【鈍感】

【鈍感】



『好きです』

「駄目だな、これじゃあ」

俺の気持ちを伝えるには、“好き”って言葉じゃ足りない。

『愛してます』

「今度は重過ぎ」

初めての告白でいきなり“愛してます”はないだろう。

『ずっと好きでした』

「“でした”って、過去形だよな」

現在進行形の恋に、過去形は使いたくない。

「ああっ、もうっ!!どう言ったらイイんだっっ!!」

鈍感なあの人には、紛れもない言葉でないと、きっと伝わらない。

「よう、トランクス」

「!!!・・・ご、ご、悟飯さんっっ!!!」

「さっきから何ブツブツ独り言云ってるの?悩み事?」

「ど、ど、どうしてここにっ・・・!?」

「ブルマさんに頼まれた物を持って来たんだ」

「そうですか。・・・悟飯さん、その本・・・」

「ああ、これ?今流行りの恋愛小説だよ」

「・・・悟飯さんもこういうの読むんですか?」

「本なら何でも読むからね。特にこの本は面白くて、世間で流行ってる理由が良くわかるよ」

「俺もっ!!俺も読みました!!」

そもそもこの本が、長年の想いを告白しようと思ったきっかけだったりなんかして。

「読みやすいから、作品の世界に入りやすいよね。好きな人が近すぎて、なかなか告白できないで主人公が悩むところなんか、共感できちゃうし」

「そうそう、俺も同感ですっ」

俺も、その主人公と同じだから。

「クスッ。・・・トランクスって、賢いようでも意外に鈍感なんだね」

「・・・?」

・・・それって、どういう意味・・・?

「まあ、いいや。じゃあ、またね」

まさか、鈍感の代名詞みたいな悟飯さんに、鈍感呼ばわりされるとは夢にも思わなかったけど・・・?

まさか・・・でも、まさか、ね・・・?

「待って下さい、悟飯さんっっ!!」


ヤバイッ、惚れ直したっ!



END

ここまでお読み戴きありがとうございました。
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