《A quided haert /導く心-後編-》



” ……っ…おっ……っ…お、ね……が…っ……ふっ…っ…。 ”


嗚咽で、言いたい事が言えずにいる その姿を見る悟空さんの顔が、辛そうに歪みました。

?どうしたと言うのです?今、悟飯さんの心を聞いたでしょう?
なぜ、そんな顔をするのです?


” …悟飯、もう、いい。おめぇが辛ぇんなら、もう、何も言うな。おめぇが、オラを、父親として、好きだって言ってくれただけで…オラ… ”


「!?」


信じられますか?!ここに来て、悟空さんは【親子の愛情】だと、バカな事を言ったのです!

「悟空さん!バカ!!どうしてそんな事を!!!」

ここに居る訳ではないのに、悟空さんに掴みかかろうとしました。
それは、悟飯さんも同じだったようです。

悟飯さんは、握り締めた掌を自分の胸に打ち付け、命の限り、想いをぶつけたのです。


” !違っ!…僕…もっ…今、分かったっ……ん…です!
僕の、『想い』…は、お父さんの『想い』…と、同じ、なんだっ…て。
…父親…と、して、じゃ、…な…く、…僕、は、あなた…を、愛して、いる…んです! ”

” !………。 ”


「!」


” っ…だ、からっ…僕の、為…と、言うのな…ら…
お願い、です……僕と、あなたは、同…じ、気持ち…だって、言って……。

僕に、触れて、…抱き…締め、て… 。”


” …悟飯、…もう一度、言ってくれ。っ…オラを、愛してる…って。 ”


” …愛してる…。お、父…さんっ…愛して…ます。 ”


” !…悟飯…悟飯!っ悟飯!!


…オラもだ!オラもっ…愛してっぞ!! ”


” お父、さん…っ…お父さん! ”


” 悟飯…本当に、良いんだな…。オラ、ぜってぇ離さねぇぞ!ぜってぇ、誰にも、渡さねぇかんな! ”






「…おまえ、泣いとるのか。」

いつの間にか、ご先祖様が傍に来ていました。

「だって…だって、ご先祖様…。」

お2人と一緒に、私も泣いていました。
地面についた両の手の甲に、涙が零れ落ちていきます。
恥ずかしげも無く、鼻水も垂らしながら。

「こんなに強いお2人なのに…宇宙を救った人達なのに…どうして、普通の人が普通にやっている事を、こんなに遠回りしてしまわれるのでしょう。」

「ま、そんなもんじゃろう。【天は二物を与えず】じゃ。それにしても、メロドラマのようじゃな。クサくてクサくて見ちゃおれんわい。」

「ご先祖様!」

「ほっほっほっ、冗談じゃよ。良かったではないか。あやつらには、心身共に健康であってもらわんと。これから先、また力になってもらわんといかん事があるやもしれんからのう。これでおまえも、日々の勤めに精が出せるっちゅうもんじゃ。」

私は、涙と鼻水を拭いて、返事をしました。

「はい!明日から、頑張ります!」


「今からやらんかい!あやつらに負けんよう、精進せい!」

「は、はい!」

あんな事を言っていますが、ご先祖様も一安心されているようです。
ああ見えて、情に脆い一面もおありですから。

ふと、私の心に『オラの悟飯』…という言葉が浮かびました。
お2人を見ようと、振り返ろうとした時、ご先祖様に一喝されました。

「これ!それ以上見るのは、ヤボっちゅうもんじゃ。それとも、おまえはそういう趣味があるのかのう?」

ご先祖様が変な目で見ています。

「わっ私はそんな!」

「ほっほっほっ。」

あたふたしている私を見て、面白がっているようです。

全く…神眼でピーーーやピーーーを見れると仰ったご先祖様より、私は至ってまともですよ。

「なんか言ったか?」

「いえ、何も?」

ふと、こんな考えが浮かんできました。

大界王神様、南の界王神は、魔神ブウに吸収され…北の界王神 西の界王神は、魔神ブウに殺され、5人だった界王神も、私ひとりとなって早数千年…

封印から解かれたご先祖様は、悟空さんに命を授け、一度は死者の身となり、今は、ナメック星のポルンガのお陰で蘇り、大界王神として、日々、こうして私にご教授して下さる。

