Vol.4
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体育祭当日―――
純はこの日、
寝坊をしていた。
とは言っても開会式ギリギリまでには控室に滑り込むことは出来ていたので、間に合ってはいるが。
途中ですれ違った相澤に睨まれたような気がしたが、純は何も見ていないといった素振りで無視を決め込んだ。
一番最後に控室に入ってきた純に、A組の視線が集まる。
「…この空気感は私の遅刻のせいでは、なさそうだね」
ドアの前には緑谷と轟が立っており、室内の空気も少しだけピリついていた。
「重役出勤かよ。氷崎」
「焦凍、どうしたのさ。顔が怖いよ」
「お前のヘラヘラしたその振る舞いも、俺と個性が似てるっていう点も、全部腹が立つ」
「!」
到底クラスメイトに向けるとは思えない眼差しを、純に向けた。
「俺は緑谷だけじゃねぇ。お前よりも俺が強ェってこと、証明してみせる」
「…君はさ」
純は首をかしげる。
「誰と喋ってるんだい?」
「!?」
純の言葉に、轟だけでなく、クラスメイト全員が驚きの表情を露にした。
当の本人は純粋に疑問に思っているようで、轟の眉間に皺が寄ったことすら意に介していなかった。
「お前、俺の事なんて気にする間もなく自分が強いって言いてぇのか」
「ん?…ああ、いや違うよ。今のセリフは私の傲慢な意味合いで言ったわけではないよ。私の勘違いかもしれないが、私の後ろに誰かを見ているな?」
「!」
「氷崎の後ろに誰もいねーぞ」
「そういう意味じゃねーよ峰田!」
切島と峰田の会話を気にする間もなく、純は続ける。
「それは侮辱に近い行為だと思うぞ。本気で私に向き合おうとしていないからな。私を踏み台にしたいならば、するといい。そういうつもりでくるなら、私も容赦しない」
不敵な笑みを浮かべて、純は轟を挑発した。
「…ああ」
「楽しみだな、焦凍」
轟は依然余裕そうな表情の純に少しだけ苛立ちを覚えていた。
勿論理由はそれだけではない。
己の内側をまるで見透かされたような不快感。
A組に来てからまだ日が浅いというのに、自分の何を知ってるというのだ。
それが余計に苛立ちを加速させていた。
***
爆豪の大胆不敵な選手宣誓から始まり、第一種目目は障害物競争に決定。
計11クラスでの総当たりレース。コースはスタジアムの外周約4キロとなっている。
全員がスタート位置につく中で、純は後方の方で軽い準備運動をしていた。
「(相澤先生との約束だけでなく、焦凍にも勝たないといけなくなってしまったな)」
誰もが緊張な面持ちでいる中で、純は随分とリラックスしていた。
「(それに…何やら爆豪の視線も気になるなぁ…絶対敵視しているだろ、アレ)」
控室での轟とのやり取りの最中に、微塵も隠す様子のなかった爆豪の熱い視線。
どう見たって敵視しているものだったが。
「(そんなに情熱的な
最後に伸びをしたのち、主審のミッドナイトによるスタート開始の合図が響いた。
一斉にゲートに詰め寄り、中ではギチギチに詰まっており思うように進んでいない。
つまり、戦いはもうスタートの合図の時点で始まっているのだ。
「おっ」
先頭の方から地面が凍り付き、純の足もパキパキと音を立てて凍っていく。
「焦凍の個性だな。スタートから飛ばすねぇ」
周囲からは「冷たい」「動けない」などの悲鳴が飛び交う。
だが純は轟の個性では止まることはなかった。
「焦凍の個性は私と相性が悪すぎなんだ」
純は氷焔を全身にまとうと、凍っていたはずの足元は焔によって喰われてしまい、その姿を跡形もなく消し去った。
代わりに氷焔がさらに燃え上がる。
「うわっ!?あっちぃ!?あ、いや、熱くない!?なんだコイツの個性!?」
「熱くない代わりになんかめっちゃこの人の周り寒いんだけど!?」
純の周囲にいた人は冷気に当てられ距離を取る。
「お先に失礼するよ」
自ら純に道を開けてくれるのは好都合、といった様子で純は駆け出していく。
轟の個性によって捕まった人もいれば、逆にA組は全員抜け出しているようで、足止めを食らっている姿は見られなかった。
純がゲートを抜けると、そこには入試時に見た巨大なロボット。
それが一体だけではなく何十体と道を塞いでいた。
既に生徒たちはロボットと戦闘をしており、その間を抜けるのは容易ではなさそうだった。
「もう先頭はの姿は見えていない…なら一掃したほうが早いか」
