【あいつの憂鬱】

気がつくと両腕を頭上で捩じ上げられていたり、足首を掴まれていたり、両脚を胸に付くほど折り曲げられていたのは記憶の断片に残っている。
更には腰を掴まれて固定されていたり、ターレスの逞しい両腕で白くくびれた腰を持ち上げられていたりしたのだが、この辺りの記憶は悟飯にはない。
ただ、頂点と頂点の感覚が異様に短く、イッた直後にすぐまたイキそうになっていたのはよく覚えている。
行為の最中、悟飯はイッているかイキそうな状態が続いているか、常にそのどちらかだった。
溢れた愛液がピストンの度に卑猥な音を立てていたのも、更に白いシーツにまで零れて大きなシミを作っていた事実も、悟飯は知らない。
ただただひたすらイキ続け、行き過ぎた快感が苦痛にすり変わり、悟飯の泣き声がぴたりと止んだ頃、ようやく終焉が訪れた。
きつく悟飯の柳腰を抱え上げ、孕ませるのを目的とするかのように子宮内部まで深く挿入したままターレスは射精した。
興奮の為かいつもより量の多い精液を吐き出す毎に、びくりびくりと腰を震わせ、腰が震える度にターレスは低いうめき声を上げる。
悟飯もまた、子宮内壁にターレスが熱い欲望の塊を吐き出すのに合わせて、引き攣らせるように体を痙攣させた。
激しい痙攣の後でも所々の筋肉がぴくぴくと動く全身は汗だくで、塩分を含むその一滴が、虚ろな黒い瞳に流れ込む。
額に流れる汗を拭おうにも、鉛のように重くなった腕は悟飯の意思では持ち上げることすら困難だった。
腕だけではない。
両脚の関節も両腕と同じくオイルの切れた機械のようにギシギシと軋み、まるっきり悟飯の云うことを聞かない。
もっとも、躯に指令を出す肝心な脳が重く痺れてぼんやりした状態のままでは、悟飯が躯をこそとも動かす気になれないのも当然だった。
行為の最中、いちいち数え上げるのも馬鹿馬鹿しくなるほどの回数を、悟飯は達した。
そのダメージが、脳と体に、重くのしかかる。
後頭部がじんじんと痺れ、思考回路がショートした頭の片隅で、悟飯は自分の躯が自分のものではないように感じていた。
自分の意思では動けなくなった悟飯の躯の上に再び静かに覆いかぶさり、悟飯の代わりにターレスがそっと白く細い両脚を左右に押し開く。
放心状態のままぐったりと横たわった悟飯は何の抵抗もなく、行動が予測不能なターレスに、されるがままになっていた。
蜜壷からシーツにまで大量に溢れた蜜は今だに乾かず、悟飯の筋肉がぴくぴくと痙攣するのに合わせてひくつくアナルが、妖しくぬめった光りを放つ。
中からも外からも十二分に潤ったそこにターレスが再び猛った欲望を押し当てると、瞼が半分閉じかかった焦点の合わない悟飯の瞳が、ぴくりと反応した。
ターレスのペニスの先端が難無く悟飯のアナルに埋め込まれ、まるで他者の体の一部を吸収するかのように、みうみるうちに悟飯の体内に吸い込まれてゆく。
侵入したペニスのサイズに合わせてアナルが拡がるのにつれ、悟飯の黒曜石の瞳も大きく見開かれる。
それから先は、ターレスには天国だったかも知れないが、悟飯には地獄だったかも知れない。
さきほど性交渉では、悟飯が昇り詰めても昇り詰めても間髪入れずに次の快感の波が押し寄せてきた。
だが、そこには確かに波があり、波と波の間には、イキそうな状態ではあってもイッていない時間がほんの数秒間は存在していた。
ところが、アナルでの性交渉では、どうやら女性になった悟飯の躯には快感に際限がないらしく、ターレスに前立腺を突かれる度に悟飯は達した。
ターレスの腰の一突きで悟飯の脳に強力な電気が発生し、その直後に全身が大きく痙攣する。
躯の中心を貫くターレスのモノが巨大化して、脳にまで達しているかのように悟飯には思えた。

『脳が・・・溶けちゃうよぉ・・・』

間髪入れずに訪れる絶頂に呼吸もままならない。
大声を張り上げ過ぎた咽喉は水分の一滴も残っていないのか、渇いた咽喉に表面の皮膚が張り付き、唾を飲み込むのも困難だった。
カラカラに干からびた咽喉とは反対に蜜壷は充分過ぎるほど潤い、悟飯の愛液と子宮内部に放出されたターレスの精液が混ざったものがダラダラと流れ、二人の下半身を汚し続けている。
ターレスは悟飯の右手を取ると、二人分の体液を流す蜜壷に指の数本を挿入させた。

「自分で動かしてみろ」

興奮に煽られるように、音を聞き取れなくなった悟飯の耳にターレスは残酷に命令する。
アナルにペニスを挿入されながらの自慰行為―
もしもこの現場を目撃した者があったならば、誰しもがそう思うだろう。
少年の頃の悟飯なら、どんなに強烈な快感を与えられようとも間違いなく反抗していた。
だが、今や羞恥心も薄れるほどに、7年も交際を続けてきたターレスに対して今更隠すものなど何もなかった。
悟飯は、より深い快感を求める本能に突き動かされるように、無意識にターレスの命令に従った。
ターレスに前立腺を突かれながら、自らの指で花びらの中心を卑猥な音を立てて掻き混ぜる。

「はぁっ・・・!ああっ・・・!ぁ、あ、ぁあっ!」

快感に耽る行為に没頭しイキ続けることを義務付けられたかのように、淫らに指を動かして悟飯は立て続けに達した。
ターレスの努力と奉仕の甲斐あってか、痛みを与えられた処女喪失が遠い昔の出来事だったのではないかと思われるほど、悟飯の開花は急激だった。
しかも、萎えるのを忘れて今を盛りと咲き誇る。



―最高だった―



百戦錬磨のターレスが陶酔するほどに。
悟飯の独占を前提に、神龍に頼んでまた悟飯を女にして貰っても良いかも知れない―
そんな馬鹿な考えが脳裏を過ぎった直後、ターレスは二度目の興奮と感動を吐き出した。










気を失った悟飯の体の汗を綺麗に拭ってやった後、ターレスは全裸のままベッドに横たわっていた。
隣りには、疲労のあまり微かな寝息すら立てずに沈むように眠る悟飯。
いかに回復の早いサイヤ人の血を半分受け継いでいると云っても、これだけのダメージを負ったからには、明日の朝には登校不能になっていて欲しいところだ。
この調子で一週間もの間、悟飯に欠席を続けてさせられたなら―
不可能な望みと知りつつも、悟飯を誰の目にも触れさせたくないと願ってしまう。
ハイスクールの野郎共がどんな眼差しで悟飯を眺めるのか、と想像しただけで、尻がムズムズするほど落ち着かなくなる。
このターレスの心境を悟飯が理解する日は、おそらく永遠に来ることはないだろう。
いつもより線の細い寝顔に、ターレスは憂鬱なため息を吐くのだった。




END

ここまでお読み戴きありがとうございました。
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