《A lost heart /迷子の心-後編-》
声が聞こえる。
「あっお父さん!見て見て!これ!」
「おっどうしたんだ、それ?でっけーぬいぐるみだなぁ。」
「ゲームで取ったんだよ!」
「悟天がか?」
「…トランクス君が…。」
「ははっ。で、何でおめぇが持ってんだ?」
「トランクス君がね、あげるって!くれたの!」
「そっか!良かったな。楽しかったか?」
「うん!あのね、すごいんだよ!おかしもアイスもいっぱいあってね、どんだけ食べてもいいんだよ!ぼく、おなかいっぱいになっちゃった!
お父さんも、ぼくがあげたアイス食べた?ちゃんと兄ちゃんと半分こした?」
「あ、悪ぃ、まだ食ってねぇんだ。」
「え~せっかくあげたのに~。」
「そうだ、後で皆で分けて食うか!4人でさ。」
「いいね!」
「悟天、おめぇは今日食い過ぎだ。腹が痛くなっちまうぞ。父さんと兄ちゃんにあげたんなら、2人に食ってもらえ。また買ってくっから。」
「…はーい。あ、お父さん、兄ちゃんに 渡してくれた?」
「ああ、兄ちゃん、すげぇ喜んでたぞ!多分、兄ちゃんのテストが終わったら、悟天と一緒に、森に行くんじゃねぇかな!」
「本当!?やったぁ!お父さん、ありがと!」
「…悟天、父さんこそ、ありがとう。」
「?」
「悟空さ、済まねえな、遅くなっちまって。」
「いいんだよ。おめぇ達が楽しかったんならさ。」
「腹減っただろ?ブルマさんが気い利かせて、ここに、うめえもん、たーんと入れてくれたで、用意すっから、待っててけれな。」
「うひょー!さっすがブルマ!オラ、今日は目いっぺぇ食うぞー!!な!悟天!」
「わぁ!お父さん!くまさんが吹っ飛んじゃうよ!おろして~ははっあはは!」
「こらこら!家ん中で危ねえべ。家具が壊れちまう。」
「ははは!」
「悟空さ、何か良いことあったべ?」
「ん?」
「すげえ元気になっただな。」
「…チチ…。」
「それでこそ悟空さだ。」
「…ありがとな、チチ。オラ、皆と一緒に居られんのが一番嬉しいんだ!」
「わ!本当にどうしただ、悟空さ!飯の仕度できねえべ!」
「お父さん苦しいよぉ~。」
「はははは!」
賑やかで、楽しげな声が聞こえてくる。
早く、僕も行って、お母さんと悟天に謝りたい。そして、お礼を言いたい。
けど、こんな顔じゃ、出るに出れなくて…。
暫く部屋で、皆の幸せそうな声を聞いている事にした。
一層、お父さんの声が、華やかな花々のような色に染まっているように聞こえた。
…自分の気持ちを素直に受け入れてしまったら、濃い霧が晴れるかのように心がスッキリした。
あんなに悩んでいたのが 嘘のようだ。
…本当は、分かってたんだ…
…僕は、自分の気持ちを分かってて、ずっと、知らない振りをしていた…。
倫理観が、僕を否定していたんだ…。
でも、いつまでも、自分の気持ちに嘘をつくことはできない。
どこかに、必ず、ひずみが生じてしまう…。
お父さんが取ってきた今までの行動も、本当は薄々気付いていたんだ…。
なのに知らない振りをしていた…。
僕は、お父さんの気持ちからも、自分の気持ちからも、目を背けていたんだ…。
受け入れてしまったからには、もう、逃げる事はできない。
これから、どうなってしまうのか…先の事は分からない。
でも、お父さんと一緒なら…きっと……。
―もう何も考えたくない。
もう、色々、考えなくても良い。
もう、迷いは ない。―
今は、ただ、この幸せを躯中で感じていよう。
外は まだ 雨が降っている。
でも 僕の心は 清々しく、どこまでも 晴れ渡っていた。
- A lost heart - 終
― お父さんの声が聞こえた気がした ―
” …うん…
……うん…。
…ありがとう…
…僕も…愛してる…お父さん…。 ”
come on (悟飯ver.) / Ben Jelen
あなたと別れてから街が静かになった気がする
外を見る 過去を思い出しながら雲の先を
生きる意味って何だろうとか色々考えてみた
僕の大切な感情は過去に置き去りにされたまま
まだね、あなたの匂いとか肌の感じが僕にハッキリと残ってる
あなたはどこに行ったの?
