《A quided haert /導く心-前編-》
「そんなっ!」
私は頭を抱えました。
お2人が不憫でなりません。
地球の習わしによって、真の心を表に出せないのなら、別の星に連れて行って差し上げたい…とまで思いました。
「まぁ、そう悲観するでない。あやつらの事じゃ、あやつらで道を模索し、前に進んで行くじゃろう。」
「…はい。」
そう信じたい。
その道を、出来ればお2人で、一緒に歩んで欲しい…。
ご先祖様の言葉を信じ、そう願うしかありませんでした。
私は なぜ、このお2人に、これほど執心するのでしょう?
バビディや魔神ブウ を倒す為に、お2人と行動を共にした、あの短い時間の中で、私は、ここに居るだけでは知り得なかった物を、たくさん見、たくさん知る事ができました。
お2人が居なければ 見れなかった物も、見る事ができました。
お2人の、強い繋がりも 見る事ができました……。
私は界王神です。
界王の神なのです。
しかし、神と言えども、ひとりでは 非力です。
他の者が在ればこそ、神としての力も強くなる。
悟空さん、悟飯さんを見て、改めて それに 気付かされました。
神とて、ひとりでは生きて行けないのです。
自他 共にある事の大切さ…
それを知るお2人だからこそ、強い絆で結ばれている その姿に、私は 美しさを見たのです。
お2人の この本質は、どこから生まれたのか。
私は気になり、お2人の軌跡を見させて頂きました。
悟空さんのご幼少から 今に至るまでを…。
見て、納得しました。
人に、恵まれたのですね。
そして 悟飯さんが生まれ、悟飯さんも また その中で成長された。
幸せばかりではない、辛い事もたくさんあった…。
それを乗り越えられたのは、他でもない 皆さんが居たから。
ひとりでは 成し遂げられなかった。
人は 誰かに、助けてもらって、生きているんだ…と。
そう、物語っていました。
悟空さんはサイヤ人であり、元々、闘う事に関しては、何も疑問はなかったようです。
それは、谷底に落ち、頭を打って サイヤ人本来の気性をなくしてしまっても、残っていた本質でした。
まだまだ、赤子と言ってもいい 幼き頃に、地球へ来、そこで 、育ての親に当たる 孫 悟飯さんに拾われ、厳しく、しかし 深い愛情を受けながら お育ちになった。
孫 悟飯さんは 亀仙流の使い手だった事もあり、悟空さんの素質を見抜いてか、躾の一貫としてか、武道を教えられていたのです。
そうして、悟空さんの歩むべき道が決まったのですね。
孫 悟飯さんとの出逢いがなければ、今の悟空さんは存在しなかった。
逢うべくして逢った…そう 断言できる程、必然的な出逢いだったのです。
そんな、偉大な 孫 悟飯さんの名前を授かった 悟飯さんが、健やかにお育ちにならないはずがありません。
悟飯さんもまた、強く優しさ溢れる お父上の悟空さん、そして 厳しくも 慈愛に満ちた お母上が居たからこそ、今の悟飯さんが在るのです。
ですが…悟空さんの子として生まれてきたばかりに、闘いと言う名の宿命に 縛られる事になったのです。
サイヤ人である悟空さんとは違い、地球人との混血である悟飯さんは 闘いを好まなかった。
しかし、運命とは意地悪なもので…
サイヤ人の血と地球人の血は 非常に相性が良く、混血で生まれた悟飯さんは 純粋のサイヤ人よりも、戦闘に対する潜在能力が遥かに優れていました。
それ故に、ご自身が望まなくとも、幼き頃より、闘いに身を投じなければならなかった。
地球人の血も、色濃く残す 悟飯さんは、闘いたくない…という思いが、心の奥に ずっと引っかかっていました。
だからなのか、悟飯さんの力は、普段は 潜在意識の奥深く眠って、表に出る事はなかったのです。
もし、悟空さんに、悟飯さんのような潜在能力があったとしたら………破壊神のような力を得るのでは……そう思うと、恐ろしさを覚えます。
それだけ、悟飯さんの潜在能力は計り知れないのです。
私達が、地球のタブレットを持っていても、使いこなせないのと同じで、どんなに凄い物を持っていたとしても、本人にとって必要のない物だとしたら、その物を 最大限に生かしきれないのは至極当然の事。
それが【物】だとしたら、必要か否か、自分で決める事ができます。
しかし、悟飯さんのその力は 持って生まれた物。
ご自身の意志とは関係なしに、初めから持っていた物。
それは、悟飯さんには、悟飯さんの使命がある…と言う事を、暗に 物語っているようです。
宿命を背負い、運命と対峙し、使命を全うしている…
悟空さんも また、そうやって生きておられるのです。
きっと 今まで 悟飯さんは、葛藤しながら闘ってこられたのでしょう。
でも、悟空さんの背中を見て、学んだ事もあるはずです。
聡明な悟飯さんですから、気付かないはずがありません。
悟空さんが、何の為に闘っているのかを…。
しかしながら…普通の人間なら、耐え難い事を、ご幼少の頃から経験してきた悟飯さん…。
生まれてから まだ十数年と言う 短い時の中で、どれだけの試練に耐えてきたのでしょう。
どれだけ 辛い思いをしてきたのでしょう。
…悟飯さん、あなたには幸せになって頂きたい。
人一倍、多大な苦労をされてきたあなたには、幸せになる権利があるのですよ…。
頑なに、心を閉ざさないで…
ご自分の想いを殺さないで……。
悟空さんの為に…そして 悟飯さん、あなた自身の為に…。
お2人の軌跡を見て、お2人の事が、分かった気がします。
同じ血が流れているだけに、本質は同じでも、全く違うのですね。
それが 当然なのですが…。
親子であっても、それぞれ 個性を持ち、自立していく事は、至極当然です。
ですが…お2人には、少し 違う物を感じてしまいます。
何と言えばいいのか…言葉では表現し難い…。
強いて言うならば… ” 親子であり、親子ではない ” …と。
何か、不思議な物を感じるのです。
ただ単に、私が今まで 見たことのないタイプの人間だったから、そんな風に感じてしまうのかもしれませんが…。
確かな事は…
お互い、自分に無い物に惹かれ…
求め合っていると言う事……。
悟空さんは 既に お気付きです。
悟飯さん…早く あなたも……。
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