【世界の不思議】
―世界は不思議に満ちている―
「はっ・・・あ・・・ピッコロさん・・・あっ・・・」
言葉とは不思議。
『好き』でも『愛してる』でもなく、ただ『ピッコロさん』と名前を呼ばれただけで、『大好きです。僕を奪って下さい』の意味が読み取れるから。
愛しい体の輪郭をなぞり、時には手の平で、時には指の腹で白い肌を撫で上げれば、悟飯の体がほんのりと熱を帯びてくる。
滑らかな肌の不思議。
何度触れても、幾度撫でても飽きることがない。
悟飯の胸を、背中を、脇腹を、体中を撫で廻しながら、ともすれば自分は、一日中でもこの肌を撫でていられるかも知れないとすら思う。
「あ・・・あ、んっ・・・あぁ・・・」
悟飯の頬に優しく唇を寄せて顔を覗き込めば、細められた瞳がうっとりと微笑んでいる。
黒い瞳の不思議。
悟飯は人と会話をする時も、人の話を聞く時も、必ず相手の瞳を見る。
相手の真意を見誤るまいとするかのように視線を合わせる澄んだ瞳は、幾ら見ていても見飽きない。
その瞳の中に自分の存在を確認すると、言いようのない愛しさが込み上げてくる。
「んんっ・・・う、ん・・・んっ、んっ・・・」
キスは不思議。
柔らかい唇を割って長い舌を差し込むと、悟飯の体がびくり、と竦む。
悟飯の舌の根まで舌を絡ませ、口の中をくまなく舐め廻すと、たちまち悟飯の口内に唾液が溢れてくる。
それを音を立てて吸い上げ、飲み下す。
弟子の体の一部を犯す行為にいつに間にか没頭し、この脣から悟飯のすべてを吸い込みたくなってしまう。
「う、くっ・・・あ、あ・・・あっ・・・」
熱い楔を悟飯の体の中に埋め込むと、徐々に熱くなってきた互いの体の熱は一気に上がり、汗ばんでくる。
すかさず律動を開始すれば、ピッコロに体を揺さぶられるのに合わせて悟飯が甘い声を上げる。
愛し合う行為の不思議。
たった一人の少年を手に入れただけで、世界のすべてが我が物になったかのような錯覚に陥る。
体の一部が繋がっただけで、二人の何もかもが一つに融け合ったみたいな昂揚。
気が付けば、世界を征服するより、一人の人間の攻略に夢中になっている。
この行為の最後の至福の瞬間の為に。
己にとって地球とは、もはや征服すべき惑星ではなく、愛する者が存在する守りたい世界へと変わっている。
痛みを堪え、師の愛を拒絶することなく受け入れる悟飯が愛しくて、乱暴に扱えば壊れてしまいそうなのに、理性では抑え切れないほどに込み上げてくる衝動。
「あ!あっ!ああっ!あああっ・・・」
悟飯自身を握り締めたピッコロの手の中から飛び散った蜜と、悟飯の中で開放された己の欲望が、すべてを満たしてくれる。
今や戦友となったあの男は不思議だ。
悪は善に変わり得ると知っていたのだから。
―この世界は不思議に満ちている―
何より不思議なのは、一人の少年との導かれるような出逢いなのかも知れない。
END
ここまでお読み戴きありがとうございました。