【もう、そうなんです】



「あっ!」

セルゲームを間近に控えた穏やかな昼下がり、孫家のリビングで親子でじゃれ合っている最中、悟空が掴んで引っ張た拍子に悟飯の白いチャイナ服のボタンの一つが弾けて飛んだ。
白くて丸い形のそれはコロコロと床の上を転がると、木肌の色の濃いアンティーク調の家具の下に姿を隠す。
急いで見つけようと悟飯は家具の近くまで駆け寄り、失われた物を探す為にその場に膝をついた。

「悪ぃな、悟飯。そんなに強く引っ張ったつもりなかったんだけどな」

一般的な父子間のじゃれ合いの常で、つい行動がエスカレートして荒っぽくなってしまったのかと、反省の色も濃く悟空が謝罪する。

「お父さんのせいじゃありません。実は一個、取れかかってたボタンがあったんです」

「じゃあ、さっき飛んでったのって、それか?」

「多分。後で付け直そうと思っていました」

ズボンのほつれやボタン付けやら、消耗の激しいこの家の衣類の修繕は主婦のチチが行っているのが通常だが、まだ子供なのに悟飯はなるべく母の負担を減らそうと、自分の衣類の修繕は自ら進んで行う努力をしていた。

「どこに行ったのかな・・・」

悟飯は身を屈めてボタンの在りかを視認する。
奥行が深いその家具の隙間は、子供の短い腕では奥まで届かず、大人の太い腕では肘の先くらいまでし差し込めそうになかった。
ならばと家具を退けるくらい、力の強いこの親子には造作もなかったが、それには家具の上に乗る配線の複雑そうな家電製品が移動を拒絶していた。

「あ!あった!」

短く歓喜の声を上げて、悟飯は床に這いつくばる。
その尻が、見守る悟空の前で高々と持ち上げられた。

(ご、悟飯っ!!)

息子のあまりに艶かしい姿に、悟空は思わずのけ反ってしまう。

(い、一体いつの間にあんな大胆なポーズを覚えたんだ?)

「ん、もうちょっと・・・」

手が届きそうで届かない距離に、悟飯は更に深くボタンを追い掛けようと懸命に腕を伸ばす。
その行為に比例して高さを増す小振りだが形の良い尻に、悟空の眼が釘付けになった。

(さ、誘ってんのか)

(もしかして、いや、もしかしなくても、オ、オラを誘ってんのか!?)

悟空は妄想する。

―ああ、あの山の中心にオラのピ――(自主規制)をピ――して、更にあんなことやこんなことをピ――。

自分の中の妄想に駆り立てられるように、悟空はフラフラと悟飯へと近付いて行く。
と、途端。

「取れた!!良かった!お父さん取れましたよ、ホラ!」

喜々として身を起こして振り返った悟飯と目が合った。

「へっ!?」

肩透かしを喰らって拍子抜けした悟空は股間を押さえてその場に座り込んでしまう。

「?どうしたんですか、お父さん?」

「は・・・はは・・・は」

(くー、まだ子供の悟飯がオラを誘ってくれる、わけ、ねぇよな、やっぱり)





その日、悟空は一人、悶々とした夜を過ごしたとか過ごさなかったとか。





END

ここまでお読み戴きありがとうございました。
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