《天国からのメッセージ》
どこまでも続く広く碧い空。ふわふわとした、わたがしのような雲が空一面に散らばる。澄んだ空気が悟飯の頬を霞める。この平和な日々は空高く昇って逝った最強の星が残した世界。
あなたは今どうしてますか?
「悟飯ちゃーん、お昼ごはんにするべ。こっちさ来てけろ」
「はい、今行きます」
悟飯は呼ばれてチチの傍まで掛け寄った。天気もいいので今日は外でピクニック。悟飯がまだ少年の頃、一度だけ悟空と一緒にチチの作ったお弁当を食べた記憶がある。この時はまだ悟天という家族は居なかった。悟天が産まれた時、悟飯は黒い目を大きく拡げて驚いた。悟空とそっくりだったからだ。チチや悟飯が寂しくないように授けてくれたんだと思う。
「お母さんはお父さんが居なくて平気?」
「そりゃあ寂しいだよ。だども、悟飯や悟天が居てくれるべ。それにな、悟空さは今もおら達の傍にいるでねぇか」
「そうですね。こんなに沢山食べ切れますかね」
「そっだらこと、悟空さなら丸のみだべ」
チチ、悟飯、悟天、そして悟空の分までお弁当は用意されていた。時は流れても家族の温もりは残っている。それだけ悟空は大きな存在だった。
『オラはおめぇが好きだ。悟飯がもう少し大きくなったら、オラはおめぇを全部貰う』
悟空が悟飯にだけ言い残した言葉。そして額にキスを落とされた。この時は悟空が何を伝えたかったのか、まったく分からなかったけど、今ならその意味が理解出来る。
悟飯も悟空に伝えたい言葉が次々と溢れ出す。その想いが涙となって頬を流れた。
「悟飯ちゃん、どしたべ?お腹でも痛くしただか?」
「お兄ちゃん、大丈夫?」
楽しく会話をしていた筈が、気が付いたら涙がお弁当を濡らしていた。チチも悟天も心配して見ている。
お兄ちゃんだから悟空の分まで僕がしっかりしてなきゃ、お母さんだって辛いのに…哀しんでばかりでは駄目だな、僕。
還って来て、僕を攫って欲しい。ゴツくて太く大きな腕の中で抱きしめて欲しい。想いは尽きない。失って初めて、こんなにも悟空を好きになっていることを知った。
「だ、大丈夫です。心配させてすみません」
「少し昼寝でもするべか?」
「え?で、でも…」
「たまにはそうゆう息抜きも必要だ。悟天はすっかり寝ちまっただよ」
さっきまで悟飯の様子に悟天なりに不安でオロオロしていたのに、いつの間にか背中を丸くして小さく寝息を立てていた。その隣でチチも眠りにつく。お母さんは変わった。『勉強が優先だ!』と厳しく云われていた頃が懐かしく思える。
悟飯も一眠りしかけた時だった。悟空の優しい穏やかな声が悟飯の頭の中にふんわりと入り込んできた。
『悟飯、オラもうちっとしたらそっちに行けんだ。だからよ、オラが還るまで待っててくれ』
『お父さん…はい、待ってます。僕ずっとずっと…。還って来たら真っ先に伝えたいことがあるんです』
『あぁ、オラもだ』
短い会話は終わった。悟飯の空想とは想えない、はっきりとした悟空の言葉。なんとなく悟飯の傍まで来ていた気がした。姿は見えなくとも気持ちは重なっている。
悟空から悟飯へ向けた天国からのメッセージ。
それから数日後、悟空がこの世に一日だけ還ってくるという知らせが、悟飯達に届いた。悟飯は胸を弾ませてその日が訪れるのを喜んだ。
-END-
家族愛に夫婦愛、兄弟やら親子愛やら、もういろんな愛情に溢れていて、素晴らしく素敵な小説です。
家族の絆の強い孫家らしさが、良く伝わって参ります。
悟空さんの『悟飯がもう少し大きくなったら、オラはおめぇを全部貰う』の台詞は、私の心を捕らえて離しません。
悟飯ちゃんがもう少し大きくなるまで待っている悟空さんは目茶苦茶男らしくて、胸が痺れるくらいカッコイイです!!!悟飯ちゃんの成長を待たずに命を落としてしまった悟空さんに、悟飯ちゃんの気持ちを聞かせてあげたい、と切実に思います。
『お父さんに伝えたいこと』を悟飯ちゃんの口から聞いた悟空さんの喜ぶ顔が、目に浮かびます。
でも、きっと、あの時悟空さんを失っていなかったら、悟空さんが傍に居たままだったなら、悟飯ちゃんは自分の気持ちに気付かなかったのかも知れません。
その辺りの複雑さも小説に深みを与えていて、いろいろなものがギュギュギュウッと濃縮されてい
るように感じました。
心暖まる、愛と癒しの詰まった素晴らしく素敵な小説をありがとうございました!
