエッセンスが加わった時、悟空の心に『独占欲』という名の危険な香りのカクテルが完成した。
支配欲と征服欲が満たされたからには、後から湧き出た独占欲も満たされなければならない。
さて、どうしてやろうか―
「悟飯、オラとオメェが繋がってるところがよく見えっぞ!オメェも目ぇ開けて見てみろ」

今、この時に、悟飯の心も躰も、父を受け入れる秘部をも晒すあられもない姿の悟飯のすべてを見下ろす光景も、悟空ただひとりだけが独占している。
その事実を悟飯にも認めさせようと、悟飯にすればとんでもないことを悟空は言い出した。
これまでも後背位でふたりの局部が繋がっている様を何度も目撃していた悟空だったが、肝心なモノがまるきり隠されない、いつもより更にクリアな景色にご満悦の笑みを零している。
何としても、この光景を悟飯にも見せたい―
見せて、悟飯がどれだけ悟空のものになったのかを、悟飯に強く認識させたい。
自身の秘部が限界まで拡がって悟空のシンボルを呑み込む卑猥な有様を目撃した悟飯は、どんな表情をして、どんな反応を示するだろうか。
そして、どんな声で啼いてくれるのだろうか・・・。
羞恥に顔を赤らめるのは間違いないだろうが、もしかしたら常になく興奮して、いつもより乱れてくれるかも知れない。
たまには快楽に溺れきって乱れまくる悟飯を見てみたいものだ―
だが悟空の願いは叶わず、悟飯が固く閉じた瞳を開くことはなかった。
己の躯の中でも一番汚い部位を再び目撃する勇気も、その汚い部位に愛しい悟空のシンボルが埋め込まれている状態を注視する度胸も、悟飯にはなかったのである。

「なんだ、つまらねぇな。見なくていいんか?」

悟空の思いつきに同調してくれない悟飯に、悟空は少しだけ拗ねた口調でがっかりした様子を見せたが、そこには己の意に従わない悟飯への怒りは存在しなかった。
悟飯が子供の頃から、そんなくだらない理由で悟空が悟飯を叱りつけたことは一度もなく、代わりにお坊ちゃま育ちの悟飯を優しく宥めるのが常だった。

「こんな格好してる時でもなけりゃあ、滅多に見られるもんじゃねぇぞ。いつまでも意地張ってねぇで、見てみろって」

『見たくない』のではなくて様々な理由により『見られない』のだが、そんな悟飯の複雑な心境を知ってか知らずか悟空は尚も言葉での説得を試みる。
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