僕は今まで、たくさんの嘘をあなたについてきた。

そして僕は、今日もあなたに嘘をつく。



兄は純粋で、人を疑うことを知らない。
天然で鈍感で、他人から寄せられる好意にも気付かない。
父に似て無頓着で、物事を深く考えない。

僕の話にも、本当かどうかなんて考えたりしない。
だから僕は、もっと深く探って欲しくて、あなたに嘘をつく。

あなたの気を引きたいから。

「勉強しろ」と言われれば、ワザと勉強しないで怒らせる。
お風呂上がりには父と裸で飛び回り、困らせる。


あなたに僕を見て欲しいから。

強い父よりも、大好きな母よりも誰よりも、尊敬する兄に、いつまでも自分の保護者でいて欲しいから。

だから、僕は今日も、あなたに嘘をつく。





END

ここまでお読み戴きありがとうございました。