あなたは今どうしてますか?
「悟飯ちゃーん、お昼ごはんにするべ。こっちさ来てけろ」
「はい、今行きます」
悟飯は呼ばれてチチの傍まで掛け寄った。天気もいいので今日は外でピクニック。悟飯がまだ少年の頃、一度だけ悟空と一緒にチチの作ったお弁当を食べた記憶がある。この時はまだ悟天という家族は居なかった。悟天が産まれた時、悟飯は黒い目を大きく拡げて驚いた。悟空とそっくりだったからだ。チチや悟飯が寂しくないように授けてくれたんだと思う。
「お母さんはお父さんが居なくて平気?」
「そりゃあ寂しいだよ。だども、悟飯や悟天が居てくれるべ。それにな、悟空さは今もおら達の傍にいるでねぇか」
「そうですね。こんなに沢山食べ切れますかね」
「そっだらこと、悟空さなら丸のみだべ」
チチ、悟飯、悟天、そして悟空の分までお弁当は用意されていた。時は流れても家族の温もりは残っている。それだけ悟空は大きな存在だった。
『オラはおめぇが好きだ。悟飯がもう少し大きくなったら、オラはおめぇを全部貰う』
悟空が悟飯にだけ言い残した言葉。そして額にキスを落とされた。この時は悟空が何を伝えたかったのか、まったく分からなかったけど、今ならその意味が理解出来る。
悟飯も悟空に伝えたい言葉が次々と溢れ出す。その想いが涙となって頬を流れた。
「悟飯ちゃん、どしたべ?お腹でも痛くしただか?」
「お兄ちゃん、大丈夫?」
楽しく会話をしていた筈が、気が付いたら涙がお弁当を濡らしていた。チチも悟天も心配して見ている。
お兄ちゃんだから悟空の分まで僕がしっかりしてなきゃ、お母さんだって辛いのに…哀しんでばかりでは駄目だな、僕。
還って来て、僕を攫って欲しい。ゴツくて太く大きな腕の中で抱きしめて欲しい。想いは尽きない。失って初めて、こんなにも悟空を好きになっていることを知った。
「だ、大丈夫です。心配させてすみません」
「少し昼寝でもするべか?」
「え?で、でも…」
「たまにはそうゆう息抜きも必要だ。悟天はすっかり寝ちまっただよ」
さっきまで悟飯の様子に悟天なりに不安でオロオロしていたのに、いつの間にか背中を丸くして小さく寝息を立てていた。その隣でチチも眠りにつく。お母さんは変わった。『勉強が優先だ!』と厳しく云われていた頃が懐かしく思える。
悟飯も一眠りしかけた時だった。悟空の優しい穏やかな声が悟飯の頭の中にふんわりと入り込んできた。
『悟飯、オラもうちっとしたらそっちに行けんだ。だからよ、オラが還るまで待っててくれ』
『お父さん…はい、待ってます。僕ずっとずっと…。還って来たら真っ先に伝えたいことがあるんです』
『あぁ、オラもだ』
短い会話は終わった。悟飯の空想とは想えない、はっきりとした悟空の言葉。なんとなく悟飯の傍まで来ていた気がした。姿は見えなくとも気持ちは重なっている。
悟空から悟飯へ向けた天国からのメッセージ。
それから数日後、悟空がこの世に一日だけ還ってくるという知らせが、悟飯達に届いた。悟飯は胸を弾ませてその日が訪れるのを喜んだ。
-END-
家族愛に夫婦愛、兄弟やら親子愛やら、もういろんな愛情に溢れていて、素晴らしく素敵な小説です。
家族の絆の強い孫家らしさが、良く伝わって参ります。
悟空さんの『悟飯がもう少し大きくなったら、オラはおめぇを全部貰う』の台詞は、私の心を捕らえて離しません。
悟飯ちゃんがもう少し大きくなるまで待っている悟空さんは目茶苦茶男らしくて、胸が痺れるくらいカッコイイです!!!悟飯ちゃんの成長を待たずに命を落としてしまった悟空さんに、悟飯ちゃんの気持ちを聞かせてあげたい、と切実に思います。
『お父さんに伝えたいこと』を悟飯ちゃんの口から聞いた悟空さんの喜ぶ顔が、目に浮かびます。
でも、きっと、あの時悟空さんを失っていなかったら、悟空さんが傍に居たままだったなら、悟飯ちゃんは自分の気持ちに気付かなかったのかも知れません。
その辺りの複雑さも小説に深みを与えていて、いろいろなものがギュギュギュウッと濃縮されてい
るように感じました。
心暖まる、愛と癒しの詰まった素晴らしく素敵な小説をありがとうございました!