【僕の憂鬱-後編-】


「うっ・・・」

悟飯の思いがけない行動への驚愕と、敏感な亀頭部へのいきなりの刺激に、ターレスは呻き声を漏らした。
ターレスからの強要も懇願もないままに悟飯が自ら取ったこの行動は、奇行とも言える。
あるいは、自分の拙い舌技でもターレスを悦ばせられるのか、試しているだけなのかも知れなかった。

「悟飯、無理をするな。キャンディーを舐める要領で舌を使ってくれればいい」

ターレスのアドバイス通りに、口に含むでもなく、悟飯はターレスの雄を舌で熱心に舐め続けた。
オーラルテクニックの知識も経験もない悟飯には、どこをどうすればターレスを感じさせ、悦ばせられるのかもわからない。
それは、ただ肉棒をところ構わずペロペロと舌で愛撫するだけのつまらない舌技であったがそれでもターレスには充分だった。
馴れない舌遣いが却って初々しく、何とも言えない幸福感と愛しさが込み上げてくる。
時折悟飯の舌先がそれとは知らずターレスの敏感な部分に触れ、ほどなくしてターレスの分身から先走りと呼ばれる透明な体液が滲み始めた。

「悟飯、もういい。これ以上はお前にはキツイだろう。もう離せ」

言われるままにターレスから離れた悟飯の唇で自身の先走りを拭うと、ターレスは困惑に戸惑った悟飯に口付けた。

「んうっ・・・!んっ、んっ、ぅう、んっ・・・」

多少のヌルつきはあるもののサラリとした体液を舌で絡め取ると、それを悟飯にも舐めさせるようにターレスは悟飯の口腔内に舌を這わせる。
悟飯の口内でターレスの体液は糸を引きながら互いの舌に絡み合い、わずかに流れ込んだターレスの唾液が悟飯の唾液と混ざった。
悟飯の舌にターレスの舌が蛇のように纏わり付き、ターレスの体液と相俟ってヌルヌルと動き回る。
ターレスが舌を離した一瞬後に悟飯はターレスの体液混じりの唾液をこくりと飲み下し、それを合図にターレスは悟飯の潤った秘部に再び猛る欲望を挿入した。

「あっ、あっ、うああっ!」

怒張したターレスのものが、痛みを与えながら悟飯の体にめり込んでゆく。
受け入れるには無理のあるサイズに、悟飯の秘部は、伸縮自在の周囲の筋肉まで痛めつけられているようだった。
悟飯に痛みを与える時間を短縮する為、ターレスは挿入時には微塵も躊躇わず、完全に腰を沈めるまでは一気に突き進む。
挿入時にギチギチとターレスを締め付ける悟飯の蕾は、中は体温以上の暖かさと肉襞の柔らかさで隙間なくターレス自身を包み込む。
ターレスが律動すれば後を追って肉襞がターレスのペニスに絡み付き、悟飯の体の最奥から分泌された蜜はヌルヌルとターレスを絶頂へと誘う。
悟飯もまた、二度目の交わりで膝や股関節が痛む体で、体の奥から発する快感を感じ取っていた。
ターレスに突かれる度に血の気が失せた脚はガクガクと震え、悟飯の前立腺とターレスのペニスが擦れる都度に散った火花は熱を孕んだ電流となって悟飯の背骨に喰らいつ付く。
成長途中の悟飯の体は脳まで揺さぶられ、目の前がチカチカとして瞼を開けるのも億劫になってゆく。
縋るように無意識にターレスの腕を掴む手は、もはや力を篭めることすら敵わない。
白いキメ細やかな肌は、ターレスに指先で触れられただけで、体全体が痺れるくらいの快感を生むほど敏感になっていた。
その白い肌の滑らかさを愉しむように、ターレスの手はせわしなく悟飯の体中を這い摺り廻る。
額に手をあて、頬を優しく包み込み、咽喉を掴んでは胸をさすり、胸の突起を悪戯した後は悟飯の幼いペニスへと手を伸ばし、空いたもう片方の手で白い筋肉質の太腿を撫でる。
子供特有の皮膚の薄い肌は柔らかくて肌触りが良く、特に太腿はどこかしっとりとしていて、『もっと触って欲しい』と訴えるようにターレスの掌に吸い付いてくる。
いついものようにターレスの脳裏を『餅肌』の文字が過ぎり、直後にターレスは異様な興奮に駆られるのだった。