純の焔は全身から燃え上がったかと思えば、大きな波のようにしてロボットを飲み込んだ。
そこから焔が広がるようにして他のロボットまでにも伝染していく。
まるで山火事でもみているような光景だ。
指をぱちん、と鳴らすと焔は氷へと姿を変えてロボットの動きを封じた。
純は無害となったロボットの隙間を通って次のステージへと進んでいく。
「なんだアイツ…すげぇ個性だな…」
「おい!ボーっとしてる場合じゃねぇぞ!俺たちもいかねぇと!」
しかし。
純は走りながらもう一度指を鳴らすと、凍っていたはずの氷は再び焔へと姿を変え、後続を断ち切る。
「そこまで甘くはないよ」
後続の悲鳴を聞きながら、純は先頭に追い付くためにその足を速めた。
「これは…」
次のステージにたどり着くと、そこには巨大な穴が開いており、道と言う道はなく、いくつもの岩の柱にロープがつけられている。
が、勿論純は個性の応用がかなり利くため、他の生徒たちが二の足を踏む中で、ためらいもなく空中へ足を踏み出した。
『A組氷崎!?バカ正直に突っ込むやつがあるかァ!?落下しちまうぞ!?』
実況のプレゼントマイクの大声を聞きながら、純は踏み出した足に焔を纏う。右足、そして二歩目の左足。
これは先日の事件で歩道橋から落ちる時にも使ったものだった。
踏み出す足元薄い氷膜が張られ、次の足を踏み出す前には割れて消える。
「(便利だけど耐久性が脆弱だから、コントロールとバランス感覚が大事な技…ここは集中しないと)」
息を切らしながら走る足を止めない。
気が付けば純の息は少しだけ白くなっている。
そして心なしか肌に霜が降りていた。
「(…ちょっと力みすぎだな)」
第二関門も突破し、最終関門までたどり着くと、その先には先頭を走る轟、爆豪の姿が見えた。
「いや、もう一人いるか」
先頭で大きな爆発があったのち、転がるようにして走り去っていく姿が見えた。
「(出久か…彼は少しちぐはぐな所がある。皆個性に自信を持っているにも関わらず、出久はまるでそれを扱いきれていないような…)」
臆病に見える、と純は付け足した。
純は既に誰かが踏み抜いた地雷を見ながら足は止めなかった。
「(焦凍も訳アリだし、爆豪に至っては問題児すぎるし…さすが雄英。クセが強い奴がたくさん揃っているな)」
あ、人の事言えないかも、と呟いてから、難なく純はスタジアムへと帰還した。
ようやく一息つけると思ったつかの間。
「自信あった割には、随分出遅れてるじゃねぇか」
轟は息を整える純に声をかけた。
「確かに…この感じだと、順位は10位以下だろうな。まぁ結果は後でわかる」
「お前本気でやってんのか」
「勿論。私には上位に食い込まなければならない理由がある。どうして手を抜く必要があると思うんだ」
相変わらず光のない瞳に、轟は純の思考が読めなかった。
「俺をガッカリさせるなよ」
「そんな安い挑発、誰に教わったんだ?パパか?」
「お前…!」
純の煽りに思わず轟は純の胸倉を掴んだ。
「…私たちは氷の個性だ。
「っ…!」
「ちゃんと頭を冷やして私を見ろ、焦凍」
純は落ち着かせるような声音で轟に話しかける。
口元は笑っているが、相変わらずその目は笑っていることはなかった。
「じゃないと、
「!」
胸倉を掴むその手に霜が降りる。
轟は舌打ちをした後、純から離れていった。
乱れたジャージを整えていると、ミッドナイトの試合終了の声が響いた。
順番に順位が発表され、純は12位という位置にいた。本人は「まぁこんなものか」と呟いていた。
その後の第二種目の発表。
【騎馬戦】
第一種目目は他を蹴落とす個人戦だったのに対し、第二種目目はチーム戦。
純はルール説明を聞きながら、誰と組むか思案する。
チーム決めの交渉時間は15分。
考えに時間を使ってしまうほど、良い人選は減ってしまう。
しかし。
「(私の個性なら誰と組んでも応用が利く…かといって1000P持つ出久と組むのはリスクが高い気もする…さて、どうしたものか)」
口元に手を当てて考えていると、ある人物が純の背後から声をかけてきた。
「なぁ、俺と組もうよ」
その予想外の人物に、純は思わず驚きの表情を浮かべた。
「あんたの個性なら、間違いなく勝ち残れる」
声をかけてきたのは、
心操人使だった。
Vol.4 その微笑みの真意は、策略か否か
(敵か味方か)
(この状況では誰もが関係ない)