この宇宙に、界王神は2人となりましたが、ご先祖様はご高齢の身。

精進しろと言われましても、この広い宇宙を、私とご先祖様とで掌握するのは限界があると思います…。

そろそろ、新しい界王神を迎え入れた方が…。



ゼットソードを抜かれた時から思っていましたが…。

内に秘めた力強く美しいエナジー。
あなたの その 潜在能力は 野蛮な物ではなく、とても純粋で美しい物です。
そして 何より、聡明で、勤勉であられる…。

悟飯さんは、界王神として、足るべきお人だと思います。
まだまだお若いですが、この界王神界で界王神見習いとして修行を積めば、きっと立派な界王神になられるはず。

…もし、そうなったら…悟空さんも一緒に おいでになるのでしょうか…。

あの時のように、この地で、お2人が笑顔を交わす姿を 見ることができるかもしれません。

…そうなれば いいのに…。

「これ!つまらん事考えとらんで、アレをしまってこんか!大事な本が出しっぱなしになっとるぞ!」

「あっ!申し訳ありません!」


いつものテーブルの上に、今日、開いたままの【万物の書】が主の帰りを待っています。


「全く…少しは界王神としての威厳を持たんか。」



良いんです。

私は私。

私らしく。




【万物の書】を通して、私は地球を見ました。

この、青く美しい奇跡の星に、悟空さんと悟飯さんが居る…。

私は地球を見て、幸せな気持ちになりました。


” 悟空さん、悟飯さん、良かったですね…どうか、末永く…お幸せに… 。”



ー A guiding heart ー    終






すると、悟空さんの声が鮮明に響いてきました…。


” なぁ…聞こえるか…悟飯。

何があっても、オラは、おめぇを護る。

おめぇを、ひとりにはさせねぇ。

ぜってぇだ。

死ぬまで、ずっと一緒だ。

いや…死んでもだ…。



落ち着いたら、おめぇも来い。

オラ達に、おめぇの笑った顔を見せてくれ。

…待ってっぞ…。


なぁ…聞こえるか?悟飯…。

聞こえたら、返事してくれ…。


…愛してる…悟飯。”





……………。

…なんと…聞いているこちらが 紅くなってしてしまう程の愛の言葉です。

何だか、お2人だけの秘密を、盗み聞きしてしまったようで(今まで散々しましたが…。)申し訳なくなり、こっちに聞こえている事を伝えました。



「…あの~…悟空さん…こっちに、だだ洩れなんですけど…。」


” !いぃッ!? ”


あの悟空さんでも、聞かれていた事が恥ずかしかったようです。
照れ笑いしていました。
その様子に、私も笑みが零れました。

私は悟飯さんの声に、耳を傾けてみました。



「…………。悟空さん?悟飯さんが返事をされていますよ。」


” 本当か !"


「 ” …うん…

……うん…。

…ありがとう…

…僕も…愛してる…お父さん…。 ”

だそうです。」


” …………。 ”


悟空さんが、幸せそうな顔をされて、笑っているのが分かりました。

「良かったですね。悟空さん。」


” うん…ありがとう…界王神様。…なぁ…今度、悟飯連れてそっち行っていいかな? ”


「勿論です!その時を楽しみにしていますよ!」


” あ、でも、いくら界王神様の頼みでも、悟飯はぜってー渡さねぇかんな。 "


「!?」

” じゃ、界王神様、じいちゃんの界王神様!ありがとうございました!またな!バイ!! ”


それからプッツリ、悟空さんとの交信は途絶えました。

「ほっほっ!一杯食わされたのう。」

「どうして、悟空さんは…。」

私が思っていた事を知っているのでしょう?

「ま、ここでの修行の成果じゃろうのう。」

「えぇっ!」

私は肝をつぶしました。
あんな短期間で、一介の人間がそんな技を…。
私の心を読んだと?界王の神である、この界王神の心を…。

「こりゃぁ…悟空の方が、界王神になりえる可能性が……
…イヤ、悟飯がおらんとダメじゃろな。」

「!そうですね!あははっ!」

ご先祖様の言い回しが、なぜだか可笑しくて、私は笑ってしまいました。

こんなに清々しい気持ちで笑ったのって…いつぶりでしょう…?
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