【僕の憂鬱-後編-】

ターレスが悟飯を誘拐し損ねてから数年が経過した今でも、一向にターレスを許せない同胞に悟飯との仲を認めさせるには、既成事実を作る以外に方法が見当たらなかった。
悟飯とターレスが異性ならばそれも可能だが、同性となれば、既成事実の代わりに、誰の目にも理解可能の具体的な数字をヤツの目の前に突きつけてやるのが一番手っ取り早い。
その為に、悟飯を養育する為にこれだけの準備があるのだと、誰にも文句を言わせない額を用意する必要があった。
目標の額にはほど遠いが、ターレスの容姿は幸いにも地球人の美的感覚に合うらしく、仕事は順調に増え続けている。
メディアに受け入れられ、TVのオファーでもあれば、あと数年で目標額に達するだろう。最大の問題は、その間に、悟飯に恋人と呼べる相手が出現してしまう可能性だった。
悟飯はまだ恋愛を知らない。
知らないからこそ、悟飯を抱くターレスに、恋心に近い感情を抱いているだけなのかも知れなかった。
それが、悟飯の成長と共にどう変化していくのか、ターレスにも先は読めない。
悟飯が思春期に入れば、ガールフレンドの一人や二人はいても当たり前だろう。
悟飯が心惹かれる出逢いも、これからやってくるかも知れない。
年頃になれば、ターレス以外の人間との性交渉もありえる。
どう考えても、20歳以上年上の男より、同年代の女の子との恋愛の方が、悟飯には楽しい筈だ。
ターレスの望まぬ未来が訪れる覚悟が、ターレスにはある。
恋愛も性交渉も、好きなだけ経験すればいい。
だが、相手が男であれ女であれ、己以外の人間では満足出来ないように、悟飯の体の隅々まで毒を染み込ませてやる。
染み込ませて、今後悟飯がどういう経路を辿ろうと、いずれ己の元に帰って来るように仕向けてやるのだ。
ターレスは手と手を合わせるように悟飯の脚の指の間に己の手の指を交互に差し入れると、悟飯の脚を自分の口元へと運び、何の前触れもなしに親指を口に含んだ。

「キャアアアッ!!」

いきなり脚先に感じたターレスの口内の感触に悟飯は絶叫し、脚先から流れ込んでくるターレスの毒から逃れようと、体をよじらせてベッドの上でのたうちまわる。
暴れる悟飯の腰をきつく抱き締めて深々と結合し、脚の親指を悟飯のペニスに見立てるかのようにターレスはしゃぶり続けた。
ジュポジュポと音を立てながら口を上下動させ、指の腹を舌先でチロチロと舐め回し、時には爪に軽く歯を立てる。
脚先から流れ込むターレスの毒は痺れを伴う電流となって悟飯の脳天めで駆け上がり、悟飯の脳内をぐちゃぐちゃに掻き混ぜた。
体の中心を電気が通う度に悟飯は大きく痙攣し、幼いペニスの先から迸る先走りの液体が、糸を引きながら悟飯の動きに合わせてあちこちに飛び散った。
日常生活では入浴以外に与えられることのない脚先への温度による刺激は、敏感な悟飯の体には強すぎる。
にも関わらず、更に悟飯を追い詰めようと、ターレスは指よりなお刺激に弱い指と指に隙間に舌をねじり込んだ。

「ヤメテェェッッ!!」

悟飯が悲鳴を上げてのけ反り、体をバタつかせてもターレスは赦さなかった。
脚の指の一本一本を丁寧にしゃぶり、指と指の隙間も丹念に舐め上げる。
最後に小指を愛撫してターレスが悟飯のすんなりと伸びた脚を解放した時、ようやく悟飯は安堵した。
すでに悟飯の顔は間にだとよだれと汗でぐしゃぐしゃに汚れ、洗いたての黒髪は乱れ切ってほつれ、不規則な呼吸に心臓の鼓動はせわしなく、酸欠状態になった脳は貧血を起こし始めていた。
これ以上の快感は、まだ少年の悟飯の体では堪えられそうにない。
ところが悟飯には不運なことに、人間は二足歩行の動物だった。
脚は一本だけではない。
ターレスから解放された脚とは逆の、もう片方の脚の親指を口に含まれた途端、急激な射精感に襲われて悟飯はエビ反りになった。
悟飯の中を圧して膨張するターレスのものを締め付けながら悟飯が達しようとしたその時、ターレスの大きな手が悟飯のペニスをきつく握り締めて射精を阻んだ。

