【果たして父とは】


果たして、父とはあんな人だっただろうか。

魔人ブウを倒した後、僕達のお父さんは7年振りに我が家に帰宅した。
7年もあれば人は皆、何かしらの変化を遂げているものだろう。
お父さんにとって一番大きな変化は、悟天の誕生だと思う。
お父さんも悟天の存在には驚いただろうけど、それ以上に僕達は変化に驚いた。
元々の性格は変わってない筈なのに、何と言うかその・・・お父さんって、こんな人だったっけ?

僕の記憶の中のお父さんは、お陽様のように明るくて春のそよ風のように優しくて、誰よりも強く、良く言えばおおらか(悪く言えば大雑把)な人だった。
修行が命のお父さんは恐らく関心がなかったのだろう、勉強に関しては全くふれてこなかった。
かと言ってお母さんの躾や、お母さんが僕に勧める勉強に対して否定的ではなく、むしろ協力的だったと思う。
それなのに。

7年振りに帰って来たお父さんは、以前なら僕の躾の為に絶対にしなかったつまみ食いをするは、子供の目の前でお母さんのお尻を触わるは、お風呂上がりに下着1枚で家の中をウロウロするは、他にもまだあるけど、とにかく以前では考えられないような行動をするのだ。
その度にお母さんに「行儀が悪い!」「子供達の前で何てことするだ!」「だらしがねぇ!」
と怒られているけど、それにも全くヘコたれない。
確かお父さんって、お母さんに頭が上がらなかったんじゃなかったっけ?

お父さんにお尻を触られる度にお母さんは
「まったく!悟空さはいつからそんなにスケベになっただ!」
と顔を真っ赤にして怒るけど、あろうことかその被害は僕にも及んでいた。
気が付いたら、お父さんは僕のお尻にまで触るようになっていたのだ。
あの界王神界での老界王神様とのやり取りを思い出しても、7年の間にお父さんはすっかりスケベになったのだとしか思えない。

その父から一緒に入浴を、と誘われたのはつい先程のことだった。
只今僕は思春期ピークの高校生、まだ小さい弟の悟天ならともかく、この歳でお父さんと一緒にお風呂に入るなんて、恥ずかしくてとても出来やしない。
「僕ももう高校生ですから。年齢的にお父さんと一緒のお風呂は無理があると思いますよ」
とやんわり断った。
するとお父さんは
「なーんだおめぇ、男同士なんだから恥ずかしがるこたぁねぇだろ?」
と可笑しそうに笑って言った。
それだけで済めば良かったのだ、それだけで済めば。
「おめぇ、高校生になって、体だけじゃなくて“こっち”もでっかくなったんか?」
と、何と僕の股間にタッチしたのだ。
「お父さんのスケベ!!」
と真っ赤になって怒鳴ってやったもののお父さんにはまるきり効果がなかったようで、カラカラと明るく笑っては悟天と一緒にバスルームに消えて行った。
あとの残された僕は、呆然とその後ろ姿を見送るしかなかった。
もう、もう、どうしてくれよう!

お父さんのこの突拍子もない行動に、僕はその都度ハラハラしたりドキドキしたり、とにかく動揺してお父さんに振り回されっ放しなのだ。
その度に思ってしまう。

果たして、父とはあんな人だっただろうか、と。





END

ここまでお読み戴きありがとうございました。
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