―誰にもやらない―

―誰にも触れさせない―

この肌は己のものだと、そう心の中で呟く度に悟飯への恋愛感情に溺れてゆくターレスを、もう一人の皮肉屋のターレスが口元を歪めて嘲笑うのも、いつものことだった。
20も歳の離れた子供を相手に、男も女も飽きるほど抱いてきた自分が夢中になっている―これが呆れずにいられようか。
律動しながら高く掲げた悟飯のふくらはぎに舌を這わせ、過去を懐かしむようにターレスは目を細めた。
ターレスには、かつて、恋人と呼ばれる相手は多数存在した。
同棲も経験した。
既婚者に手を出したことも稀ではない。
ましてや一夜限りのゆきずりなど、いちいち思い出すのも面倒な数に上った。
これまでターレスは、狙った獲物は必ず仕留めてきたのだ。
照準を定め、あの手この手で獲物を追い詰め、追い堕とすまでは楽しかった。
そこには確かに恋愛感情も存在した。
だが、手に入れた後は、決まってうんざりするほど呆気なく飽きがやってきた。
常に求める側に席を置き、己の欲するままに追いかけ続けるのを好むターレスは、相手から追い求められ、追い縋られ始めると途端に興味が失せ、跡には未練ではなく失望のみが残った。
あるいは戦闘民族サイヤ人のターレスには、甘え甘えられるベタベタの恋人関係など、性に合わないのかも知れなかった。
決まった相手と長続きしないからという理由で、『腰の落ち着かぬプレイボーイ』と同じサイヤ人からはやっかみを含んだ冗談で揶揄われ、『ターレス様はおモテになられる』と仲間達からは妙な感心をされた。
そんな気はさらさらないが、これでは家庭を持つなど到底不可能だろうと思われた。
そのターレスにも、コイツが女なら無理強いしてでも結婚してやる、と、初めて己とは無縁の単語を意識した人間がいる。
それが、同じサイヤ人の血を引く悟飯だった。
ターレスとの情事を求めて自ら服を脱いでベッドに潜り込んで来る輩に辟易していたターレスには、ターレスに抱かれている時にも凛とした精神を保ち続ける芯の強い悟飯は、新鮮な驚きだった。
ターレスのテクニックに翻弄されながらも自己を失わず、情事に溺れず、自分の中の快感に必死に抗って唇を噛み締め、声を押し殺す様は、易々と脚を開く連中より却って扇情的だった。
悟飯を抱くことでターレスは、初めて相手を攻略し、征服する歓びを知った。
堕ちそうで堕とせない悟飯は、いつまでもハンターであり続けたいターレスの性分に、ぴたりと合致した。
しかも、少しでも油断すると、餌を与えただけではその美しい毛並みに容易く触らせてくれない猫のようなしなやかさで、するりとターレスの腕の中から逃げてしまう。
それを必死で追いかけ、胸にかき抱き、支配し終えた後の歓びは絶大だった。
誰に哄笑されようと、己自身にすら嘲笑されようと、手放せるわけがなかった。
悟飯は、飽きっぽいターレスが唯一継続を望んだ相手だった。
だが、その悟飯に対してだけは、自信家のターレスが珍しく弱気になる瞬間がある。
悟飯の心を捕らえられる自身が保てなくなる度に、ターレスは悟飯の本心を試した。
ターレスの人生に関与する重要事項を悟飯にだけ知らせず、悟飯がどういう行動に出るのか、結果を待ち続けた。
悟飯との行為の最中にワザと自分の過去の経験を口にして、悟飯の反応を窺うこともある。
はっきりと言葉で伝えられはしないが、その都度悟飯はターレスの望む反応を返してくれた。
行方をくらませたターレスの居場所をターレスの仲間から聞き出し、自力で住所を調べてここまで来た。
玄関の扉を開けたターレスと目が合った直後に、困ったような表情で俯いた悟飯の姿は、思い出す度に今でも胸が締め付けられる。
ターレスが過去の話に触れると、悟飯は明らかに嫉妬と思われる拒絶反応を示す。
思惑通りにことが進むとターレスは一旦は安堵するが、暫く時が経つとそれもまた、次の不安に掻き消された。
だから、今回の仕事の件も、悟飯には話さずにいた。
忙しい素振りなど微塵も見せず、証拠となる雑誌を方々にページをめくったままで置き去りにして、悟飯が気付くのを待ち侘びた。
この作戦は不測の事態により失敗したが、そもそもターレスが仕事を始めた理由も、悟飯との未来にあった。
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