【ふたりのサンタクロース】

【ふたりのサンタクロース】



『いいか?悟飯ちゃんに気付かれないように、枕元にそっと置いてくるだぞ』

寝ているところを無理矢理たたき起こされ、寝ぼけ眼の状態で着替えさせられ、重い袋を持たされて、熟睡中の息子の部屋に侵入させられた父親。
身に着けた衣装はサンタクロースで、妻に持たされた袋の中身は・・・この重さと形状からして、またもや難しい問題集やら偉人伝やら、何かの書物に違いない。
年に一度のクリスマスなのに、年に何度も購入する勉強道具なんて、悟飯が本心から欲しがっているのだろうか?
せっかくのプレゼントなら、もう少し子供らしいものがー

なんてうつらうつらした頭でもやもやしながら息子のベッドに近寄ると、規則正しい寝息を立てる悟飯を覗き込む。
その瞼が完全に閉じているのを確認した時、部屋の窓がカタカタと鳴った。
風かと思ったが、揺れた窓が何者かの手によって開かれて、咄嗟に身構える。

(泥棒か?)

愛する息子が寝ている部屋から侵入する泥棒など、絶対に許すまじ!
ところが窓から侵入して来たのは見覚えのある赤い帽子で、悟空は安心感から緊張を解いた。

「何だ、チチのヤツ、サンタなんか居ねぇなんて言ってたけど、ちゃんと居るじゃねぇか」

チチに教えてやんねぇとな、と思った矢先に、サンタクロースの正体を知って驚いた。

「ピ・・・ピッコロ!?」

その声に緑色のでかいサンタクロースは硬直し、悟空とピッコロは予想もしていなかったまさかのバッティングに、あんぐりと口を開けたまま見つめ合う。
暫く時が経ってから、ハッと我に帰ったピッコロは、悟飯には内緒だぞ、の一言を残して真っ赤な顔で退散した。
あまりの出来事に呆然とした悟空だが、息子の小さなくしゃみに、開け放しの窓を閉め、幼い息子の肩に布団を掛け直してやった。
今年は生涯で忘れられないクリスマスになったな、でも悟飯には内緒にしておこう。
ピッコロが運んで来た袋の中身も、悟飯が開けるまで見ないでおいてやろう。
何がピッコロをあんな風に変えてしまったのか、悟空は忍び笑いを漏らすと、気持ち良さそうに眠る息子の幼い頬に、そっとキスのプレゼントを贈った。






その数十分後に、一度は
悟飯の部屋に忍び損ねたピッコロが、自分と同じ行動を取るなどとは夢にも思わずにー





END

ここまでお読み戴きありがとうございました。
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