【初めてのチュウ♪】

【初めてのチュウ♪】


初めてのキスは悟飯の方からしてくれた。


夕方になり、悟飯の帰宅に合わせて家に帰ると丁度チチと悟天が出掛けていて居ないので、ここぞとばかりに冗談半分に悟飯にキスをせがんだ。
悟飯はちょっとだけ狼狽えて、でもすぐに頬を染めて、リビングのソファに座るオラの肩に手をかけて顔を近付けてきた。
ちゅっ、と、いつもおでこにしてくれるように軽く唇を押しあて、すぐに離れようとする。
オラは逃げてしまわないようにと、素早く悟飯の細い腰を掴んだ。
今後はオラから、角度を変えて何度もキスを繰り返す。
いつものようにおでこにチュッってしてくれるものだとばかり思っていたから、すんげぇビックリした。
でも、この瞬間をずっと待っていた。
生き返ってからは悟飯とのじゃれ合いがグンと減り、オラが一方的にセクハラまがいのスキンシップでコミュニケーションを取っている。
思い起こせば、悟飯は子供の頃から自らスキンシップを求めてくる子ではなかった。
だから、こんなキスぐれぇのことでも、こっちからせがみでもしなければまずしてくれない。
キスぐれぇ、どうってことねぇのにな。
おかげで、ここまで辿りつくのにえらく時間がかかっちまった。
そろそろ潮時かな…と思っていたら、思いがけず悟飯の方からしてくれたんだ、すぐに終わらせてしまったら勿体ない。
何度も唇の感触を味わっては、軽く吸う。
お互いの息が弾んで体がカーッと熱くなってきて、これ以上は理性が限界を越えちまうかもって云うところで、突然悟飯の手首の通信機が鳴った。
オラの腕から逃れて呼吸を整えてから、悟飯は通信機のボタンを押す。

「もしもし、悟飯君!?」

スピーカーの向こうから、若い娘の甲高い声が聞こえてくる。

「サタンシティでまた強盗が起こったの。今度はコンビニ強盗よ。犯人は人質をとってお店に立て篭ってるわ。グレートサイヤマンの出動よ!場所…」

正義のヒーローに戻り、相棒と打ち合わせをする真剣な顔。
Hの時は、どんな表情するんかな。

「わかりました、すぐ行きます!」

あの真面目くさった声が、Hだとどう変化するんかな。

「すみません、お父さん。事件が起きたので、これからちょっとサタンシティまで行って来ます」

焦るつもりはなかったけど、もう限界かも知れねぇ。

「おう!行って来い!」

オラが笑って肩を叩くと、少しだけはにかんでグレートサイヤマンへと変身する悟飯。
そのヘルメットの下の顔が、山を染める今日の夕焼けくらい赤かった。





END

ここまでお読み戴きありがとうございました。
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