【悟飯の後悔①】
【悟飯の後悔①】
挙句の果てには、学者を目指したことですら父の期待に背いていたのではないかとまで思い悩み始めた頃、あるひとつの疑念が次第に悟飯の脳と心を蝕むようになっていった。
父は今頃、あの少年とただならぬ関係になっているのではないか、と。
やがて、あの日の父の顔と少年の姿を思い出す度に、悟飯は灼けるような嫉妬に全身の震えが止まらなくなった。
思えば悟飯も、あの少年と同じ年頃で初めて父に抱かれたのだ、あの少年が父の性愛対象になったところで何ら不思議はない。
父は修行が目的だとはっきり言い置いていたが、本当にそれだけで済んでいるのだろうか。
もしかしたら、精神と時の部屋で過ごしたあの日々のように。
と、精神と時の部屋での己と少年を重ね合わせて、眠れぬ夜を過ごしたこともあった。
変声期を迎える前のトーンの高い声、筋肉の乗らない細い四肢、未発達の体、感情のコントロールを知らない純粋無垢な精神。
あの年頃の少年を好む者の眼に、あの少年はどれだけ魅惑的に映ることだろう。
ひょっとすると、父も同じなのではないか。
父は、ただの少年好きだったのではないのか。
それに比べて、今の自分はどうだ。
変声期をとっくに過ぎた低い声、父と変わらない背格好、眼鏡をかけた青年の顔立ち、無邪気さを失った大人の男・・・。
比べれば比べるほど、あの少年と今の己とのあまりの違いに、悟飯は己で己の身を引き裂いてしまいたいくらいの憎悪に苦しんだ―
ここまでお読み戴きありがとうございました。
挙句の果てには、学者を目指したことですら父の期待に背いていたのではないかとまで思い悩み始めた頃、あるひとつの疑念が次第に悟飯の脳と心を蝕むようになっていった。
父は今頃、あの少年とただならぬ関係になっているのではないか、と。
やがて、あの日の父の顔と少年の姿を思い出す度に、悟飯は灼けるような嫉妬に全身の震えが止まらなくなった。
思えば悟飯も、あの少年と同じ年頃で初めて父に抱かれたのだ、あの少年が父の性愛対象になったところで何ら不思議はない。
父は修行が目的だとはっきり言い置いていたが、本当にそれだけで済んでいるのだろうか。
もしかしたら、精神と時の部屋で過ごしたあの日々のように。
と、精神と時の部屋での己と少年を重ね合わせて、眠れぬ夜を過ごしたこともあった。
変声期を迎える前のトーンの高い声、筋肉の乗らない細い四肢、未発達の体、感情のコントロールを知らない純粋無垢な精神。
あの年頃の少年を好む者の眼に、あの少年はどれだけ魅惑的に映ることだろう。
ひょっとすると、父も同じなのではないか。
父は、ただの少年好きだったのではないのか。
それに比べて、今の自分はどうだ。
変声期をとっくに過ぎた低い声、父と変わらない背格好、眼鏡をかけた青年の顔立ち、無邪気さを失った大人の男・・・。
比べれば比べるほど、あの少年と今の己とのあまりの違いに、悟飯は己で己の身を引き裂いてしまいたいくらいの憎悪に苦しんだ―
ここまでお読み戴きありがとうございました。