「うぐっ・・・!」

「おっと、イクのはまだ早いぜ。指はあと四本も残ってるんだ」

せき止められた奔流が悟飯の中で荒れ狂い、開放を求めて今にも爆発せんと暴れまくる。
ターレスの力強い手によって無理矢理引き戻された欲望が逆流を起こして、悟飯の睾丸をズキズキと痛めつけた。
その間にもターレスは深々と悟飯の中で根を張った己自身で何度も強く悟飯を突き上げ、強風に煽られる木の枝のように悟飯の体を揺さぶっている。

「・・・せて・・・」

「何か言ったか?」

縋るようにターレスへと手を伸ばした悟飯の哀願に、白々しく応えるターレス。
勝利の予感に陶酔しきったその表情を悟飯が目撃したのなら、またもや自分がターレスの術中に嵌ったのを思い知らされたことだろう。
だが、例え悟飯が重い瞼を強引にこじ開けたとしても、その瞳には朧げな風景しか映らなかったに違いない。

「イカ・・・せて・・・っ」

「ほう・・・イカせて欲しいのか?」

体中が震えるほどの快感に顔を歪める悟飯を満足気に見下ろした、ターレスのサディスティックな笑み。
悟飯ほど、ターレスの征服欲と支配欲を満足させてくれる相手はいなかった。

「イカせて欲しければ、嘘でもいい、俺を『好きだ』と言ってみろ。言えたなら、イカせてやる」

「・・・誰・・・がっ・・・そんな、ことっ・・・言う、もんかっ・・・!」

この期に及んでもまだ意地を張る悟飯に、ターレスは咽喉を鳴らして可笑しそうに笑う。

―これだからお前は面白い―

今までの情人と同じく、あっさりと簡単に陥落してしまうようでは、愉しめないではないか。

「まだそんな余裕があるのか?ならば、最後まで俺の指しゃぶりに付き合って貰うぞ」

悟飯の耳元で優しい声音で囁きながら、ターレスは緩くローリングしては、自身の先端で悟飯の前立腺に掠めるだけのソフトなタッチを繰り返す。
ターレスのものが前立腺を掠める度に悟飯の脳にも何かが掠め、悟飯の体力と思考力を徐々に奪ってゆく。
悟飯は観念したように、胸の内を打ち明け始めた。

「・・・ターレス・・・は、手に、入れた、相手は・・・すぐ・・・飽きる・・・って・・・」

ターレスの居所を捜してターレスの仲間を問い詰めた時に、悟飯はターレスの性癖を聞かされていた。

『ターレス様は、飽きっぽいお方だからな。子供のお前を相手にどこまで保つのか、見ものだろうて』

悟飯を小馬鹿にしたように鼻で哄うターレスの仲間に、悟飯の心は氷のように冷たく凍りついた。
ターレスが悟飯を子供扱いしていいようにあしらうのは、ターレスにとっては遊びだったからなのだろうか。
悟飯はその他大勢と同じく、ターレスに弄ばれているだけなのか。
それを確かめる為に、ここへやって来た。
悟飯が初めてターレスのもとを訪れたあの日、ターレスは懐かしい故郷に数年ぶりに帰省したかのように眼を細めて笑った。
その笑顔が思いがけずあまりにも優しかったので、悟飯はただ俯くだけで何も言えなかった。

「誰に聞いた?・・・まあ、いい。俺のことをいろいろと知っているらしいな。だったら、これも知っているか?俺がワザと部屋を散らかして、お前がここへ来るように仕向けてた、ってことを」

予想外の展開に大きく瞳を見開く、動かない体で上半身を起こそうと試みる悟飯を手で制し、ターレスは後を続ける。
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