【姫始め】

【姫初め】



眠っている間に新しい年を迎えたばかりの深夜、天日干しされた布団と毛布によって暖まったはずの足先が冬の夜の冷気に晒されて、悟飯の意識が半分だけ目覚めた。
思考を巡らせるまでもなく、寝返りを打った拍子に掛け布団がめくれたのだろうと、瞼を閉じたまま足をもぞもぞと動かす。
こんなことは一晩に一度はあることで、起き上がらずとも足先だけ動かせば、ひょいとめくれた布団は直せるはずだった。
ところが、元に戻ると思っていた布団は、再び足を覆ってくれるどころか更に上へとめくり上がってくる。
頭の半分が眠ったままの悟飯は、咄嗟に悟天と同室だった頃を思い出した。
あの当時の悟天は、兄の寝入りばなを見計らって、よくこういう類いの悪戯をしたものだ。
だが当の悟天は、父が生き返ってから後は両親と寝室を共にしている。
となると、こんなことをする人間は一人しかいない!
急激に脳が目覚めて思考がクリアになった悟飯は、熟睡している悟飯の布団に潜り込もうと不格好に尻を持ち上げて上半身を布団の中に突っ込んだままの、悟飯の安眠の妨害をした犯人に非難の声を投げた。

「・・・何をしているんですか、お父さん・・・?」

悟飯の声を聞いた犯人はギクリと体を強張らせ、一寸の間を置いてから観念したようにスルスルと布団から上半身を滑り出させた。

「あ~・・・いや、あれだなぁ・・・その・・・これから新年の挨拶にだなぁ・・・」

「新年の挨拶?・・・初詣ですか?」

そういえば初詣は何時に行くのかの議題が、夕食時の話題に上っていた。
何事にもこだわらない性格の片親は『別に何時でもいいじゃねぇか』と言い、教育熱心のもう片方の親は『真夜中に小さい悟天ちゃんを寒空に連れ出して風邪を引かせる訳にはいかねぇだ』と自分の意見を述べた。
ところが、大人より多くの睡眠を必要とする子供の悟天が『お正月くらい夜更かしをして外出してみたい』と駄々をこねだして、年越しは大荒れに荒れたのだ。
結局、悟飯がむくれる悟天を宥めすかしてようやくその場は治まった。

「初詣は昼間行くことになったはずですよね?・・・まさか、今から出発するんですか?」

「んー・・・いや・・・そうじゃなくてよぉ・・・そのぉ・・・悟飯にだなぁ、新年の挨拶しておこうと思ってなぁ・・・」

「そうだったんですか。明けましておめでとうございます」

「ああ、おめっとうさん♪」

「・・・って、お父さん、何も寝ている時でなくっても、新年の挨拶なら、起きてからでも出来るじゃないですか」

こだわらない性格であろうと、せめて時間くらいは気にして欲しいものだと悟飯は思った。
だが忍び込んだ本人は悪びれもせずいきなり悟飯から布団を引きはがすと、日照量の少ない冬の貴重な日光を浴びたせっかくの就寝道具を、惜しみもなく冷えた床へと与えてしまった。
更には悟飯のパジャマのズボンに手をかけて、強引に脱がしに掛かろうとする。

「なっ・・・!何をするんですかっ!」

「だ~か~ら、日頃お世話になってる悟飯に挨拶だって言ったろ。みんなが起きてからじゃ、出来ねぇじゃねぇか」

「どどどどどどこに挨拶する気ですかっっ!?」

「どこって・・・決まってるだろ。いつもオラを気持ち良くしてくれるトコにだよ」

気持ち良く眠っているところを起こされた目的は初詣のお誘いではなく、Hな挨拶が狙いだと判明して、真っ赤になりながらも悟飯は呆れ返る。
恥ずかしさを理由に『嫌です』と拒絶を続ける悟飯。
だが、悟空に何度も頼み込まれたとあっては、最終的には折れざるを得なくなってしまった。
悟飯の了承を得た悟空の行動は、早かった。
悟飯からあっという間にパジャマのズボンを奪うと、恥ずかしさに縮こまったナニには目もくれず、その奥へと唇を寄せる


「去年はいっぺぇ世話になったな!今年はもっといっぺぇいっぺぇ世話になっから、よろしくな♪」

一方的に宣言すると、悟空への奉仕の為に本来の機能以外で酷使され続けた器官を、悟空は丁寧に舌で愛撫し始める。
悟空に見られないように両腕で隠された悟飯の頬が、羞恥とは違った熱で火照ってゆく。
こうなると、行き着くところまで行くのも時間の問題だった。
案の定、先の行為に進む許可を悟空に求められた悟飯の脳裏に、この時期特有の5文字の単語が浮かび上がった。





END

ここまでお読み戴きありがとうございました。
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