何で行ってしまったの?
知りたい
あなたがどうすれば戻ってきてくれるかも
戻ってきてよ ねぇ 戻ってきて
あなたなしじゃ僕は自分を愛する事も出来ない
戻ってきてよ 僕達ずっと一緒だったよね
お願い 戻ってきて 戻ってきてよ お願い…
あなたが行ってしまってから 僕はずっと考え込んでる
あなたと出会う前は 孤独の意味なんて理解していなっかた
いつもの風景が 知らない国の風景みたいに感じる
友達に電話して 現実逃避
夢物語を語ってもただ虚しいだけ
あなたはどこに行ってしまったの?
どうして行ってしまったの?
知りたいよ
あなたがどうすれば帰ってきてくれるかも
帰ってきて 帰ってきてよ
あなたが居てくれないと
僕は愛なんて感じる事ができない
帰ってきてよ ねぇ、僕達ずっと一緒だったよね
お願い 帰ってきて
またキスをして そして僕の心を…
あなたは帰ってくる
あなたはきっと僕の元に 帰ってきてくれる
僕にはあなたが必要なんだ
今だって あなたとキスがしたい
僕はあなたの為に生きている
あなたの為に息をしている
あなたの為にこのおとぎ話を唄っているんだよ
戻ってきて
あなたが居ないと
僕の中にある愛を感じるなんてできない
戻ってきて
ねぇ 僕達はずっと一緒だったよね
お願い 戻ってきて 戻ってきて…
この歌は、お話の中で悟飯ちゃんが歌っていた歌です。
この歌は悟飯ちゃんの心情その物です。
”お父さん、どうして? ”
”どこに行ったの?どうして行ってしまったの?
あなたが居ないと、僕には、愛の全てを感じる事なんてできない…。
戻ってきて…お願い…戻ってきて…。”
居なくなった時もそう思ってましたが、帰ってきてからの方が、そう強く感じていたようです。
”何も変わらなくて良いから、元のお父さんのままでいて…。” とも。
悟空さんにしてみれば、『悟飯の為』と思ってしていた事が、裏目に出てしまってたんですね。
人の心理は複雑です。
確かに、長く一緒に居ると、話さなくても分かる事もありますが、全て分かる訳ではない。だから、対話って大事なんですね。
この歌が流れるタイミングなんですが、
悟飯ちゃんが悟空さんの事を 泣きながら「愛しているんです!」と告白して、悟空さんが驚いたと同時に曲が流れてくる…と言った感じです。
後は、曲がサビの部分に入った時に、良い感じのセリフの部分を読んでいたら、とっても 盛り上がります。私の中では…ですが。
~コメント~
C様から戴いたメールのコメントがあとがきのような内容でしたので、無断で申し訳ないと思いつつ、C様の思いを閲覧者様にお伝えするのに丁度良いと判断し、掲載させて戴きました。
閲覧者様方には、お楽しみ戴けたと思います。
とても本業が絵師様とは思えないほどの文章力やストーリー展開、大学入試の説明など見事な仕上がりです!
C様はいったい、何者なのでしょうか!?
2人がカップルになると知っていても、読み手側はハラハラドキドキさせられます。
もどかしくて焦れったくて、ここまできてまだすれ違うのかと、盛大に勘違いしている2人を応援しつつ身悶えました。
悟飯ちゃんの純粋な性格が伺えますし、その純粋さが却って徒となったような気も致します。
高校生らしく友人に相談する姿は青春そのもの。
青春らしい悟飯ちゃんの葛藤に、すっかり悟空さんに振り回されているのがよくわかります。
モヤモヤしてイライラして、でも、何故なのか理由がわからない悟飯ちゃん。
だから、それはっ!と、読み手側は叫びたくなってしまいます。
もう、鈍感過ぎてどうしましょう、この子。
と思っていたら、予想外にキューピットが動いてくれましたよ。
悟天、グッジョブ!
ちなみに『まるで、欠けたパーツが戻って、ギアが回りだしたような』の表現は私のお気に入りです。